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概要

コイル駆動回路と特定のリレー コイルの設計基準の定義

はじめに

リレーおよびコンタクタ コイルの巻線には通常、銅線が使われます。そして、銅線は後述の式とグラフに示すように正の温度係数を持ちます。また、ほとんどのコイルは比較的一定の電圧で給電されます。したがって、電圧が一定と仮定した場合、温度が上昇するとコイル抵抗は高くなり、コイル電流は減少します。

 

このようなデバイスの磁場強度は、コイル内のアンペア回数 (AT) (すなわち、ワイヤの巻数とそのワイヤを流れる電流の積) に直接左右されます。電圧が一定の場合、温度が上昇すると AT が減少し、その結果磁場強度も減少します。リレーまたはコンタクタが長期にわたって確実に作動し続けるためには、温度、コイル抵抗、巻線公差、供給電圧公差が最悪な状況でも常に十分な AT を維持する必要があります。そうしなければ、リレーがまったく作動しなくなるか、接触力が弱くなって機能が低下するか、ドロップアウト (解放) が予期せず起こります。これらはすべて良好なリレー性能の妨げとなります。

 

コイルのワイヤの巻数は通常、データシートに記載されていないため、これらすべての補正は、温度、抵抗、電圧といった仕様で定められている数値または測定可能な数値に基づいて計算する必要があります。

 

以下に、コイル駆動回路と特定のリレー コイルの重要な設計基準の定義、ステップバイステップの手順ガイド、および便利な式について詳しく説明します。アプリケーション ノート「 優れたリレーおよびコンタクタ性能にきわめて重要な適切なコイル駆動」も参照してください。

分析

適切なコイル駆動は、適切なリレー動作と負荷性能および寿命性能にとってきわめて重要です。リレー (またはコンタクタ) を適切に動作させるには、コイルが適切に駆動することを確認する必要があります。コイルが適切に駆動していれば、その用途で起こり得るどのような状況においても、接点が適切に閉じて閉路状態が維持され、アーマチュアが完全に吸着されて吸着状態が維持されます。

 

リレーは電磁石であり、リレーを作動させる磁場の強さはアンペア回数 (AT) の関数として決まります。巻数が変化することはないため、適用される変数はコイル電流のみとなります。

 

DC コイル電流は、印加電圧とコイル抵抗によってのみ決定されます。電圧が低下するか抵抗が増加すると、コイル電流は低下します。その結果、AT が減少してコイルの磁力は弱くなります。

 

AC コイル電流も印加電圧とコイル インピーダンスによって同様の影響を受けますが、インピーダンス (Z) は Z=sqrt(R2 + XL2) と定義されるため、コイル抵抗の変化だけで考えると、AC コイルに対する直接的な影響は DC コイルよりもある程度低くなります。

 

時間とともに電力供給が変化すると、印加されるコイル電圧も変化します。制御を設計する際は、その制御が機能する入力電圧範囲を定義し (通常は公称値の +10%/-20%)、その電圧範囲で正常に動作することを保証するために制御設計で補償する必要があります。

 

同様に、コイル抵抗には常温での製造公差 (通常は +/-5% または +/-10%) があります。ただし、ワイヤの抵抗は温度に対して正比例の関係にあるため、ワイヤの温度が上昇するとコイル抵抗も上昇し、ワイヤの温度が低下するとコイル抵抗も低下します。以下に便利な式を示します。

コイル抵抗に対する温度の影響

温度に対するコイル抵抗の変化: Rf = Ri((Tf + 234.5) / (Ti + 234.5)) (次のグラフを参照)

 

コイル抵抗係数とコイル温度の関係

(20°C = 1、銅線を使用) 

コイル抵抗係数とコイル温度の関係

コイル抵抗係数とコイル温度の関係

コイル温度 (°C)

* 温度変化に対して補正された動作電圧

Vf = Vo(Rf/Ri)

* 抵抗変化法による実際のコイル温度

Tf = Ti + Rf/Ri(k+Tri) – (k+Trt) [銅線の場合、k = 234.5]

 

上記の式と基本代数を使用して以下のことができます。

 

  • 温度に対する抵抗変化の予想値の計算

(周囲温度だけでなく、コイル内の自己発熱の影響と内部の負荷伝導部品による発熱も必ず含めてください)。

  • 動作電圧の変化の予想値の計算
  • 実際のコイル温度の上昇の計算、およびある状態から別の状態 (すなわち、常温・無通電・無負荷の状態から、コイルが通電され接点に負荷がかかって周囲温度が上昇した状態) に変化したときのコイル抵抗の増加の計算。

 

上記の式の記号の定義:

