トレンド
自動運転における Ethernet の役割
商用車および産業車両の自動運転を可能にするコネクティビティ要件の詳細をご覧ください。
著者
Mark Brubaker (TE Connectivity、データ コネクティビティ担当プロダクト マネージャ)
自動運転のトレンドは、乗用車の域をはるかに超えています。ますます多くの商用車や産業用車両において、運転者支援やオートメーション、インフォテインメント オプション、360° カメラ システム、V2V/V2I 高速通信などの高度な機能と重要な各種安全機能の導入が検討されています。 新しい機能やテクノロジは、商用車や産業用車両にさまざまなメリットをもたらします。ドライバーの満足感と安全性を増強すると同時に、オペレータの生産性と性能の向上を図り、車両所有者の総所有コスト (TCO) を低減します。これらの先進機能を搭載したトラック、バス、オフハイウェイ車両は、周囲の環境や進行先経路に関する詳細な情報を「認識」します。また、燃料消費と環境への影響が大幅に削減され、運転がすべての人にとってより安全なものとなります。
先進運転支援システム (ADAS) は、カメラ システムやレーダー/ライダーなどの一連の車載用センサによって実用化されます。これにより、車線維持アシスト、死角検出、緊急ブレーキ、同乗者モニタ、眠気監視などの高度な安全機能が使用可能になります。インフォテインメント機能には、ドライバーに満足感と楽しさを与えるエンターテインメントと通信システムだけでなく、360° サラウンド ビューやマルチメディア オーディオ/ビデオ ストリーム、高解像度デジタル ディスプレイ・ダッシュボードなど、車両の監視と操縦を可能にする重要なシステム情報へのアクセスも含まれます。
これらのシステムと装置はすべて、車体の全域にわたって、高速データを低レイテンシで転送する高度なネットワークを通じて相互接続する必要があります。装置によって収集されたすべての情報は 1 つ以上のオンボードの電子制御ユニット (ECU) を通じて処理され、車両とその環境の完全なモデルが作成されます。
しかし、これらの高度な新機能が搭載されるようになるには、まだ克服すべき課題が残されています。商用車は、過酷な条件のもとで動作します。したがって、コンポーネントの堅牢性は重要な必須条件です。車載ネットワークに欠かせない端子とコネクタは、過酷な環境においてもリアルタイムで確実に動作する必要があります。また、激しい振動と機械的衝撃に対する耐性を備え、商用車が働く過酷な環境においてフィールド メンテナンスを行える必要もあります。このような環境には、ほこり、泥、湿気などがあり、温度範囲は -40°C ~ +125°C に及びます。
車載ネットワーク
車載ネットワークは、車両のバックボーンです。すべての通信を可能にする基盤となるインフラです。 これらの通信には、車内通信、車両間通信 (V2V)、車両とインフラ (オペレータ、コントロール センタ、メーカーなど) 間通信 (V2I)、さらには増大しつつある車両環境内のすべてのモノをつなぐ通信 (V2X) が含まれます。ネットワークは、リアルタイムでデータ転送を行います。テレメトリ、クラウド コンピューティング、自動運転アーキテクチャなどの高度な機能によって、車両のあらゆる面に関する完全な情報を常に確実にドライバーに伝えます。
車両が完全自律型へと進化すると、現在のシステムよりも多くのデータが必要となり、データは指数関数的に生成されます。これらのデータは、さらに多くのセンサと外部アンテナによって配送されます。また、車両の整備と更新の大部分は、より高速のデータ伝送を必要とする OTA (Over The Air) ソフトウェアのアップデートを経由して行われるようになります。
Ethernet - 帯域幅の拡大
かなり幅広い範囲において ECU (電子制御ユニット) が共有するリアルターム データの数が増えており、それに伴ってネットワーク帯域幅の需要も増大しています。 現在、産業用車両や商用車に最も多く使われているネットワーク アーキテクチャは、SAE J1939 プロトコルの CAN ネットワークです。CAN ネットワークを追加すればするほど、既存のシステムの帯域幅も拡大されます。ただし、要件の増大に伴い、データ通信の要件を満たすまったく新しいアーキテクチャが必要になります。そのため、自動車業界では OPEN Alliance 仕様に基づく 100BASE-T1 物理層通信プロトコルを使って、産業車両の通信ネットワークの過酷な要件に対応する、新たな Ethernet 基準を開発しています。
Ethernet は、自動車通信ネットワークに強力な価値提案を生み出します。乗用車の自動運転に対応する Ethernet プロトコルの技術的研究により、商用車市場がこの新しいトレンドに取り組むための道は既に生み出されています。
