TE コネクタは風力タービンを最適化します。

ホワイト ペーパー

信頼できる風力をもたらすコネクティビティ

構造が複雑な風力タービンでは、さまざまな機能領域に対応できるケーブル ソリューションが不可欠です。- Eric F. Freid、インダストリー セールス マネージャ、オートメーションおよびコントロール

安価な環境保護エネルギーを提供する主流技術として、風力が充分な能力を発揮するようになっています。そうした状況のなかで製造業者や据付業者、そしてオペレータは、風力の効率性を高めながら据付コストと運用コストを抑えようとしています。迅速な据え付け、高い信頼性、容易なメンテナンスはすべて、風力の経済性における重要なポイントです。タービンをすばやく接続できること、中断することなく確実に稼働し続けることが、最重要課題となるからです。

風力産業の成熟に伴い、標準化も始まっています。標準化団体は、風力タービンに関する基準の開発に乗り出しています。現在ではこれまでと同様に、インダストリアル イーサネットなどの既存の利用可能な技術や、産業用モジュール コネクタなどの広く実証済みのアプローチを活用して設計するという動きがさらに広がっています。

プラグ アンド プレイでコストを低減し、可用性を向上

構造が複雑な風力タービンでは、さまざまな機能領域に対応できる広範なケーブル ソリューションが不可欠です。これらのソリューションには、発生したエネルギーをグリッドに供給する高電圧ケーブル、監視および SCADA (Supervisory Control and Data Acquisition) 用の光ファイバとイーサネット ケーブル、ヨーイングとピッチングのための制御ケーブル、モータとドライブ用の電源ケーブなどがあります。タービン システムの据え付けとメンテナンスを迅速かつ簡潔にするため、設計者はさらに「プラグ アンド プレイ」ソリューションに目を向けています。彼らの目的は、ケーブル ソリューションの中に「プラグ アンド プレイ」の利便性を取り入れて、風力システムの据え付けとメンテナンス全体をスピードアップすることです。 

代表的な要件:

風力タービンで使用するコネクタ

広範な温度範囲に対応: -40°C ~ +125 °C)
耐振動性と耐衝撃性
シールドまたは非シールド
流体抵抗
対応シーリング最大 IP67
キーイング機能
ポジティブ シーティングによる高速接続/接続解除
モジュール性: 必要に応じて信号、電力、光ファイバを収容可能

マルチ コネクタ用シングル インタフェース

風力タービン内のケーブル ソリューション全体をできるだけシンプルにしたいと考える製造業者は、すでに定評のある産業用コネクタ技術に注目し始めています。そうしたコネクタ技術では、頑丈な金属または複合材ハウジングの堅牢な機械的構成、採用されている端子やケーブルの種類に柔軟に対応するモジュラー方式のインサート、必要に応じてシールドやシールを提供する能力という 3 つの特徴がすべて採用されています。

モータとドライブ用モータ サプライ ケーブル、制御用ツイストペア ケーブル、監視用計器ケーブルなどのケーブルを取り混ぜて使用できるので、複数のコネクタを単一のインタフェースに置き換えることができます。

次の画像は、堅牢な産業用強度を備えたコネクタを代表する、TE のヘビー デューティー モジュール コネクタです。1 つのフレームで最大 6 つのシングル モジュールまたは 3 つのダブル モジュールを使うことができます。単一のコネクタ内のアプリケーションに必要なインタフェースだけを構成できるため、多くの風力用途で必要となるインタフェースの数が、従来よりも少なくて済むようになります。

産業用モジュール コネクタ
産業用モジュール コネクタにより、信号、電力、光ファイバ通信用のケーブルを柔軟に組み合わせることができます。

インタフェース モジュール

  • 高電圧端子、最大 3000 V 公称
  • 高電流端子、最大 700 A
  • 高密度信号端子、単一モジュールで最大 25 端子
  • 同軸端子
  • RJ-45 モジュラー プラグ
  • USB
  • IEEE 1394 (FireWire)
  • Quadrax 端子、1 GHz 動作に対応
  • サブミニチュア D インタフェース

グリッドに対する可用性

産業用コネクタにモジュール コネクタを採用すると、インタフェースとケーブル アセンブリ構成に大きな柔軟性が生まれます。インサートの配置を工夫し、嵌合キーを活用することによって、個々の用途に応じてケーブル アセンブリをカスタマイズできます。ヨー モータ制御に接続するコネクタが、ピッチ モータ制御に接続するコネクタと同一ではないため、誤って別のサブシステムにケーブルを接続することがありません。

識別が容易になるように、ハウジングを色分けすることもできます。機能別、回路別、その他の用途のパラメータ別にコネクタを色分けすると、一目で識別できるようになり、ほぼ見誤ることがありません。たとえば、パソコンやオーディオ/ビジュアル システムでは、かなり以前からマウス、キーボード、ビデオ ポート、オーディオ ポートの識別に色分けが活用されていました。風力用途にカラー符号を取り入れると、据え付けの際に色分けと同じ効果が得られ、グリッドが利用できるようになるまでの時間が短縮されます。