  • Ri = 初期コイル温度でのコイル抵抗 
  • Rf = 最終コイル温度でのコイル抵抗
  • Ti = 初期コイル温度 
  • Tf = 最終コイル温度
  • Tri = 試験開始時の周囲温度
  • Trt = 試験終了時の周囲温度
  • Vo = オリジナルの「動作」電圧
  • Vf = 最終的な動作電圧 (コイル温度の変化に対して補正済み)

 

「周囲」温度とは、リレー付近の温度を指します。これは、リレーを含むアセンブリまたはエンクロージャ付近の温度と同じではありません。

 

同様に、「初期コイル温度」と「初期周囲温度」は、十分な時間が経過して両方の温度が安定しない限り、試験の開始時に必ずしも正確に同じにはなりません。

 

コイルとその他の部品は熱質量を持つため、測定値を記録する前に十分時間をおいてすべての温度を安定させる必要があります。

最悪条件下での DC コイル電圧の補正

(注: 以降の説明では、DC コイル リレーは常に適切にフィルタリングされた DC から給電されていることを前提とします。別途記載されていない限り、フィルタリングされていない半波長または全波長は前提としていません。また、コイル抵抗などのデータシート情報は常温 (別途記載されていない限り、およそ 23°C) での数値とします)。

 

リレーにとって最悪の動作条件は、低い供給電圧、大きなコイル抵抗、高い動作周囲温度という条件に、接点の電流負荷が高い状況が重なったときです。

 

設計者は、最悪のケースでもリレーを作動させてアーマチュアを完全に吸着する十分な AT を維持するために、コイル抵抗の増加と AT の減少に合わせて入力電圧を補正する必要があります。そうすることで、接点に完全な力がかかります。接点が閉じてもアーマチュアが吸着されない場合は、接触力が弱くなって接点が過熱状態になり、高電流の印加時にタック溶接が発生しやすくなります。

 

コイルおよび接点負荷からの内部発熱は簡単には計算できません。この計算に取り掛かる最も正確な方法は、同じタイプで同じ定格コイル電圧を持つサンプル リレーを使って以下の手順を行うことです。

 

  • 常温でコイル抵抗 Ri を測定し、常温パラメータ Ti と Tri を記録しておきます。
  • 接点に最大電流の負荷をかけ、コイルに公称電圧を印加します。
  • コイル温度が安定するまで待ってから (すなわち、コイル抵抗の変化が止まるまで待ってから)、「高温」コイル抵抗 Rf を測定します。これにより、コイルと接点の電流によってコイルにどの程度の「温度上昇」が発生したかがわかります。また、周囲温度の変化を測定し、Trt 値として記録しておきます。
  • 次に、常温と予想される最高周囲温度との差を上記の負荷適用後のコイル抵抗に組み入れます。Rf 式またはグラフを使用して、上記で測定した「高温」コイル抵抗を上昇後の周囲温度に対して補正します。これで Rf の補正値が得られます。
  • データシートに記載されている最低動作電圧を上記の式 Vf = Vo(Rf/Ri) に代入して、Vf の新しい値を計算します。つまり、公称コイル電圧から、DC コイルのデータシートに記載されている最低動作電圧 (通常は公称値の 80%) の負の公差を減算します。
  • これにより、最悪の動作条件下で適切に動作させるためにリレー コイルに印加する必要がある最低電圧が得られます。

AC コイルの補正

  • 注: AC コイルについても同様の補正を行いますが、抵抗 (R) の変化が AC コイル インピーダンスに及ぼす影響は線形的なものではなく、Z=sqrt(R2 + XL 2) という式によって導かれます。そのため、コイル電流 (すなわち AT) への影響も同様に非線形的になります。TE アプリケーション ノート「優れたリレーおよびコンタクタ性能にきわめて重要な適切なコイル駆動」の「AC コイル リレーおよびコンタクタの特性」という段落を参照してください。

まとめ

印加電圧範囲と使用可能なコイル値の許容される組み合わせが、目的の用途に必要な周囲温度範囲に適合していない場合は、TE 製品エンジニアリングに相談してアドバイスを求めてください。

免責事項

TE は、掲載されている情報の正確性を確認するためにあらゆる合理的な努力を払っていますが、誤りが含まれていないことを保証するものではありません。また、この情報が正確で正しく、信頼できる最新のものであることについて、一切の表明、保証、約束を行いません。TE は、ここに掲載されている情報に関するすべての保証を、明示的、黙示的、法的を問わず明示的に否認します。これには、あらゆる商品性の黙示的保証、または特定の目的に対する適合性が含まれます。いかなる場合においても、TE は、情報受領者の使用から生じた、またはそれに関連して生じたいかなる直接的、間接的、付随的、特別または間接的な損害についても責任を負いません。 

