ホワイト ペーパー
高度な検知機能
動ひずみセンサとしてのピエゾ フィルム独自の特性により、皮膚に直接取り付けても、中間層を通して機械的に結合しても、ピエゾ フィルムはバイタル サインの検知に最適です。ポケットに入れて持ち歩くデバイスの中には、脈拍を検知できるほど感度の高いフィルム素子もあります。
圧電性の PVDF ポリマ フィルム (ピエゾ フィルム) のストリップが伸ばされると、伸長の度合に比例して、電極表面の上面と下面の間に電気信号 (電荷または電圧) が発生します。 圧電材料は通常、圧力に対して応答するものと考えられていますが、ピエゾ フィルムの場合、その素子の形状ゆえに、低荷重が縦方向に加えられた時にフィルムの断面は非常に高いストレスレベルに達します。同じレベルの荷重を広い表面積に加えると、はるかに低いストレスが生じることになります。ゆえに、ピエゾ フィルム、厚さ 28 μm の PVDFはマイクロひずみ (長さにおける 100 万分の 1 の変化) に対し、一般に10 ~15 mV という、動ひずみへの驚異的な感度を示すことができます。この「動」ひずみでは、ひずみの変化によって生成された電荷がフィルムに接続された電子回路の中に流れますが、静的なひずみは実に検知されません。これは、センサがさまざまなレベルの事前荷重で配置される場合の利点となります。わずか 0.1 Hz の周波数応答から、フィルムはひずみの中の時間依存的変化のみを感知します。ピエゾ フィルムは軽量、薄型で柔軟性に富んでおり、
機能するために外部電力は必要ありません。この特性の独自の組み合わせにより、非常に低いレベルの機械的信号を検知しなければならない幅広い医療用途に対応します。これは明らかに、利用できる電力が限られている場合、技術の重要なポイントとなります (構成によっては微量の電力を発生させることもできます)。また、きわめて耐久性が高く、何億回もの屈曲サイクルに耐え、耐衝撃性も備えています。
ピエゾ フィルムは軽量、薄型で柔軟性に富んでおり、機能するために外部電力は必要ありません。
皮膚との直接接触
「動ひずみゲージ」としてのピエゾ フィルムの特性を利用して、素子を簡単に皮膚 (手首の内側など) に直接結合させることができます。 TE では、片面に圧力感度接着面がある汎用目的のセンサを製造していますが、接着面は生体適合性が評価されていません。したがって、3M 9842 のパッチ (接着剤コーティングの小さなポリウレタン テープ) の短期臨床試験は皮膚で行われ、ピエゾ フィルム センサは皮膚の上に適用されました。図 1 は、1 Hz に制限された低周波と感度 1 mV/pC のチャージ型増幅器を使って計測したパルス信号を示しています。約 130 mV (ピーク間) の出力は 100 mV (ピーク間) 前後の開回路電圧に相当し、約 8 με の動ひずみに換算することができます。この信号は、手が休んでいる間に記録されています。手首を曲げたり回したりすると、特にプリアンプでより低い周波制限が選択された場合には、より高振幅の信号が生成されます。例として、グリップ アンド リリースを繰り返している間のセンサの応答を図 2 に示します。3V 前後の開回路または 250 με 前後の振幅が表示されています。
この微小の物理的信号だけでなく全身運動も検知するフィルムの能力は、PVDF フィルムのピエゾ応答の非常に広いダイナミック レンジにまたがる線形に表れています (推定で最大 14 桁)。 多くの場合、目標信号の帯域幅と「ノイズ」が分離されていれば、小さい信号はフィルタリングによって取り出すことができます。睡眠障害のスタディでは、胸、脚、まぶたの筋肉と皮膚の動きを検知するために、類似する自己接着型センサが使われています。また、麻酔効果の指標として、意図的な電気的刺激に対する筋肉の反応 (親指と人差し指の間など) を検知することもできます (神経筋伝達とも呼ばれます)。
加速度センサ
MiniSense 100 は、クランプを形成している硬質の PCB 材料を使った、質量荷重されたカンチレバー設計を取り入れた規格部品で、接続ピンの取り付けが可能です。 付加された質量により、加速度の影響の下でセンサは慣性的に応答します。質量が静止するとフィルム素子が湾曲して、きわめて高い電圧感度 (約 1 V/g) を生じます。患者や医療従事者が RF 遠隔計測装置に搭載された「スマート バッジ」を実装すると、この部品の変異によってバイタル サインが検知され、追跡や所在地を目的とした周期信号が伝送されます。スマート バッジが人体から取り外されたことをセンサが検知すると、スマート バッジはスリープ モードになりますが、筋肉の震えや全身的な動き、脈による振動によってすぐに起動します。軽量のエラスティック ストラップ を使って標準センサを胸に押し付けている場合は、心音の詳細が明らかになります。電子インタフェースで非常に低周波の限界を選択すれば、呼吸数を見ることもできます (図 3)。この波形では、胸壁の動きが約 4 秒間隔のゆっくりとした周期信号で表示されています。個別の心拍は 1/秒 (60 bpm) 前後です。呼吸信号を排除してノイズを取り除くには、1 Hz (低) と 10 Hz (高) でフィルタを適用して、リアルタイムの信号を獲得します (図 4)。図 4 の波形のトレースは、すべて休息時の患者を測定したものです。増幅器を使用する場合、身体の動きは心拍からの信号が中心になります。実際に、カンチレバー ビーム増幅器センサのような小型の実装は (センサ実寸 1.3 x 3.0 mm)、
ペースメーカの中で患者の身体活動のレベルを検知するために使用されており、ペーシング レートは身体活動に合わせて調整できます。
用途
その堅牢性、高感度、広帯域幅によって、ピエゾ フィルムをアクティブなセンシング素子として使用している電子聴診器もあります。 この場合、センシング素子は身体に対するいわゆる「反力」で保持されなければなりません。通常これには、皮膚に直接当てるアコースティック聴診器用の従来のラッパ状収音設計が使われています。動的な圧力信号が電子信号に変換されると、フィルタリングまたは増幅を選択することによって、情報内容を強化することができます。また、オーディオ信号としての再生、より複雑なアルゴリズムの分析による特定の状況検知、今後の分析と情報保管のためにデータ リンクでリモート ベース ステーショへの転送なども可能です。小型のアコースティック センサを使用することは、1 か所以上を同時にモニタできるということです。
小型のアコースティック センサ使用することは、1 か所以上を同時にモニタできるということです。
ピエゾ フィルムとピエゾ ケーブルのどちらも、身体との直接接触から離れたところでマットレスの一部として使われ、心拍、呼吸、動作を検知しています。 マットレスのベッドカバーの中にはさまざまなセンサを組み込むことができます。これらの情報収集装置は、患者の臥位や座位の情報を受動的に測定して、衣服やパジャマ、シーツの上からでも正確な情報を提供します。ピエゾ フィルム素子は患者の動的バイタル サインをすべて対応する電気信号に変換する一方で、柔軟な切り替えによって静的な「存在」が検知されます。この電気信号は、アラーム ロジック設計の臨床ユニットに表示することができます。このシステムにより、患者と直接接触することなく、心拍や呼吸数の異常、許可されていない離床などが早い段階で警告されます。
まとめ
以上の説明からお分かりいただけるように、ピエゾ フィルムは、重要なデータを患者モニタ システムに転送するための、従来の電子部品に代わる優れたソリューションです。さまざまな利点から、今後この技術がより多くの救命医療機器に取り入れられていくと考えられます。