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概要

負荷/寿命性能の強化

はじめに

(注: DC コイルのスイッチング AC 負荷にのみ適用されます)

 

白熱電球、モータやソレノイドのような誘導負荷、電子機器バラストやスイッチング電源のような容量性負荷などは、励磁直後に非常に高い初期サージ電流を発生させます。これは定常電流の最大 10 倍あるいはそれ以上にもなり、電圧正弦波のピーク付近で接点閉鎖がランダムに発生する場合は特に問題となります。このような過度のサージ電流により、しばしば接点の溶着が起こります。通常、このような用途のリレーは十分に大きなサイズにするか、比較的抑えられた定常電流に対して高い突入電流を処理するように特別に設計されている必要があります。その結果、管理費が余分にかかり、実装スペースが拡大するのが一般的です。

 

同様に、ブレーク接点アークは通常、高電流正弦波がゼロを通過して極性が反転して初めて消失するため、同期は、「メーク」(接点閉鎖) 時には電圧波形、「ブレーク」(接点開放) 時には電流波形のゼロクロッシングに基づく必要があります。力率 1 の負荷の場合 (抵抗、ランプなど)、位相シフトは起こらないため、電圧に基づくゼロクロッシングの検出を「メーク」と「ブレーク」の両方の同期に使用できます。

 

適切に実装した場合、最大ピーク電流容量はおよそ 8 ~ 10 倍増加し、特定の負荷時のスイッチング寿命はおよそ 8 ~ 10 倍延びる可能性があります。また、特定のスイッチング寿命での最大負荷も (リレーが伝導できる最大電流を超えない限り) 最大 5 倍程度増加する可能性があります。

 

力率 1 で初期サージ電流がほとんどない非無効負荷であっても、負荷/寿命性能の大幅な向上を達成できます。

 

注: 後述の「接点閉鎖 (メーク) 時の同期」および「誘導負荷のメーク/ブレークに関する特別な注意事項」セクションに示す鉄芯誘導負荷のスイッチングに関する注意事項も参照してください。

負荷電力に位相同期した接点のスイッチング

(注: DC コイルのスイッチング AC 負荷にのみ適用されます)

 

後述の「誘導負荷のメーク/ブレークに関する特別な注意事項」も参照してください。

 

接点の「メーク」と「ブレーク」のタイミングを AC 電圧または電流正弦波に同期させることによって何らかの種類の負荷をスイッチングする場合、リレー性能を強化する方法はさまざまに存在します。これは DC コイルにのみ有効です。その理由は、AC 正弦波には、AC コイル リレーまたはコンタクタの動作を引き起こすほど十分なエネルギがない部分があるためです。

 

適切に実装した場合、接点スイッチング寿命と、特に高い突入負荷を処理する能力は、著しく増加します。正確な実装や特定の用途に見られる他の要因によっては、突入電流容量と負荷スイッチング寿命がおよそ 10 倍向上することも少なくありません。

 

このような手法のいくつかとそれぞれの利点および制限について以下に説明します。

 

  • 接点閉鎖 (メーク) 時の同期:

接点閉鎖を電圧波形のゼロクロッシング ポイントの直前または直後のタイミングに同期させた場合、リレー接点からそれほど大きな電流または電圧は発生しないため、接点寿命が延長するとともに、起動電流の高い負荷を処理する能力も向上します (電圧と電流は正弦波に従ってゼロから上昇するので、リレー接点が閉じて安定している間に最大ピーク電流に達することはほとんどないため)。

 

これを実現するには、リレー接点が常にゼロ ポイントの直前または直後 (通常はゼロ ポイントから +/- 1 ミリ秒が許容可能かつ達成可能) に閉じるようなタイミング (次のゼロ電圧クロッシングからリレーの動作時間だけオフセットする) でリレー コイルを駆動します。

 

