ホワイト ペーパー
カーボン ナノチューブ技術が電線革命を導くであろうと思われます
CNT を繊維やテープの形状で扱うには、ケーブル製造工程で処理量の最適化と製造歩留まり向上の改善が必要となります。
配線変革
カーボン ナノチューブ技術 (CNT) は、半導体から医療産業まで幅広い分野で関心を持たれており、TE Connectivity (TE) が重点を置いて研究している分野の 1 つが高性能電気ケーブルです。TE は大学や業界をリードする企業と共に、電線での使用を目指した CNT 開発を積極的に行っており、評価用の試作品サンプルを作り出しています。CNT ケーブルが主流となるまでにはまだ多くの進歩が必要ですが、当社はこの技術が十分に促進されており、衛星などの特定用途に適合するものと確信しています。
CNT コンポーネントを使用したケーブル は、第一に既存材料と比較した重量軽減の点から、これまでの常識を覆す技術です。具体的には、人工衛星から UAV や有人ミリタリ航空機に及ぶプラットフォームで数十ポンドから数百ポンドの軽量化となります。例:
- 衛星: 衛星を軌道上に投入するための打ち上げコストは、1 ポンドの重量負荷あたり US $ 5,000 ~ $ 50,000 になります。重量軽減はコストに大きく影響し、軽減分を他の分析器や工学機器の追加、または衛星の寿命を長らえる追加燃料搭載も可能になります。
- 無人飛行機: 軽量化によって飛行時間を長くすることができます。大型の UAV にはおよそ 850 ポンドものケーブルが搭載されています。銅編組シールド の代わりに CNT シールドを使用することで、300 ポンドの軽量化が可能です。全体を CNT としたケーブルを使用することでさらに 100 ポンド軽量化でき、全重量を 850 ポンドから 450 ポンドに削減できます。
- 有人航空機: 軽量化は燃料消費効率の大幅な向上や、搭載負荷の増加または航続距離の拡大につながります。
CNT ケーブルの利点は航空宇宙産業以外の用途にも及びます。軽量化は地上車両でも重要であり、また兵士装着機器においても同様です。
単一層のカーボン ナノチューブは、直径が数ナノメートルに過ぎませんが、長さは数ミリメートルに及びます。この長い縦横比により、ナノスケールで注目すべき特性が得られます。それらの特性は、鉄より高い引張強度、銅よりも高い伝導率、ダイアモンドよりも大きい熱散逸性、腐食や疲労に対する高い耐性などです。単一層カーボン ナノチューブの主な特性を以下の表に示します。
機械的強度 | CNT | 鉄鋼 | アルミニウム |
---|---|---|---|
ヤング率 (TPa) | 0.8 ~ 1.4 | 0.3 | 0.7 |
引張強度 (GPa) | 63 | 2 | 0.3 |
比重 (g/cm3) | 1.4 | 8 | 2.7 |
CNT シールド
CNT は熱処理で成長し、導体の場合は繊維状、シールドの場合はテープ、シート、繊維状にそれぞれ仕上げられます。
CNT を束ねて繊維状やシート形状にして実用的なサイズにすることで、材料の特性が変わってきます。単一層のカーボン ナノチューブは銅よりも 30% 高い伝導率ですが、CNT 繊維を網状に構成したものは、伝導率が銅よりも数桁低くなります。CNT 繊維における 2007 年以降の伝導率改善動向を以下の図に示します。
CNT ケーブルは、MIL-STD-1553B & IEEE 1394 規格製品として航空宇宙および衛星用途向けに活発に開発されており、今後数年間のうちに試作段階から量産段階に進むと考えられています。初期の IEEE 1394 規格 ケーブル では CNT が シールドのみに使用される見通しですが、MIL-STD-1553B 規格ではすべて CNT で構成されたケーブルになる見込みです。
CNT を使用したシールドでは、高いシールド効果と大幅な重量軽減を兼ね合わせた特性が可能となります。CNT テープ 2 重巻きシールドでは、高周波帯域において銅編組とほぼ同等のシールド効果(約 50 dB at 4 GHz)を得ることができ、CNT テープ重量は銅編組の 2% 以下にすぎません。
ただし、CNT シールドは 100 MHz 以下の周波数帯域ではシールド効果が悪く、かつ落雷に対する保護には無力となります。航空宇宙用途では二重銅編組シールド ケーブルが多く使用されているので、二重の内の一重銅編組を CNT に置き換えることで、低周波ノイズと落雷保護を銅編組シールドで処理し、高周波ノイズを CNT シールドで処理することができます。この複合シールド構造では、重量を 25 ~ 30% 削減できます。
