ISM、LPWAN、および LoRaWAN アンテナ

ISM (工業、科学、医療) アンテナは 比較的狭い ISM 周波数帯域ではあるが、広範囲にわたる無線周波数 (RF) 帯域で動作します。ISM 周波数帯域に属するアンテナは、さまざまな用途に使用できます。低電力で短距離送信用に設計されたアンテナもあれば、同じ周波数帯域に八木アンテナのような長距離指向性アンテナもあります。ISM アンテナは相当高い周波数で動作できますが、そのためには政府から免許を取得する必要があります。多くの ISM 周波数帯域内で免許が必要な用途と免許が不要な用途が混在しており、無免許で利用できる帯域は地域によって異なる場合もあります。

ISM アンテナは、2.4 GHz 以下で使用する場合には免許を取得する必要がないため、ここ数十年間でワイヤレス デバイスの短距離通信システムに使用されるケースが急増しています。これらのデバイスは工業、科学、医療機器のいずれにも属していないため、これは「非 ISM 使用」と呼ばれることがあります。今やワイヤレス デバイスは、ISM 帯域を使用する機器の中で圧倒的多数を占めています。このようなデバイスには、Wi-Fi ネットワーク、コードレス電話、ワイヤレス マイク、Bluetooth デバイス、ガレージ ドア オープナー、ベビー モニタ、ワイヤレス ドアベル、キーレス カー エントリ システム、野生動物追跡、近距離通信 (NFC) デバイス (非接触型スマート カードや近接型カードなど) などがあります。IoT (モノのインターネット) デバイスやその他のワイヤレス システムを設計する際は、サブ GHz 帯域と 2.4 GHz 帯域の違いや、それらの違いが最適なシステム性能と商業化に及ぼす影響を考慮することが重要です。サブ GHz 帯域は通常、2.4 GHz 帯域より長距離のワイヤレス通信リンクを確立することができ、壁や建物などの物体の透過性が高くなっています。サブ GHz 周波は反射の影響を受けにくく、より一層屈折して障害物を回り込むことができます。また、多くの場合、無免許帯域で動作している他の大量のワイヤレス デバイスから受ける干渉が小さくなります。サブ GHz ネットワークは大規模な建物環境で推奨されるワイヤレス技術であり、低帯域幅または低データ速度の用途でよく使用されます。それに対して 2.4 GHz 帯域は、より高いデータ速度が必要な場合に使用されます。サブ GHz の使用例としては、火災警報、携帯型支払いデバイス、バーコード スキャナ、スマート メータ、電子 POS、在庫追跡、リモート プロセス モニタリング、レストランの注文システムなどが挙げられます。

TE Connectivity は、主に 433.92 MHz、868 MHz、915 MHz、2.4 GHz の中心周波数帯域で動作可能な ISM アンテナ ソリューションを幅広くご用意しています。これには、短距離通信用の内蔵アンテナ/内部アンテナ、中距離通信用のリモート、ダイポール、および端子マウント外部アンテナ、長距離通信用の屋外定格外部アンテナが含まれます。

LPWAN (低消費電力、広域ネットワーク) を使用すると、低いビット レートで低帯域幅デバイス間の長距離ワイヤレス通信ができます。LPWAN アンテナは、IoT (モノのインターネット) デバイスや IoT ネットワークをサポートするよう設計されており、従来のワイヤレス ネットワークより低コストかつ高い電力効率で動作します。また、広範囲に広がる多数のデバイスをサポートすることもできます。IoT デバイスの製造コストや生涯運用コストを抑えたい組織は、通信方法として LPWAN アンテナを選ぶケースがよく見られます。

LPWAN アンテナは、従来のモバイル ネットワークと比較して電力要件が低い、伝送距離が長い、コストが低いという特長を持つため、多数の装置間 (M2M) 接続や IoT 接続を実現できます。トレードオフは、伝送可能なデータ量が他のネットワークよりも少ないことです。したがって、LPWAN は、ダウンリンク容量をさほど頻繁には必要としない用途や、データ パケットが比較的小さい用途に最も適しています。LPWAN アンテナは一般に、小型デバイスのバッテリー寿命を延長するために選ばれており、リモート ロケーションからのデータ伝送頻度が少ない場合はバッテリー寿命が 10 年まで延びる可能性があります。LPWAN アンテナの使用例には、スマート メータリング、スマートライト、設備監視および追跡、スマート シティ、精密農業、家畜監視、エネルギー管理、製造、産業用 IoT デバイスなどがあります。