リレーの動作時間はリレー製品群、個々のリレー、ロットごとに違い、リレーの寿命全体を通しても変化します。そのため、これを最適に実装するには、マイクロコントローラを使用してリレーの実際の動作時間をモニタリングし、8 ~ 10 回の動作の移動平均によってゼロクロス ポイントに正確に一致するようオフセット時間を調整します。また、動作時間の変化を最小限に抑えるために、コイルを公称電圧の 125% または 150% でオーバードライブすることもできます (最大定格電流でスイッチングする場合は推奨されません)。このタイミング計算では、動作バウンス時間も考慮に入れる必要があります。

例 1. 電圧波形上の 0° で通電した 1/10 Hp インデューサ ファン モータ

例 1. 電圧波形上の 0° で通電した 1/10 Hp インデューサ ファン モータ。上が電圧、下が電流です。最初の半周期の電流サージが非常に高いことに注目してください。

例 2. 電圧波形上の 90° で通電した同じ 1/10 Hp インデューサ ファン モータ。

例 2. 電圧波形上の 90° で通電した同じ 1/10 Hp インデューサ ファン モータ。上の波形が電圧、下の波形が電流です。最初の半周期の電流サージが過度に高くなっていないことに注目してください。ほとんどの誘導負荷では、最良のメーク ポイントはピーク前の約 75° ですが、それぞれの負荷タイプを測定して最適なポイントを判断することを推奨します。正確な値を使用することは重要ではなく、通常は 70 ~ 90° の範囲で満足な結果が得られます。

例 3a. ゼロ時に接点を閉じた白熱電球

例 3a. ゼロ時に接点を閉じた白熱電球

ほとんどの非誘導負荷は、接点性能を最大化するためにゼロ電圧のすぐ近くで通電する必要があります。そうすることで、接点が閉じて安定している間の電流サージが最小限に抑えられ、タック溶接の可能性が下がります。これは特に、白熱電球、電子ランプ バラスト、スイッチング電源などの突入電流が高い負荷の場合に重要です。

 

例 3a は、白熱電球をゼロ電圧のすぐ近くでスイッチングした場合を示します。電流は AC 正弦波に従って上昇しています。例 3b は、同じ負荷をピーク電圧時にスイッチングした場合を示します。この場合は、冷えた電球フィラメントに高電圧が印加されて高い突入電流が発生しています。このような高い突入電流が生じると、接点が閉じて安定しているときにタック溶接が起こるリスクが大幅に高くなります。同様に、容量性負荷でも、ピーク電圧付近でスイッチングすると通常は高電流が発生します。

例 3b. ピーク時に接点を閉じた白熱電球

例 3b. ピーク時に接点を閉じた白熱電球

  • 接点開放 (ブレーク) 時の同期:

同様に、接点開放を電流波形のゼロクロッシング ポイントの直前 (ゼロクロッシング ポイントより後は不可、通常はゼロクロッシング ポイントから -1、-2、または +0 ミリ秒が許容可能かつ達成可能) のタイミングに同期させた場合、リレー接点が開くときにそれほど大きな電流または電圧は発生せず、アークは直後のゼロクロッシング時に消失するため、接点の侵食や摩耗が大幅に軽減されます。電圧と電流間の位相差がない非誘導負荷では、ゼロ電圧でのブレークも許容可能であり、このほうが制御設計は単純になります。

 

後述の「誘導負荷のメーク/ブレークに関する特別な注意事項」も参照してください。 

例 4a. ピーク時に接点を開いた白熱電球

例 4a. ピーク時に接点を開いた白熱電球

例 4b. ゼロ時に接点を開いた白熱電球

例 4b. ゼロ時に接点を開いた白熱電球

明らかに、抵抗負荷または白熱負荷の場合は、ゼロ電圧または電流の直前に接点を開くほうがブレーク アークは小さく、接点寿命も長くなります。

 

  • 誘導負荷のメーク/ブレークに関する特別な注意事項 

誘導負荷 (特に鉄芯を持つもの) は、メーク時の突入電流が高く、ブレーク時には極度の接点アークと高い過渡電圧が発生する傾向があるため、別の方法で対処する必要があります。

 