コイル駆動回路と特定のリレー コイルの設計基準の定義

はじめに

リレーおよびコンタクタ コイルの巻線には通常、銅線が使われます。そして、銅線は後述の式とグラフに示すように正の温度係数を持ちます。また、ほとんどのコイルは比較的一定の電圧で給電されます。したがって、電圧が一定と仮定した場合、温度が上昇するとコイル抵抗は高くなり、コイル電流は減少します。

 

このようなデバイスの磁場強度は、コイル内のアンペア回数 (AT) (すなわち、ワイヤの巻数とそのワイヤを流れる電流の積) に直接左右されます。電圧が一定の場合、温度が上昇すると AT が減少し、その結果磁場強度も減少します。リレーまたはコンタクタが長期にわたって確実に作動し続けるためには、温度、コイル抵抗、巻線公差、供給電圧公差が最悪な状況でも常に十分な AT を維持する必要があります。そうしなければ、リレーがまったく作動しなくなるか、接触力が弱くなって機能が低下するか、ドロップアウト (解放) が予期せず起こります。これらはすべて良好なリレー性能の妨げとなります。

 

コイルのワイヤの巻数は通常、データシートに記載されていないため、これらすべての補正は、温度、抵抗、電圧といった仕様で定められている数値または測定可能な数値に基づいて計算する必要があります。

 

以下に、コイル駆動回路と特定のリレー コイルの重要な設計基準の定義、ステップバイステップの手順ガイド、および便利な式について詳しく説明します。アプリケーション ノート「 優れたリレーおよびコンタクタ性能にきわめて重要な適切なコイル駆動」も参照してください。

分析

適切なコイル駆動は、適切なリレー動作と負荷性能および寿命性能にとってきわめて重要です。リレー (またはコンタクタ) を適切に動作させるには、コイルが適切に駆動することを確認する必要があります。コイルが適切に駆動していれば、その用途で起こり得るどのような状況においても、接点が適切に閉じて閉路状態が維持され、アーマチュアが完全に吸着されて吸着状態が維持されます。

 

リレーは電磁石であり、リレーを作動させる磁場の強さはアンペア回数 (AT) の関数として決まります。巻数が変化することはないため、適用される変数はコイル電流のみとなります。

 

DC コイル電流は、印加電圧とコイル抵抗によってのみ決定されます。電圧が低下するか抵抗が増加すると、コイル電流は低下します。その結果、AT が減少してコイルの磁力は弱くなります。

 

AC コイル電流も印加電圧とコイル インピーダンスによって同様の影響を受けますが、インピーダンス (Z) は Z=sqrt(R2 + XL2) と定義されるため、コイル抵抗の変化だけで考えると、AC コイルに対する直接的な影響は DC コイルよりもある程度低くなります。

 

時間とともに電力供給が変化すると、印加されるコイル電圧も変化します。制御を設計する際は、その制御が機能する入力電圧範囲を定義し (通常は公称値の +10%/-20%)、その電圧範囲で正常に動作することを保証するために制御設計で補償する必要があります。

 

同様に、コイル抵抗には常温での製造公差 (通常は +/-5% または +/-10%) があります。ただし、ワイヤの抵抗は温度に対して正比例の関係にあるため、ワイヤの温度が上昇するとコイル抵抗も上昇し、ワイヤの温度が低下するとコイル抵抗も低下します。以下に便利な式を示します。

コイル抵抗に対する温度の影響

温度に対するコイル抵抗の変化: Rf = Ri((Tf + 234.5) / (Ti + 234.5)) (次のグラフを参照)

 

コイル抵抗係数とコイル温度の関係

(20°C = 1、銅線を使用) 

コイル抵抗係数とコイル温度の関係

コイル抵抗係数とコイル温度の関係

コイル温度 (°C)

* 温度変化に対して補正された動作電圧

Vf = Vo(Rf/Ri)

* 抵抗変化法による実際のコイル温度

Tf = Ti + Rf/Ri(k+Tri) – (k+Trt) [銅線の場合、k = 234.5]

 

上記の式と基本代数を使用して以下のことができます。

 

  • 温度に対する抵抗変化の予想値の計算

(周囲温度だけでなく、コイル内の自己発熱の影響と内部の負荷伝導部品による発熱も必ず含めてください)。

  • 動作電圧の変化の予想値の計算
  • 実際のコイル温度の上昇の計算、およびある状態から別の状態 (すなわち、常温・無通電・無負荷の状態から、コイルが通電され接点に負荷がかかって周囲温度が上昇した状態) に変化したときのコイル抵抗の増加の計算。

 

上記の式の記号の定義:

