過渡抑制の必要性
このアプリケーション ノートは、不適切なリレー コイル抑制から生じる多くの用途の問題への対応として書かれています。典型的な症状は、高突入電流の誘導負荷または電灯負荷のスイッチング時におけるノーマル オープン接点のランダムな「タック」溶接です。
メカニカル スイッチまたは半導体によって電気機械式リレーの電力が急速に遮断されると、磁場の崩壊によって大きな過渡電圧が発生します。これは、蓄積されたエネルギを放散し、急激な電流の変化に対抗するためです。たとえば DC 12 V リレーは、電源の遮断時に 1,000 ~ 1,500 ボルトの電圧を発生させる可能性があります。現代の電子システムの出現に伴い、このような比較的大きな過渡電圧は、設計エンジニアにとっては EMI や半導体の故障、スイッチの摩耗といった問題を引き起こす原因となっていました。そのため、ピーク電圧を低いレベルに制限する他のコンポーネントを使用してリレー コイルを抑制するのが一般的な慣行となっています。
リレーで使用される過渡抑制の種類
リレー コイルから発生する過渡電圧を抑制する基本的な手法は、図に示すとおりです。
この図からわかるように、抑制デバイスはリレー コイルまたはリレーの制御に使用するスイッチと並列に配置できます。ただし一般的には、コイルと並列に配置する方法が取られます。これは、その方がリレーに近い位置に配置できるからです (プリント基板の用途は例外で、いずれかに配置されます)。リレー コイルと並列に配置する場合は、以下のいずれかの抑制方法を使用できます。
A. 陰極対陰極 (または陽極対陽極) に 2 つのツェナー ダイオードを接続した場合と同様の V-I 特性を持つ双方向の過渡抑制ダイオード。
B. 陽極 (または陰極) が共通になり、整流器によって正常な電流が妨げられるように、逆バイアスをかけた整流ダイオードをツェナー ダイオードと直列に配置する。
C. 金属酸化物バリスタ (MOV)。
D. 逆バイアスをかけた整流ダイオードを抵抗器と直列に配置する。
E. 抵抗器。条件的に使用できる場合は、最も経済的な抑制方法となることが多い。
F. 逆バイアスをかけた整流ダイオード。
G. 抵抗器-コンデンサ「スナバ」。一般的に最も経済性が低いソリューションであり、実用的なソリューションとはみなされなくなっている。
H. 抑制デバイスとして二次巻線を使用するバイファイラ巻線コイル。リレーのコストとサイズに大きな影響を与えるため、あまり実用的とはいえない。
スイッチング素子と並列に使用する抑制方法は、通常はツェナー ダイオードまたは抵抗器-コンデンサ「スナバ」のいずれかになります。「コイルに対して並列」の用途に関連するコメントは、この回路にも適用されます。
抑制器をスイッチに対して並列に配置
リレーの動作と寿命に対するコイル抑制の影響
コイル抑制の使用は重要性を増していますが、リレーの設計には、抑制による動的な影響が考慮されていないのが一般的です。そのため最適なスイッチング寿命 (ノーマル オープン接点の場合) は、まったく抑制されていないリレーという前提で算出され、通常はそれに基づいて製品寿命定格が決められます。DC 負荷を正常に「ブレーク」するには、リレー接点がある程度高速に開路位置に移動する必要があります。
一般的なリレーは、ドロップアウト時は通電していない無負荷位置にアーマチュアが高速に移動します。接点が開になる瞬間のアーマチュアの速度は、「タック溶接」を回避するリレーの能力において大きな役割を果たします。これは、高電流の抵抗負荷 (または高い突入電流) の「メーク」時に形成される軽度の溶着部が、一定の速度から生まれる適度な力によって破砕されるためです。コイル抑制によって最も大きな影響を受けるのはアーマチュアの速度です。抑制器によって伝導経路が生まれると、リレーの磁気回路に蓄積されたエネルギが徐々に衰退するためアーマチュアの動作が遅くなり、場合によっては一時的に逆方向に動作することもあります。このような方向の逆転と接点が再度閉路に移動する動作は、特に誘導負荷と組み合わされた場合に、接点の「タック溶接」がランダムに断続的に発生する原因となることが多くなります。この溶着部は、リレーが再度動作する際に解放できますが、若干の振動が生まれる場合もあります。