ゼロクロッシングのすぐ近くで接点を閉じるのが望ましい非誘導負荷とは異なり、誘導負荷 (特に変圧器やソレノイドのような鉄芯インダクタ) はゼロクロッシングで接点を閉じないでください。そうすると、インダクタが飽和して非常に高い初期電流サージが発生します。このような誘導負荷は、AC 電圧波形上の約 75° で駆動すると良好に動作します。負荷はそれぞれ若干異なるため、各負荷をモニタリングして最良の性能が得られるように調整します。

 

誘導負荷は、ブレーク時の性能が特に向上します。その理由は、ブレーク アークが減弱し、その時間の長さも短縮することから、接点材料のアーク侵食が大幅に軽減されるためです。同様に、接点開放時に負荷インダクタンスにほとんどエネルギが蓄積されないため、発生する電磁干渉 (EMI) と逆電圧過渡の強度が低くなり、繊細な電子部品への悪影響が小さくなります。これを実現するには、リレー接点が常にゼロ ポイントの直前 (ゼロ ポイントより後は不可、通常はゼロ ポイントから -1、-2、または +0 ミリ秒が許容可能かつ達成可能) に開くようなタイミング (次のゼロ電流クロッシングからリレーの復帰時間だけオフセットする) でリレー コイルの駆動を解除します。

例 5a. ピーク電圧時に接点を閉じ、ゼロ電流時に接点を開いた誘導負荷(注: 電流の位相は電圧より遅れる)

例 5a. ピーク電圧時に接点を閉じ、ゼロ電流時に接点を開いた誘導負荷(注: 電流の位相は電圧より遅れる)

例 5b. ゼロ電圧時に接点を閉じ、ピーク電流時に接点を開いた誘導負荷 (注: 電流の位相は電圧より遅れる)

例 5b. ゼロ電圧時に接点を閉じ、ピーク電流時に接点を開いた誘導負荷 (注: 電流の位相は電圧より遅れる)

まとめ

接点の開閉を負荷電圧および電流に同期させる手法を適切に実装すると、性能が著しく向上する可能性があります。ただし、この手法が適切に実装されていない場合は、材料の転移や接点侵食の加速によって性能が低下する可能性もあります。必ず TE エンジニアリングに相談して、各リレー タイプの実装に関するアドバイスを受けてください。

 

リレーの動作時間と復帰時間はリレー製品群、個々のリレー、ロットごとに違い、リレーの寿命全体を通しても変化します。そのため、これを最適に実装するには、マイクロコントローラを使用して電圧 (誘導負荷をブレークする場合は電流) 波形に対するリレーの実際の動作時間と復帰時間をモニタリングし、オフセット時間を定期的に調整します。これは、リレーの寿命を通して正確なスイッチングを持続させる最良の方法です。

 

接点閉鎖はゼロ電圧から +/-1 ミリ秒の時点に行い、接点開放はゼロ電流の -1、-2、または +0 ミリ秒前に行います。非誘導負荷では、接点開放時にゼロ電圧に同期する方法でも満足のいく性能が得られ、このほうが制御設計は単純になります。

 

注意すべき重要な点は、リレー コイル ワイヤの抵抗および動作電圧と動作/復帰のタイミングに対する温度の影響を補償しなければならないことです。これについては、アプリケーション ノート「優れたリレーおよびコンタクタ性能にきわめて重要な適切なコイル駆動」および「コイル電圧および温度補償」で説明されています。

免責事項:

TE は、掲載されている情報の正確性を確認するためにあらゆる合理的な努力を払っていますが、誤りが含まれていないことを保証するものではありません。また、この情報が正確で正しく、信頼できる最新のものであることについて、一切の表明、保証、約束を行いません。TE は、ここに掲載されている情報に関するすべての保証を、明示的、黙示的、法的を問わず明示的に否認します。これには、あらゆる商品性の黙示的保証、または特定の目的に対する適合性が含まれます。いかなる場合においても、TE は、情報受領者の使用から生じた、またはそれに関連して生じたいかなる直接的、間接的、付随的、特別または間接的な損害についても責任を負いません。 