  • Ri = 初期コイル温度でのコイル抵抗 
  • Rf = 最終コイル温度でのコイル抵抗
  • Ti = 初期コイル温度 
  • Tf = 最終コイル温度
  • Tri = 試験開始時の周囲温度
  • Trt = 試験終了時の周囲温度
  • Vo = オリジナルの「動作」電圧
  • Vf = 最終的な動作電圧 (コイル温度の変化に対して補正済み)

 

「周囲」温度とは、リレー付近の温度を指します。これは、リレーを含むアセンブリまたはエンクロージャ付近の温度と同じではありません。

 

同様に、「初期コイル温度」と「初期周囲温度」は、十分な時間が経過して両方の温度が安定しない限り、試験の開始時に必ずしも正確に同じにはなりません。

 

コイルとその他の部品は熱質量を持つため、測定値を記録する前に十分時間をおいてすべての温度を安定させる必要があります。

最悪条件下での DC コイル電圧の補正

(注: 以降の説明では、DC コイル リレーは常に適切にフィルタリングされた DC から給電されていることを前提とします。別途記載されていない限り、フィルタリングされていない半波長または全波長は前提としていません。また、コイル抵抗などのデータシート情報は常温 (別途記載されていない限り、およそ 23°C) での数値とします)。

 

リレーにとって最悪の動作条件は、低い供給電圧、大きなコイル抵抗、高い動作周囲温度という条件に、接点の電流負荷が高い状況が重なったときです。

 

設計者は、最悪のケースでもリレーを作動させてアーマチュアを完全に吸着する十分な AT を維持するために、コイル抵抗の増加と AT の減少に合わせて入力電圧を補正する必要があります。そうすることで、接点に完全な力がかかります。接点が閉じてもアーマチュアが吸着されない場合は、接触力が弱くなって接点が過熱状態になり、高電流の印加時にタック溶接が発生しやすくなります。

 

コイルおよび接点負荷からの内部発熱は簡単には計算できません。この計算に取り掛かる最も正確な方法は、同じタイプで同じ定格コイル電圧を持つサンプル リレーを使って以下の手順を行うことです。

 

  • 常温でコイル抵抗 Ri を測定し、常温パラメータ Ti と Tri を記録しておきます。
  • 接点に最大電流の負荷をかけ、コイルに公称電圧を印加します。
  • コイル温度が安定するまで待ってから (すなわち、コイル抵抗の変化が止まるまで待ってから)、「高温」コイル抵抗 Rf を測定します。これにより、コイルと接点の電流によってコイルにどの程度の「温度上昇」が発生したかがわかります。また、周囲温度の変化を測定し、Trt 値として記録しておきます。
  • 次に、常温と予想される最高周囲温度との差を上記の負荷適用後のコイル抵抗に組み入れます。Rf 式またはグラフを使用して、上記で測定した「高温」コイル抵抗を上昇後の周囲温度に対して補正します。これで Rf の補正値が得られます。
  • データシートに記載されている最低動作電圧を上記の式 Vf = Vo(Rf/Ri) に代入して、Vf の新しい値を計算します。つまり、公称コイル電圧から、DC コイルのデータシートに記載されている最低動作電圧 (通常は公称値の 80%) の負の公差を減算します。
  • これにより、最悪の動作条件下で適切に動作させるためにリレー コイルに印加する必要がある最低電圧が得られます。

AC コイルの補正

  • 注: AC コイルについても同様の補正を行いますが、抵抗 (R) の変化が AC コイル インピーダンスに及ぼす影響は線形的なものではなく、Z=sqrt(R2 + XL 2) という式によって導かれます。そのため、コイル電流 (すなわち AT) への影響も同様に非線形的になります。TE アプリケーション ノート「優れたリレーおよびコンタクタ性能にきわめて重要な適切なコイル駆動」の「AC コイル リレーおよびコンタクタの特性」という段落を参照してください。

まとめ

印加電圧範囲と使用可能なコイル値の許容される組み合わせが、目的の用途に必要な周囲温度範囲に適合していない場合は、TE 製品エンジニアリングに相談してアドバイスを求めてください。

免責事項

TE は、掲載されている情報の正確性を確認するためにあらゆる合理的な努力を払っていますが、誤りが含まれていないことを保証するものではありません。また、この情報が正確で正しく、信頼できる最新のものであることについて、一切の表明、保証、約束を行いません。TE は、ここに掲載されている情報に関するすべての保証を、明示的、黙示的、法的を問わず明示的に否認します。これには、あらゆる商品性の黙示的保証、または特定の目的に対する適合性が含まれます。いかなる場合においても、TE は、情報受領者の使用から生じた、またはそれに関連して生じたいかなる直接的、間接的、付随的、特別または間接的な損害についても責任を負いません。