アーマチュアに対する影響とノーマル オープン接点に合わせた最適化という観点から、最適な抑制手法は、シリコン過渡抑制ダイオードを使用する方法です。この抑制器を使用すると、リレーがドロップアウトする動作に対する影響が最小で済みます。これは、事前定義された電圧レベルまでリレーが過渡し、その後は低インピーダンスで電流が流れるためです。これにより、蓄積されたエネルギが抑制器によって迅速に放散されます。過渡抑制ダイオードは双方向コンポーネントとして使用可能で、内部に取り付けた場合はリレーを無極性にできます。単方向の過渡抑制器を使用する場合は、正常な電流を遮断するために、整流ダイオードを直列に配置する必要があります。この方法は、ツェナー ダイオードを使用する場合と比較して、ほとんどメリットはありません。過渡抑制器は、コイルの電力遮断やその用途におけるモータの「ノイズ」など、予期されるあらゆる過渡電圧に対応できるパルス エネルギ定格という基準で選択する必要があります。
金属酸化物バリスタ (MOV) を使用した場合も過渡抑制ダイオードを使用した場合と同様の結果を得られますが、「オン状態」のインピーダンスが高くなるため、発生する電圧が高くなります。たとえば、33 ボルトの過渡抑制ダイオードでは、30 ~ 36 ボルトの「クランプ」電圧が発生します。一方、33 ボルトの MOV の場合は、45 ~ 55 ボルトでリレーをクランプします (コイル電流が 130 mA の一般的な自動車用リレーの場合)。電圧の高さが問題にならない場合は、MOV のほうが過渡抑制ダイオードよりも低コストで済み、無極性リレーを実現することもできます。
リレーに極性を持たせることができる場合は、逆バイアスをかけた整流ダイオードをツェナー ダイオードに直列で配置する方法が最適なソリューションとなります。自動車用回路については、多くの場合、この抑制手法が Siemens Electromechanical Components (SEC) によって推奨されます。復帰動作による影響が最小限に抑えられ、信頼性が損なわれないためです。通常は低コストの手法であり、設計上の注意事項は、その用途で使用するリレーに対して適切な絶縁破壊電圧およびインパルス電力の仕様を持つツェナー ダイオードを選択することだけです。リレー ドライバとしてトランジスタを使用するプリント基板の用途では、トランジスタの「両端に」ツェナー ダイオードを配置できます。つまり、一般的なエミッタ回路の場合は、陰極をコレクタに接続し、陽極をエミッタに接続します (この種類の回路では、直列整流ダイオードは使用しません)。
最大負荷のスイッチング容量が必要とされない場合、一部のリレーでは、逆バイアスをかけた整流ダイオードと抵抗器を直列で使用することができます。リレーに蓄積されたエネルギを迅速に放散できる十分な抵抗値を持つ抵抗器を使用する必要がありますが、同時に、目的のピーク過渡電圧に収まるように注意する必要があります。必要な抵抗値は、以下の式により概算できます。
R = Vpeak/Icoil
各値の意味は以下のとおりです。
R = Ω 単位の抵抗値
Vpeak = 許容されるピーク過渡電圧
Icoil = 安定状態のリレー コイル電流
抵抗器でエネルギが失われるため、実際に測定されるピーク電圧は、この式の計算よりも低くなります。この種類の抑制手法を使用する場合は、推奨される値についてリレーの製造元に問い合わせてください。
電力損失が大きくなること、およびその結果として抵抗器から熱が発生することが許容される場合は、抵抗器自体を過渡抑制器として使用することもできます。ほとんどの場合、この手法が最も低コストの抑制手法となります (リレーの性能に対する影響を最小限に抑えるように、抵抗値を適切な大きさに調整できることが前提となります)。用途の要件として許容される場合、通常はこの手法が SEC によって推奨されます。
多くのエンジニアは、整流ダイオードを単独で使用して、リレー コイルに対する過渡抑制を提供しています。この手法はコスト効率が高く、過渡電圧を完全に削減できますが、リレーの性能には大きく影響します。このようなシステムでは、原因を説明できないランダムな「タック溶接」が頻繁に発生します。用途によっては、この問題は些細なものでしかなく、コントローラまたはオペレータは、適切な応答が得られるまでリレーの一連の動作を繰り返します。ただし多くの用途では、初回の問題発生がシステム全体の障害の原因となり、場合によっては危険な状況を生み出す可能性もあります。そのため、そのようなシステムについては、別のリレー抑制手法を使用して設計してください。