Ethernet は CAN に比べるとかなり高速です。 CAN ではわずか 500 kB、CAN-FD でも 1 MB/s のデータ伝送速度に比べ、100 BASE-T1 および 1000 BASE-T1 Ethernet プロトコルは、UTP (非シールド ツイスト ペア) ケーブル経由で 1 GB/s の高速データ伝送を実現します。Ethernet は、高速を実現すると同時に、ネットワークで対応できる装置の数を著しく増加させます。
単に電気的観点から見た場合、乗用車向け Ethernet と産業車両および商用車向け Ethernet の間に大きな差はありません。しかし用途に関しては、商用車のより過酷な環境において Ethernet が満たすべき重要な性能ニーズが 2 つあります。
機械的復元力と激しい振動には、より大型の構成部品とピンが必要とされます。構成部品が大型になればなるほど、より多くの機能を搭載して、過酷な環境において確かな信頼性を確保することができます。大型の構成部品には、高度な保守性も要求されます。商用車のサービス担当者は、小型の壊れやすい部品を取り扱いたいとは思いません。これらの要件は、高速性能がますます高まる中で、「小型化」と「より多くの装置の統合」のニーズと相反して存在しています。
TE の Ethernet ソリューション
腐食、温度、ほこり、振動に対する優れた耐性と高速性能を保証するため、当社では産業用車両や商用車向けのまったく新しい高度データ コネクティビティ システムの開発を続けています。 この用途を目的として、当社では、車載プロトコルと自動運転の要件における長年の経験を活かし、帯域幅の拡大と高速化に対応する Ethernet プロトコルのニーズを満たす新製品を開発しました。それと同時に、厳しい動作環境において長距離かつ長期間にわたり故障なく動作しなければならないという産業車両特有の過酷な環境において、高いレベルの信頼性を維持することにも努めています。万が一故障した場合でも、すばやく簡単に使えるサービス プロトコルが定められています。当社は、商用車産業におけるコネクタ製品群の重要性を高め、Ethernet プロトコルを支援する広範な製品を提供しています。
防水型 MCON Ethernet コネクタ
当社の Ethernet コネクタの新しい製品ラインナップは、堅牢な全二重電線対電線接続を提供し、多機能ディスプレイ、テレマティックス、テレメトリ ユニット、インフォテインメント モジュール、メディア アクセス コントローラなどの用途に適しています。また、ヘビーデューティー環境における動作とフィールド メンテナンスに対応する堅牢性と防水性も備えています。端子保持を確保する二次ロック機能を備え、複数のパネル厚によりモジュール用途に対応します。
MATEnet インサート付きヘビーデューティー防水型コネクタ シリーズ
過酷な環境下での使用に耐える堅牢な熱可塑性樹脂コネクタは、IEEE 100BASE-T1 および 1000BASE-T1 規格に適合する 1 GB/s 以上の車載 Ethernet 用途向け MATEnet 相互接続システムと組み合わせることができます。最新の E/E アーキテクチャで求められる MATEnet 相互接続システムは、今日の車載コネクティビティの要件に対応する設計で、既に未来の成長に向けた基盤となっています。MATEnet は、IEEE 車載 Ethernet ネットワーク用に特別に開発されたもので、非シールド ケーブル システムの基準とされています。自動車グレード、小型化、堅牢性と実績ある相互接続技術に裏付けられ、厳しい試験と検証に合格しています。MATEnet インサート付きヘビーデューティー防水型コネクタ シリーズは、電線対電線および電線対デバイス用途に使用できます。優れた柔軟性を備え、非シールドまたはシールド ツイスト ペアを使用することにより、複数のハイブリッド インタフェースと拡張性を実装できます。
当社のコネクテッド カー向けソリューションの詳細を知る
コネクテッド カー
過酷な環境の要件
高速なデータ伝送を可能にするためには、車両設計の初期段階で、コンポーネント、コンポーネントの配置、環境条件による影響について検討する必要があります。その理由をご覧ください。
データ接続
ヘビーデューティー車両向けソリューション
産業車両と商用車および機械業界では、将来の顧客ニーズに対応するために、Ethernet システムを取り入れた設計を検討する必要があります。その理由をご覧ください。
Ethernet 接続
ヘビーデューティー車両の要件
TE のヘビーデューティー車両用 Ethernet コネクタの設計においてどのような点が考慮されているかをご覧ください。
『Markt & Technik』掲載記事より