負荷/寿命性能の強化

はじめに

(注: DC コイルのスイッチング AC 負荷にのみ適用されます)

 

白熱電球、モータやソレノイドのような誘導負荷、電子機器バラストやスイッチング電源のような容量性負荷などは、励磁直後に非常に高い初期サージ電流を発生させます。これは定常電流の最大 10 倍あるいはそれ以上にもなり、電圧正弦波のピーク付近で接点閉鎖がランダムに発生する場合は特に問題となります。このような過度のサージ電流により、しばしば接点の溶着が起こります。通常、このような用途のリレーは十分に大きなサイズにするか、比較的抑えられた定常電流に対して高い突入電流を処理するように特別に設計されている必要があります。その結果、管理費が余分にかかり、実装スペースが拡大するのが一般的です。

 

同様に、ブレーク接点アークは通常、高電流正弦波がゼロを通過して極性が反転して初めて消失するため、同期は、「メーク」(接点閉鎖) 時には電圧波形、「ブレーク」(接点開放) 時には電流波形のゼロクロッシングに基づく必要があります。力率 1 の負荷の場合 (抵抗、ランプなど)、位相シフトは起こらないため、電圧に基づくゼロクロッシングの検出を「メーク」と「ブレーク」の両方の同期に使用できます。

 

適切に実装した場合、最大ピーク電流容量はおよそ 8 ~ 10 倍増加し、特定の負荷時のスイッチング寿命はおよそ 8 ~ 10 倍延びる可能性があります。また、特定のスイッチング寿命での最大負荷も (リレーが伝導できる最大電流を超えない限り) 最大 5 倍程度増加する可能性があります。

 

力率 1 で初期サージ電流がほとんどない非無効負荷であっても、負荷/寿命性能の大幅な向上を達成できます。

 

注: 後述の「接点閉鎖 (メーク) 時の同期」および「誘導負荷のメーク/ブレークに関する特別な注意事項」セクションに示す鉄芯誘導負荷のスイッチングに関する注意事項も参照してください。

負荷電力に位相同期した接点のスイッチング

(注: DC コイルのスイッチング AC 負荷にのみ適用されます)

 

後述の「誘導負荷のメーク/ブレークに関する特別な注意事項」も参照してください。

 

接点の「メーク」と「ブレーク」のタイミングを AC 電圧または電流正弦波に同期させることによって何らかの種類の負荷をスイッチングする場合、リレー性能を強化する方法はさまざまに存在します。これは DC コイルにのみ有効です。その理由は、AC 正弦波には、AC コイル リレーまたはコンタクタの動作を引き起こすほど十分なエネルギがない部分があるためです。

 

適切に実装した場合、接点スイッチング寿命と、特に高い突入負荷を処理する能力は、著しく増加します。正確な実装や特定の用途に見られる他の要因によっては、突入電流容量と負荷スイッチング寿命がおよそ 10 倍向上することも少なくありません。

 

このような手法のいくつかとそれぞれの利点および制限について以下に説明します。

 

  • 接点閉鎖 (メーク) 時の同期:

接点閉鎖を電圧波形のゼロクロッシング ポイントの直前または直後のタイミングに同期させた場合、リレー接点からそれほど大きな電流または電圧は発生しないため、接点寿命が延長するとともに、起動電流の高い負荷を処理する能力も向上します (電圧と電流は正弦波に従ってゼロから上昇するので、リレー接点が閉じて安定している間に最大ピーク電流に達することはほとんどないため)。

 

これを実現するには、リレー接点が常にゼロ ポイントの直前または直後 (通常はゼロ ポイントから +/- 1 ミリ秒が許容可能かつ達成可能) に閉じるようなタイミング (次のゼロ電圧クロッシングからリレーの動作時間だけオフセットする) でリレー コイルを駆動します。

 