各種コイル抑制のリレー応答時間に対する影響を計るため、以下のデータを考慮してください。これは、55 Ω のコイルを持つ自動車用の ISO タイプ リレーを使用し、DC 13.5 V の電圧をコイルに印加した状態で記録されたものです。
リレー コイル抑制で推奨される手法
物理学の観点から、リレー コイルの過渡抑制で推奨される手法は、逆バイアスをかけた整流ダイオードと直列ツェナー ダイオードをリレー コイルと並列に配置して使用する方法です。これにより、リレーの最適な復帰動作とノーマル オープン接点寿命が実現します。プリント基板実装用リレーの場合、このような抑制手法を回路に容易に取り入れることができますが、ソケット取り付けのリレーに対する抑制の場合は、抵抗器を使用する方法よりも実用性が低くなる可能性があります。
許容される過渡電圧が大きく、電力損失が許容される場合は、抵抗器によってリレーを抑制することができます。故障モード影響解析 (FMEA) の観点から、上記で推奨される 2 つのダイオードを使用する手法よりも、抵抗器を使用する手法の方が障害の発生リスクは低くなります (抵抗値が、リレーの復帰動作に対する悪影響を回避するのに十分な大きさであることが条件となります)。また、ある種類のリレーに対して最適な抵抗値が、別の種類では必ずしも適切ではないことに注意する必要があります。
ここまで、ノーマル オープン接点の性能に基づいた推奨抑制手法を提供してきましたが、ノーマル クローズ接点についても触れておきます。一次負荷がノーマル クローズ接点にかかる場合 (かつノーマル オープン接点には小さな負荷しかかからない、あるいは負荷がかからない場合)、リレー抑制の手法として整流ダイオードを単独で (あるいは整流ダイオードと低い抵抗値の直列抵抗器を) 使用することが推奨されます。アーマチュアの動作が遅くなると、ノーマル オープン接点の性能には悪影響を与えますが、ノーマル クローズ接点の性能は向上するのが一般的です。これは、ノーマル クローズ接点の閉じ動作時に発生する接点跳動が低下するためです。アーマチュアの動作が遅くなることで衝撃速度が低下しますが、この現象は、一部のリレーでノーマル クローズ接点の性能を向上させるために利用されていたこともありました。
過渡抑制の必要性
このアプリケーション ノートは、不適切なリレー コイル抑制から生じる多くの用途の問題への対応として書かれています。典型的な症状は、高突入電流の誘導負荷または電灯負荷のスイッチング時におけるノーマル オープン接点のランダムな「タック」溶接です。
メカニカル スイッチまたは半導体によって電気機械式リレーの電力が急速に遮断されると、磁場の崩壊によって大きな過渡電圧が発生します。これは、蓄積されたエネルギを放散し、急激な電流の変化に対抗するためです。たとえば DC 12 V リレーは、電源の遮断時に 1,000 ~ 1,500 ボルトの電圧を発生させる可能性があります。現代の電子システムの出現に伴い、このような比較的大きな過渡電圧は、設計エンジニアにとっては EMI や半導体の故障、スイッチの摩耗といった問題を引き起こす原因となっていました。そのため、ピーク電圧を低いレベルに制限する他のコンポーネントを使用してリレー コイルを抑制するのが一般的な慣行となっています。
リレーで使用される過渡抑制の種類
リレー コイルから発生する過渡電圧を抑制する基本的な手法は、図に示すとおりです。
この図からわかるように、抑制デバイスはリレー コイルまたはリレーの制御に使用するスイッチと並列に配置できます。ただし一般的には、コイルと並列に配置する方法が取られます。これは、その方がリレーに近い位置に配置できるからです (プリント基板の用途は例外で、いずれかに配置されます)。リレー コイルと並列に配置する場合は、以下のいずれかの抑制方法を使用できます。
A. 陰極対陰極 (または陽極対陽極) に 2 つのツェナー ダイオードを接続した場合と同様の V-I 特性を持つ双方向の過渡抑制ダイオード。
B. 陽極 (または陰極) が共通になり、整流器によって正常な電流が妨げられるように、逆バイアスをかけた整流ダイオードをツェナー ダイオードと直列に配置する。
C. 金属酸化物バリスタ (MOV)。
D. 逆バイアスをかけた整流ダイオードを抵抗器と直列に配置する。
E. 抵抗器。条件的に使用できる場合は、最も経済的な抑制方法となることが多い。
F. 逆バイアスをかけた整流ダイオード。