LPWAN は、さまざまな形状やフォームで提供されている各種ネットワーク技術を利用できます。LPWAN アンテナは免許が必要な周波数または免許が不要な周波数で使用でき、独自方式のものとオープン スタンダードなものがあります。最も広く使用されている LPWAN の 1 つは Sigfox です。これは免許が不要な独自仕様のパブリック ネットワークで、868 MHz または 902 MHz の帯域で動作します。その他の LPWAN アンテナ規格には、2.4 GHz 周波数帯で動作する RPMA (Random Phase Multiple Access)、LoRa (複数のサブ GHz 周波数で伝送するため干渉を受けにくい免許不要のネットワーク)、ウェイトレス SIG、NB-IoT (ナローバンド IoT)、LTE-M などがあります。NB-IoT と LTE-M はよく似ており、どちらも既存のセルラ インフラストラクチャで動作するため、サービス プロバイダはこれらの方式を使用して IoT コネクティビティを迅速に追加できます。NB-IoT (CAT-NB1 とも呼ばれます) は、既存の LTE システムと GSM (汎欧州デジタル移動体通信) システムで動作します。LTE-M (CAT-M1 とも呼ばれます) は、LPWAN 技術の中で最も高い帯域幅を持ちます。

TE Connectivity は、小型の IoT デバイス用に設計されたボード マウント型の極めて小さい内蔵/内部アンテナをはじめ、さまざまな LPWAN アンテナ ソリューションを取り揃えています。リモート アンテナや端子マウント型のアンテナも各種ご用意しており、長距離伝送が必要な IoT デバイス向けのコンパクトな外部アンテナ ソリューションを実現できます。 

LoRaWAN (長距離広域ネットワーク) は LPWAN 技術の一種で、LoRaWAN アンテナを使用して IoT デバイスを接続します。LoRaWAN アンテナは広大な距離をカバーでき、バッテリー寿命を長く保ちます。LoRaWAN は他のワイヤレス データ伝送技術と比較して、低い帯域幅で著しく広い通信範囲を提供します。
双方向通信が可能で屋内の透過性に優れているため、IoT ソリューションに適しており、スマート シティや産業用途で広く採用されています。

LoRaWAN を使用する IoT センサやデバイスは消費電力が非常に低いため、長期間の動作を可能にします。LoRaWAN は、数千台のデバイスやノードを処理できるシンプルなソフトウェア アーキテクチャで安全かつ信頼性の高い通信を可能にします。LoRaWAN は、デベロッパー、ハードウェア ベンダー、IoT プラットフォーム、IoT 技術ベンダー、システム インテグレータ、電気通信プロバイダの間で人気があります。障害物のない平坦な場所では、LoRaWAN アンテナの通信距離は最大 30 km で、都市部では、環境や障害物にもよりますが、3 km 程度まで到達できます。LoRaWAN は、米国で人気の 915 MHz 帯域やヨーロッパの 868 MHz 帯域など、世界中の多くの免許不要な無線周波数で動作します。

使用する帯域幅が少ないため、LoRaWAN アンテナは迅速に導入することができ、データ伝送の質や一貫性が低い IoT デバイスにとって最適な選択肢です。Sigfox のペイロードが 12 バイトであるのに対して、LoRaWAN アンテナは最大 100 バイトのペイロードを送信できます。LoRaWAN で 1 日に送信できるメッセージの数に制限はありませんが、Sigfox では 1 日あたり 140 メッセージに制限されています。

TE Connectivity は、小型の IoT デバイス用に設計されたボード マウント型の極めて小さい内蔵/内部アンテナをはじめ、さまざまな LoRaWAN アンテナ ソリューションを取り揃えています。リモート アンテナや端子マウント型のアンテナも各種ご用意しており、
IoT デバイス向けのコンパクトな外部アンテナ ソリューションを実現できます。長距離通信用に、パネル アンテナまたは八木アンテナ型の大きな指向性外部アンテナもあります。