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ホワイト ペーパー

極めて高い信頼性

極端な温度下でも機能するトランスミッタ作りは、最も過酷な環境にも耐える設計のセンサの開発から始まります。

動作環境は、圧力トランスミッタの動作状況や精度に大きく影響します。 たとえば亜北極地帯であれば現地の環境条件や液体の凍結などに対応できなければ、圧力トランスミッタは早々に故障してしまい、機器に壊滅的な打撃を与えかねません。圧力トランスミッタの仕様書を見れば確かに、大気条件におけるセンサ性能についての情報や、所定の温度範囲で想定される読取値、また多様な条件下での圧力トランスミッタの動作を伝えるさまざまな用語や略語が記載されてはいますが、トランスミッタの構造をより深く理解できれば、極端な環境、特に低温条件におけるセンサの動作を見極める上で、大いに役立つでしょう。

AST46DS 防爆圧力トランスミッタ
AST5300 シリーズ差動圧力トランスデューサ

圧力トランスミッタは通常、ダイアフラムに取り付けられた何らかのひずみゲージを用いて圧力を測定しています。 ゲージは、接着剤・薄膜積層・油へのカプセル化によって装着させたり、ガラス焼成プロセスを利用して取り付けたりすることができます。ダイアフラムがたわむことで、抵抗値が変化します。いずれの場合も、温度の影響によってこの出力信号の抵抗も変化するため、センサ誤差が発生します。

センサの耐久性を試すならば、寒冷地の天候条件が一番です。 温度が-20°C (-4°F) 未満になると、センサを封入した油のゲル化や硬化が生じることがあります。セラミック技術では、機械加工したポートとダイアフラムとの間の O リングが硬化して脆くなる可能性があります。その場合、センシング素子の完全性が損なわれ、漏出経路ができてしまいます。センサの値が動作温度範囲の下限を超えないようにするには、設置場所と環境を変えることが必須条件となります。加熱式のボックスや加熱室は、センサの保護のためだけでなく、センサ設置位置の温度が凍結温度に到達することを防止するためにも役立ちます。遠隔地では、太陽光から電力を得ている計器が電力を容易に利用できないこともあるため、センサを暖める機能に使える電力はわずかであるか、まったく使えない場合もあります。たとえば、アラスカ・アルバータ・ブリティッシュ コロンビア・サスカチュワン・ノースダコタなどの寒冷地で活躍する採掘設備は -50°C (-60°F) にも及ぶ温度にさらされますが、ここでは採掘口から延びる配管の外側にセンサが直接設置されて、液圧やケーシングおよびチューブにかかる圧力を監視しています。

寒冷な気候によって、プロセス媒体が凍結する場合があります。 天然ガス採掘用途においては、ガスの管路に水が入り込むケースがあります。システムの稼動を停止して凍結温度を下回ると、管路内にある水が凍結して膨張し、圧力センサに長時間過負荷をかけ続ける場合があります。膨張によって、時には 500 PSI (35 bar) から 1,000 PSI (70 bar) の突発的な圧力上昇を起こすこともあります。100 PSI システムの場合、圧力が最大 1,500 PSI (100 bar) まで上昇することも考えられます。多くのセンサ技術においては、低圧ダイアフラムにかかるこのひずみが、ひずみゲージ故障やダイアフラム破損の原因となります。センサを故障から保護するには、センサ精度に影響を及ぼすことのない形で、融解後も一定時間は、センシング素子によって圧力が上昇した状態を維持させる必要があります。キャビティ (空洞) 部分の媒体凍結よる故障からセンサを確実に保護するには、特殊なキャビティ形状および特殊な耐圧キャビティを採用し、校正を実行することが最善の方法となります。

圧力センサは、採掘作業において極めて重要な役割を果たしています。
圧力センサは、私たちが毎日利用するシステムや機械において極めて重要な役割を果たしています。

温度変化を電気的に補償するため、圧力トランスミッタ メーカでは圧力および温度の両方に関して試験を行って、温度による影響に合わせた調整を加えています。 センサもひずみゲージもそれぞれ独自の特性を持つため、センサ特有の特性についてはセンサごとに試験を行うことが最善の方法となります。従来からの方法では、まず抵抗器を用いて原出力信号をトリミングしたり減衰させたりすることで、試験温度範囲に合わせて性能の最適化を行います。次に、回路基板アセンブリを用いてセンサのミリボルト信号を増幅させ、必要となる出力信号が得られるよう調整します (例: 4 ~ 20 mA)。圧力トランスミッタには、ダイアフラム故障後に出力信号のドリフトが発生した場合に必要となる、ゼロ・スパン調整機能を備えているものもあります。デジタル電子部品の低価格化・小型化が進むにつれて、特定用途向け集積回路 (ASIC: Application-Specific Integrated Circuit) によるデジタル補償の利用も増加しています。低温環境で使用する場合、圧力センサの温度試験時に ASIC のプログラミングを行い、非線形性や理想的出力信号からの逸脱を修正するため設計上の変更が加えられます。ASIC の温度は、サーミスタなどの温度センサを利用してゲージにおいて、または ASIC 自体において補償できます。主な違いは媒体温度にあります。ASIC の温度にもとづいて補償を行う場合、媒体近くにあるため温度に関する読取値の精度は下がります。寒冷な気候においては、媒体が高温の液体やガスであっても、ASIC の読取値が外気温の方に近づく可能性があります。ゲージの温度を測定することによって、最速での応答および動的な補償にもとづいた性能の最適化が可能になります。

温度出力信号を独立させることができた点も、圧力トランスミッタの製造におけるもう 1 つの進化です。 現在では、システム インテグレータは 1 つの装置から媒体温度の変化を仔細に観察できるようになり、設置コストやセンサ追加にともなうコスト削減につながります。左下の写真は、機械加工により溶接部と内部の O リングをなくした、一体型のステンレス鋼製センシング素子です。溶接や接合部がない構造であるため、疲労値は広い動作温度範囲にわたって一様に低くなります。 ごく厚いダイアフラムと最新のシリコン製ひずみゲージから成るこれら防爆圧力トランスミッタは、右下の写真のように深い採掘現場の過酷な環境においても優れた再現性を提供します。接液部に合金 718・17-4 PH・合金 C-276・316 L SSを追加することによって、重油や高硫化物の処理における圧力トランスミッタの可能性はさらに広がります。

要約

システム全体の設計と同様、細部についても理解することで、より良い意思決定が可能になります。圧力トランスミッタは、外観やサイズがどれも同じように見えても、機械的・電気的な側面から見ると圧力の測定方式がそれぞれ大きく異なることがあります。使用する素材も違っているため、詳しい分析が必要になってきます。圧力トランスミッタ メーカと協力して、是非ともニーズに合わせた設計を見つけてください。