G. 抵抗器-コンデンサ「スナバ」。一般的に最も経済性が低いソリューションであり、実用的なソリューションとはみなされなくなっている。
H. 抑制デバイスとして二次巻線を使用するバイファイラ巻線コイル。リレーのコストとサイズに大きな影響を与えるため、あまり実用的とはいえない。
スイッチング素子と並列に使用する抑制方法は、通常はツェナー ダイオードまたは抵抗器-コンデンサ「スナバ」のいずれかになります。「コイルに対して並列」の用途に関連するコメントは、この回路にも適用されます。
抑制器をスイッチに対して並列に配置
リレーの動作と寿命に対するコイル抑制の影響
コイル抑制の使用は重要性を増していますが、リレーの設計には、抑制による動的な影響が考慮されていないのが一般的です。そのため最適なスイッチング寿命 (ノーマル オープン接点の場合) は、まったく抑制されていないリレーという前提で算出され、通常はそれに基づいて製品寿命定格が決められます。DC 負荷を正常に「ブレーク」するには、リレー接点がある程度高速に開路位置に移動する必要があります。
一般的なリレーは、ドロップアウト時は通電していない無負荷位置にアーマチュアが高速に移動します。接点が開になる瞬間のアーマチュアの速度は、「タック溶接」を回避するリレーの能力において大きな役割を果たします。これは、高電流の抵抗負荷 (または高い突入電流) の「メーク」時に形成される軽度の溶着部が、一定の速度から生まれる適度な力によって破砕されるためです。コイル抑制によって最も大きな影響を受けるのはアーマチュアの速度です。抑制器によって伝導経路が生まれると、リレーの磁気回路に蓄積されたエネルギが徐々に衰退するためアーマチュアの動作が遅くなり、場合によっては一時的に逆方向に動作することもあります。このような方向の逆転と接点が再度閉路に移動する動作は、特に誘導負荷と組み合わされた場合に、接点の「タック溶接」がランダムに断続的に発生する原因となることが多くなります。この溶着部は、リレーが再度動作する際に解放できますが、若干の振動が生まれる場合もあります。
アーマチュアに対する影響とノーマル オープン接点に合わせた最適化という観点から、最適な抑制手法は、シリコン過渡抑制ダイオードを使用する方法です。この抑制器を使用すると、リレーがドロップアウトする動作に対する影響が最小で済みます。これは、事前定義された電圧レベルまでリレーが過渡し、その後は低インピーダンスで電流が流れるためです。これにより、蓄積されたエネルギが抑制器によって迅速に放散されます。過渡抑制ダイオードは双方向コンポーネントとして使用可能で、内部に取り付けた場合はリレーを無極性にできます。単方向の過渡抑制器を使用する場合は、正常な電流を遮断するために、整流ダイオードを直列に配置する必要があります。この方法は、ツェナー ダイオードを使用する場合と比較して、ほとんどメリットはありません。過渡抑制器は、コイルの電力遮断やその用途におけるモータの「ノイズ」など、予期されるあらゆる過渡電圧に対応できるパルス エネルギ定格という基準で選択する必要があります。
金属酸化物バリスタ (MOV) を使用した場合も過渡抑制ダイオードを使用した場合と同様の結果を得られますが、「オン状態」のインピーダンスが高くなるため、発生する電圧が高くなります。たとえば、33 ボルトの過渡抑制ダイオードでは、30 ~ 36 ボルトの「クランプ」電圧が発生します。一方、33 ボルトの MOV の場合は、45 ~ 55 ボルトでリレーをクランプします (コイル電流が 130 mA の一般的な自動車用リレーの場合)。電圧の高さが問題にならない場合は、MOV のほうが過渡抑制ダイオードよりも低コストで済み、無極性リレーを実現することもできます。
リレーに極性を持たせることができる場合は、逆バイアスをかけた整流ダイオードをツェナー ダイオードに直列で配置する方法が最適なソリューションとなります。自動車用回路については、多くの場合、この抑制手法が Siemens Electromechanical Components (SEC) によって推奨されます。復帰動作による影響が最小限に抑えられ、信頼性が損なわれないためです。通常は低コストの手法であり、設計上の注意事項は、その用途で使用するリレーに対して適切な絶縁破壊電圧およびインパルス電力の仕様を持つツェナー ダイオードを選択することだけです。リレー ドライバとしてトランジスタを使用するプリント基板の用途では、トランジスタの「両端に」ツェナー ダイオードを配置できます。つまり、一般的なエミッタ回路の場合は、陰極をコレクタに接続し、陽極をエミッタに接続します (この種類の回路では、直列整流ダイオードは使用しません)。