リレーの動作時間はリレー製品群、個々のリレー、ロットごとに違い、リレーの寿命全体を通しても変化します。そのため、これを最適に実装するには、マイクロコントローラを使用してリレーの実際の動作時間をモニタリングし、8 ~ 10 回の動作の移動平均によってゼロクロス ポイントに正確に一致するようオフセット時間を調整します。また、動作時間の変化を最小限に抑えるために、コイルを公称電圧の 125% または 150% でオーバードライブすることもできます (最大定格電流でスイッチングする場合は推奨されません)。このタイミング計算では、動作バウンス時間も考慮に入れる必要があります。

例 1. 電圧波形上の 0° で通電した 1/10 Hp インデューサ ファン モータ

例 1. 電圧波形上の 0° で通電した 1/10 Hp インデューサ ファン モータ。上が電圧、下が電流です。最初の半周期の電流サージが非常に高いことに注目してください。

例 2. 電圧波形上の 90° で通電した同じ 1/10 Hp インデューサ ファン モータ。

例 2. 電圧波形上の 90° で通電した同じ 1/10 Hp インデューサ ファン モータ。上の波形が電圧、下の波形が電流です。最初の半周期の電流サージが過度に高くなっていないことに注目してください。ほとんどの誘導負荷では、最良のメーク ポイントはピーク前の約 75° ですが、それぞれの負荷タイプを測定して最適なポイントを判断することを推奨します。正確な値を使用することは重要ではなく、通常は 70 ~ 90° の範囲で満足な結果が得られます。

例 3a. ゼロ時に接点を閉じた白熱電球

例 3a. ゼロ時に接点を閉じた白熱電球

ほとんどの非誘導負荷は、接点性能を最大化するためにゼロ電圧のすぐ近くで通電する必要があります。そうすることで、接点が閉じて安定している間の電流サージが最小限に抑えられ、タック溶接の可能性が下がります。これは特に、白熱電球、電子ランプ バラスト、スイッチング電源などの突入電流が高い負荷の場合に重要です。

 

例 3a は、白熱電球をゼロ電圧のすぐ近くでスイッチングした場合を示します。電流は AC 正弦波に従って上昇しています。例 3b は、同じ負荷をピーク電圧時にスイッチングした場合を示します。この場合は、冷えた電球フィラメントに高電圧が印加されて高い突入電流が発生しています。このような高い突入電流が生じると、接点が閉じて安定しているときにタック溶接が起こるリスクが大幅に高くなります。同様に、容量性負荷でも、ピーク電圧付近でスイッチングすると通常は高電流が発生します。

例 3b. ピーク時に接点を閉じた白熱電球

例 3b. ピーク時に接点を閉じた白熱電球

  • 接点開放 (ブレーク) 時の同期:

同様に、接点開放を電流波形のゼロクロッシング ポイントの直前 (ゼロクロッシング ポイントより後は不可、通常はゼロクロッシング ポイントから -1、-2、または +0 ミリ秒が許容可能かつ達成可能) のタイミングに同期させた場合、リレー接点が開くときにそれほど大きな電流または電圧は発生せず、アークは直後のゼロクロッシング時に消失するため、接点の侵食や摩耗が大幅に軽減されます。電圧と電流間の位相差がない非誘導負荷では、ゼロ電圧でのブレークも許容可能であり、このほうが制御設計は単純になります。

 

後述の「誘導負荷のメーク/ブレークに関する特別な注意事項」も参照してください。 

例 4a. ピーク時に接点を開いた白熱電球

例 4a. ピーク時に接点を開いた白熱電球

例 4b. ゼロ時に接点を開いた白熱電球

例 4b. ゼロ時に接点を開いた白熱電球

明らかに、抵抗負荷または白熱負荷の場合は、ゼロ電圧または電流の直前に接点を開くほうがブレーク アークは小さく、接点寿命も長くなります。

 

  • 誘導負荷のメーク/ブレークに関する特別な注意事項 

誘導負荷 (特に鉄芯を持つもの) は、メーク時の突入電流が高く、ブレーク時には極度の接点アークと高い過渡電圧が発生する傾向があるため、別の方法で対処する必要があります。

 