産業用モジュール コネクタは、標準化された単一のコネクタ ファミリによる幅広いニーズへの対応を実現し、その結果、サプライ チェーンの合理化というメリットももたらします。それぞれのケーブル用途に応じて異なる構造のコネクタが使われますが、一部のモジュールを複数の用途で共有できます。これにより、在庫として保管すべき部品の数が減り、ケーブル アセンブリを行うために習得しなければならない数々の手順を一本化できます。1 つのモジュール コネクタ ファミリに膨大な組み合わせの可能性があります。特定の用途に応じた部品構成については、モジュール コネクタのサプライヤにご相談いただけば、必ず対応します。その他にも、最終アセンブリの時点でそれぞれのソースに適合する嵌合コネクタがあるので、サブシステムの複数ソースを特定することができるというメリットもあります。

モジュール性のメリット

モジュール性のメリットはタワーでも活かされています。現在多くの製造業者が、タワー工場か現場で垂直各部の配線を行っています。プラグ アンド プレイ ソリューションを採用すると、各セクションの突起部が所定の場所に収まるので、セクションを別のセクションに差し込むだけでケーブルを簡単に接続できます。現場で機械的なボルト タイプのコネクタを使い、いくつもの手順を経て組み立てるといった手間のかかる作業がなくなります。

モジュール性のメリットの最新の例では、ハブとナセル間のデータ通信と電力送信に使われるスリップ リングのアセンブリがあります。従来は、リングの修理や交換を行うとなると、ケーブル アセンブリの取り外しに相当な時間のかかる設計になっていました。こうした作業の間、何日間もダウンタイムが発生することさえありました。しかし、スリップ リングのアセンブリにモジュラー設計を採用すれば、ケーブルを短時間で取り外して、スリップ リングをすぐに取り出せます。何日もかかったスリップ リングの交換がわずか数時間の作業に変わります。 

IP67 インダストリアル イーサネット コネクタ
図 A: 過酷な環境に耐える IP67 インダストリアル イーサネット コネクタ。
Motorman ハイブリッド コネクタ
図 B: 同一のアセンブリに電力と信号が組み込まれたハイブリッド コネクタ。

タービン内の電圧は 600-V レベルと低いため、さまざまな業界標準の技術を利用することができます。複数のケーブル (8 ~ 10 本) がこの低電圧を発電所底部のステップアップ トランスに送ります。そこから先は、インダストリアルや通信産業用のコネクタではなく、エネルギー産業のコネクタが通常使われます。スプライスの圧縮やネジ結線もよく見られます。ここで重視すべきことは、アース・サージ保護・アーク放電の必要があり、さらに中電圧の供給をその信号や低電圧の供給と分ける場合と同様の状況が必要となる点です。

電力供給接続の大半が、インライン スプライスまたはタッピング目的の T 型接続 (図 C) です。コレクタ ネットワークは地下にあるため、信頼性が最優先されます。ナセルとは異なり、機械部品が摩耗を免れない高度なエレクトロニクスであるコレクタ ネットワークでは、タービンのようなすばやい簡単なメンテナンスは必要ありません。正しく取り付けられたコレクタ ネットワークは、長期にわたって正常に機能します。コレクタ ネットワークの故障は、多くのジェネレータをオフラインにします。同様に、コレクタ ネットワークと変電所間のホームラン フィードが故障すれば、ウィンド ファーム全体に混乱を招く可能性があります。

T コネクタ
図 C: T コネクタで電力をコレクタ グリッドに接続。
コントロール センタ
図 D: コントロール センタは、標準構造配線技術を使ってウィンド ファームをネットワークで結び、アップストリーム通信を行う。

コントロール センタのネットワーキング

グリッドと連動して、インターネット上でアップストリーム通信を行うために、タービンのコントロール センタには、さまざまなタービン用の通信ケーブル、監視ケーブル、制御ケーブルが集結します。個々のタービンを統合ネットワークに取り込むことで、他のネットワークと同じようなコネクタとケーブル配線を選択できるようになります。構造配線システムにより、ネットワーク上で、ネットワーク スイッチ・ルータ・制御システムのコンピュータを接続するインフラストラクチャの移動・追加・変更を巧みに管理して、対応できるようになります。ラックマウント パッチ パネルとファイバ エンクロージャにより、機能別、回路別にケーブルをまとめて相互接続する手段が提供されます。

当然ここでは、コネクタとケーブルが、ネットワークのスピードに匹敵する性能を持つことが重要になります。データ速度 1 Gb/s までのインダストリアル イーサネットを使用するタイプは、カテゴリ 5e のツイスト ペアが一般的であり、それより大きいデータ速度を使用する場合は、10 Gb/s ネットワークに対応できるカテゴリ 6 とカテゴリ 6A が適しています。カテゴリ 6 のケーブルは、信号の安全性を維持するための緩衝となる、高性能のヘッドルームを提供します。コントロール センタは管理された環境下にあるので、シーリングや温度範囲の広さは懸念の対象ではありません。標準構造配線部品は通常、正しく機能します。 

風力タービンには、迅速かつ信頼性の高いコネクティビティが必要です。
風力タービンは、機械部品、モータおよびドライブ、コントローラ、センサによる複合アセンブリであり、これらすべてを接続して信頼性の高い電力を安定的に生み出します。

コネクタ選択の鍵となる風力の「稼働率」

コネクタの選択はコストの問題ではありません。風力タービンの稼働時間と操業中の稼働率にかかわる問題です。風力タービンの製造元は今や、構成部品の取得コストの先にあるライフサイクル費用に注目しています。たとえば、ケーブル アセンブリが適切に構成されていれば、風力タービンの設置にかかる時間を大幅に削減できます。修理およびメンテナンスも迅速化できます。風力タービンが停止状態になるコストと比較すれば、コネクタまたはケーブル ソリューションのコストは問題ではありません。