最大負荷のスイッチング容量が必要とされない場合、一部のリレーでは、逆バイアスをかけた整流ダイオードと抵抗器を直列で使用することができます。リレーに蓄積されたエネルギを迅速に放散できる十分な抵抗値を持つ抵抗器を使用する必要がありますが、同時に、目的のピーク過渡電圧に収まるように注意する必要があります。必要な抵抗値は、以下の式により概算できます。
R = Vpeak/Icoil
各値の意味は以下のとおりです。
R = Ω 単位の抵抗値
Vpeak = 許容されるピーク過渡電圧
Icoil = 安定状態のリレー コイル電流
抵抗器でエネルギが失われるため、実際に測定されるピーク電圧は、この式の計算よりも低くなります。この種類の抑制手法を使用する場合は、推奨される値についてリレーの製造元に問い合わせてください。
電力損失が大きくなること、およびその結果として抵抗器から熱が発生することが許容される場合は、抵抗器自体を過渡抑制器として使用することもできます。ほとんどの場合、この手法が最も低コストの抑制手法となります (リレーの性能に対する影響を最小限に抑えるように、抵抗値を適切な大きさに調整できることが前提となります)。用途の要件として許容される場合、通常はこの手法が SEC によって推奨されます。
多くのエンジニアは、整流ダイオードを単独で使用して、リレー コイルに対する過渡抑制を提供しています。この手法はコスト効率が高く、過渡電圧を完全に削減できますが、リレーの性能には大きく影響します。このようなシステムでは、原因を説明できないランダムな「タック溶接」が頻繁に発生します。用途によっては、この問題は些細なものでしかなく、コントローラまたはオペレータは、適切な応答が得られるまでリレーの一連の動作を繰り返します。ただし多くの用途では、初回の問題発生がシステム全体の障害の原因となり、場合によっては危険な状況を生み出す可能性もあります。そのため、そのようなシステムについては、別のリレー抑制手法を使用して設計してください。
各種コイル抑制のリレー応答時間に対する影響を計るため、以下のデータを考慮してください。これは、55 Ω のコイルを持つ自動車用の ISO タイプ リレーを使用し、DC 13.5 V の電圧をコイルに印加した状態で記録されたものです。
リレー コイル抑制で推奨される手法
物理学の観点から、リレー コイルの過渡抑制で推奨される手法は、逆バイアスをかけた整流ダイオードと直列ツェナー ダイオードをリレー コイルと並列に配置して使用する方法です。これにより、リレーの最適な復帰動作とノーマル オープン接点寿命が実現します。プリント基板実装用リレーの場合、このような抑制手法を回路に容易に取り入れることができますが、ソケット取り付けのリレーに対する抑制の場合は、抵抗器を使用する方法よりも実用性が低くなる可能性があります。
許容される過渡電圧が大きく、電力損失が許容される場合は、抵抗器によってリレーを抑制することができます。故障モード影響解析 (FMEA) の観点から、上記で推奨される 2 つのダイオードを使用する手法よりも、抵抗器を使用する手法の方が障害の発生リスクは低くなります (抵抗値が、リレーの復帰動作に対する悪影響を回避するのに十分な大きさであることが条件となります)。また、ある種類のリレーに対して最適な抵抗値が、別の種類では必ずしも適切ではないことに注意する必要があります。
ここまで、ノーマル オープン接点の性能に基づいた推奨抑制手法を提供してきましたが、ノーマル クローズ接点についても触れておきます。一次負荷がノーマル クローズ接点にかかる場合 (かつノーマル オープン接点には小さな負荷しかかからない、あるいは負荷がかからない場合)、リレー抑制の手法として整流ダイオードを単独で (あるいは整流ダイオードと低い抵抗値の直列抵抗器を) 使用することが推奨されます。アーマチュアの動作が遅くなると、ノーマル オープン接点の性能には悪影響を与えますが、ノーマル クローズ接点の性能は向上するのが一般的です。これは、ノーマル クローズ接点の閉じ動作時に発生する接点跳動が低下するためです。アーマチュアの動作が遅くなることで衝撃速度が低下しますが、この現象は、一部のリレーでノーマル クローズ接点の性能を向上させるために利用されていたこともありました。