RTD

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測温抵抗体 (RTD) の仕組み

測温抵抗体 (RTD) は、温度変化によって内部の抵抗値が変化するセンサです。

測温抵抗体の原理

測温抵抗体 (RTD - Resistance Temperature Detector) は、温度変化によって内部の抵抗値が変化するセンサです。センサの温度が上昇すると、抵抗値が大きくなります。抵抗と温度の関係はよく知られており、長期的に再現されます。測温抵抗体は受動デバイスです。したがって、測温抵抗体自体は出力しません。外部電子装置を使用して、低レベルの電流をセンサに流して電圧を発生させることにより、センサの抵抗を測定します。通常 1 mA 未満の測定電流が使われ、最大 5 mA まで自己発熱のリスクはありません。

標準許容差

測温抵抗体 (RTD) には、いくつかの標準化された抵抗温度係数 (α) と許容差があります。最も一般的な標準化曲線は、ドイツ規格協会による DIN 曲線です。曲線は、100 Ω プラチナ温度センサの抵抗値と温度の関係、標準化された許容差、測定可能な温度範囲を示しています。

 

DIN 規格は、0°C におけるベース抵抗および 0.00385 Ω/Ω/°C の温度係数を指定しています。DIN RTD センサの公称出力 (抵抗) を以下の図に示します。

 

DIN RTD には、3 クラスの標準許容差があります。各クラスの許容差は次の通りです。

 

DIN クラス A: ±(0.15 + 0.002 |T|°C)

DIN クラス B: ±(0.3 + 0.005 |T|°C)

DIN クラス C: ±(1.2 + 0.005 |T|°C)

0°C Ω
0 100.00
10 103.90
20 107.79
30 111.67
40 115.54
50 119.40
60 123.24
70 127.07
80 130.89
90 134.70
100 138.50

測温抵抗体素子の種類

測温抵抗体素子の種類を選択する場合は、まずセンサを読み取る機器を検討する必要があります。つまり、機器のセンサ入力に適合する素子のタイプを選択します。最も一般的な 測温抵抗体 は、温度係数 0.00385 の 100 Ω プラチナです。

 

素子のタイプ ベース抵抗 (Ω) 抵抗温度係数 (TCR Ω/Ω/°C)
プラチナ 0°C で 100 Ω .00385 
プラチナ 0°C で 100 Ω .00392
プラチナ 0°C で 100 Ω .00375 
ニッケル 0°C で 120 Ω .00672
25°C で 10 Ω .00427
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測温抵抗体 の精度

素子の種類の次は、測定に必要とされる精度を決定します。精度は、ベース抵抗許容差 (キャリブレーション温度での抵抗値の許容差) と抵抗値許容差の温度係数 (傾斜特性の許容差) を組み合わせたものです。これより高い温度でも低い温度でも、許容差は広がり、精度は低下します (以下のグラフを参照)。最も一般的なキャリブレーション温度は 0°C です。

rtd-resistance-vs-temperature
platinum-rtd-standard-accuracy
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リード線構成

RTD センサには、さまざまなリード線構成が用意されています。最も一般的な構成は、1 素子 3 線式です。利用できるリード線構成を以下に図解します。

wire-configuration

2 線式センサは、精度がそれほど重視されない用途で使用されます。2 線式構造は最もシンプルな測定方法ですが、リード線の抵抗値が加算されるため、本質的に精度に問題があります。2 線式構造には、抵抗測定値の増分として加算されるリード線の抵抗値を直接相殺する手段がありません。

 

3 線式センサには相殺ループがあり、リード線の抵抗値が含まれない温度を測定することができます。この構成では、制御装置・測定装置が 2 つの測定を行います。まず、センサと接続されているリード線全体の抵抗値を測定します。次に、相殺ループ抵抗の抵抗値を測定します。全抵抗値から相殺ループ抵抗値を差し引くと、純抵抗値が決定されます。3 線式構造は、精度と利便性を備えた、最も広く使われている方式です。

 

4 線式構造による測定方式では、リード線の影響を受けることなくセンサの抵抗値を測定することができます。最も精度の高い方式ですが、産業用の制御装置や測定装置の多くは真の 4 線式測定に対応できません。

 

センサのリード線から現場配線への移行は、センサに取り付けられた接続ヘッドの中で行われます。接続作業を容易にするため、端子ブロックが使われています。

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リード線の影響

抵抗温度検出器を使った温度測定とは、実際には抵抗値を測定することです。抵抗値の測定には、常に不平衡ホイートストン ブリッジ回路が使われます。センシング素子の抵抗を測定する場合、正確な読み取り値を得るには、すべての外的要因を最小限にするか相殺する必要があります。

 

誤差の主な原因は、特に 2 線構成においては、リード線の抵抗である可能性があります。

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抵抗はセンシング素子と直列であるため、リードアウトはセンシング素子とリード線の抵抗値の合計になります。2 線式測温抵抗体は、センシング素子の抵抗値が高く、リード線の抵抗値が低い場合に可能となります。

 

リード線の抵抗値がセンシング素子の抵抗値より高い場合は、相殺する必要があります。相殺は、3 線式構造で実行できます。次の 3 線式構造の図は、3 本目のリード線 L3 を経由する電源から測温抵抗体への経路を示しています。これにより、リード線 1 (L1) とリード線 2 (L2) がブリッジ回路の反対側のアームに入り、出力を相互に相殺して、ブリッジ回路の出力電圧に対する影響がなくなります。

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特にセンシング素子の抵抗が低く、リード線のわずかな抵抗がリードアウトの精度に大きな影響を及ぼす場合には、3 線式接続の RTD が推奨されます。