ゼロクロッシングのすぐ近くで接点を閉じるのが望ましい非誘導負荷とは異なり、誘導負荷 (特に変圧器やソレノイドのような鉄芯インダクタ) はゼロクロッシングで接点を閉じないでください。そうすると、インダクタが飽和して非常に高い初期電流サージが発生します。このような誘導負荷は、AC 電圧波形上の約 75° で駆動すると良好に動作します。負荷はそれぞれ若干異なるため、各負荷をモニタリングして最良の性能が得られるように調整します。

 

誘導負荷は、ブレーク時の性能が特に向上します。その理由は、ブレーク アークが減弱し、その時間の長さも短縮することから、接点材料のアーク侵食が大幅に軽減されるためです。同様に、接点開放時に負荷インダクタンスにほとんどエネルギが蓄積されないため、発生する電磁干渉 (EMI) と逆電圧過渡の強度が低くなり、繊細な電子部品への悪影響が小さくなります。これを実現するには、リレー接点が常にゼロ ポイントの直前 (ゼロ ポイントより後は不可、通常はゼロ ポイントから -1、-2、または +0 ミリ秒が許容可能かつ達成可能) に開くようなタイミング (次のゼロ電流クロッシングからリレーの復帰時間だけオフセットする) でリレー コイルの駆動を解除します。

例 5a. ピーク電圧時に接点を閉じ、ゼロ電流時に接点を開いた誘導負荷(注: 電流の位相は電圧より遅れる)

例 5a. ピーク電圧時に接点を閉じ、ゼロ電流時に接点を開いた誘導負荷(注: 電流の位相は電圧より遅れる)

例 5b. ゼロ電圧時に接点を閉じ、ピーク電流時に接点を開いた誘導負荷 (注: 電流の位相は電圧より遅れる)

例 5b. ゼロ電圧時に接点を閉じ、ピーク電流時に接点を開いた誘導負荷 (注: 電流の位相は電圧より遅れる)

まとめ

接点の開閉を負荷電圧および電流に同期させる手法を適切に実装すると、性能が著しく向上する可能性があります。ただし、この手法が適切に実装されていない場合は、材料の転移や接点侵食の加速によって性能が低下する可能性もあります。必ず TE エンジニアリングに相談して、各リレー タイプの実装に関するアドバイスを受けてください。

 

リレーの動作時間と復帰時間はリレー製品群、個々のリレー、ロットごとに違い、リレーの寿命全体を通しても変化します。そのため、これを最適に実装するには、マイクロコントローラを使用して電圧 (誘導負荷をブレークする場合は電流) 波形に対するリレーの実際の動作時間と復帰時間をモニタリングし、オフセット時間を定期的に調整します。これは、リレーの寿命を通して正確なスイッチングを持続させる最良の方法です。

 

接点閉鎖はゼロ電圧から +/-1 ミリ秒の時点に行い、接点開放はゼロ電流の -1、-2、または +0 ミリ秒前に行います。非誘導負荷では、接点開放時にゼロ電圧に同期する方法でも満足のいく性能が得られ、このほうが制御設計は単純になります。

 

注意すべき重要な点は、リレー コイル ワイヤの抵抗および動作電圧と動作/復帰のタイミングに対する温度の影響を補償しなければならないことです。これについては、アプリケーション ノート「優れたリレーおよびコンタクタ性能にきわめて重要な適切なコイル駆動」および「コイル電圧および温度補償」で説明されています。

免責事項:

TE は、掲載されている情報の正確性を確認するためにあらゆる合理的な努力を払っていますが、誤りが含まれていないことを保証するものではありません。また、この情報が正確で正しく、信頼できる最新のものであることについて、一切の表明、保証、約束を行いません。TE は、ここに掲載されている情報に関するすべての保証を、明示的、黙示的、法的を問わず明示的に否認します。これには、あらゆる商品性の黙示的保証、または特定の目的に対する適合性が含まれます。いかなる場合においても、TE は、情報受領者の使用から生じた、またはそれに関連して生じたいかなる直接的、間接的、付随的、特別または間接的な損害についても責任を負いません。