最高のときに向けた準備
ケーブルで CNT 材料を実用化する試みが進展するにつれて、2 つの別の問題が浮かび上がっています。その 1 つは CNT ケーブルの接続方法です。CNT 導体は既存のコンタクトに接続可能であり、圧着工具の設定とダイ工具の変更が必要にはなるものの、一般的な圧着技術で接続できます。CNT とコンタクトの圧着接続強度テストにおいては、コンタクトとの接続部が破断する前に、CNT 繊維が先に破断することが示されています。シールドは金属製バンドや他の圧着法でバックシェルに接続できます。特殊合金を使用することで、テープと繊維をはんだ付けすることもできます。
2 つめの問題は、試作段階から量産段階への移行です。糸状繊維、シート形状、およびテープ形状の CNT は実務レベルの数量で入手可能ですが、ケーブルに必要な長尺部品の大量生産には課題が残っています。CNT 製造会社の生産能力は急速に増大していますが、現在の購入には長い時間が必要となっています。半導体や複合材エンクロージャ など現在の多くの用途では、ミクロン単位やミリメートル単位長の CNT が使用されています。 ケーブルの場合はこれらの用途とはまったく異なり、数十メートル単位の長さを必要とします。
TE では、企業や大学のパートナーと協力して、微小 CNT 配列による伝導性の改善に取組んでおり、すでに数マイル長の CNT を製造し、電線としてのテストおよび評価を行っています。
TE は、年間数百マイルの電線を生産できる CNT の試験工場を建設済みです。CNT を繊維やテープの形状で扱うには、ケーブル製造工程で処理量の最適化と製造歩留まり向上の改善が必要となります。 TE ではその改良方法を開発し、多様な長尺のワイヤ / ケーブルを供給することができます。
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カーボン ナノチューブ技術が電線革命を導くであろうと思われます
CNT を繊維やテープの形状で扱うには、ケーブル製造工程で処理量の最適化と製造歩留まり向上の改善が必要となります。
配線変革
カーボン ナノチューブ技術 (CNT) は、半導体から医療産業まで幅広い分野で関心を持たれており、TE Connectivity (TE) が重点を置いて研究している分野の 1 つが高性能電気ケーブルです。TE は大学や業界をリードする企業と共に、電線での使用を目指した CNT 開発を積極的に行っており、評価用の試作品サンプルを作り出しています。CNT ケーブルが主流となるまでにはまだ多くの進歩が必要ですが、当社はこの技術が十分に促進されており、衛星などの特定用途に適合するものと確信しています。
CNT コンポーネントを使用したケーブル は、第一に既存材料と比較した重量軽減の点から、これまでの常識を覆す技術です。具体的には、人工衛星から UAV や有人ミリタリ航空機に及ぶプラットフォームで数十ポンドから数百ポンドの軽量化となります。例:
- 衛星: 衛星を軌道上に投入するための打ち上げコストは、1 ポンドの重量負荷あたり US $ 5,000 ~ $ 50,000 になります。重量軽減はコストに大きく影響し、軽減分を他の分析器や工学機器の追加、または衛星の寿命を長らえる追加燃料搭載も可能になります。
- 無人飛行機: 軽量化によって飛行時間を長くすることができます。大型の UAV にはおよそ 850 ポンドものケーブルが搭載されています。銅編組シールド の代わりに CNT シールドを使用することで、300 ポンドの軽量化が可能です。全体を CNT としたケーブルを使用することでさらに 100 ポンド軽量化でき、全重量を 850 ポンドから 450 ポンドに削減できます。
- 有人航空機: 軽量化は燃料消費効率の大幅な向上や、搭載負荷の増加または航続距離の拡大につながります。
CNT ケーブルの利点は航空宇宙産業以外の用途にも及びます。軽量化は地上車両でも重要であり、また兵士装着機器においても同様です。
単一層のカーボン ナノチューブは、直径が数ナノメートルに過ぎませんが、長さは数ミリメートルに及びます。この長い縦横比により、ナノスケールで注目すべき特性が得られます。それらの特性は、鉄より高い引張強度、銅よりも高い伝導率、ダイアモンドよりも大きい熱散逸性、腐食や疲労に対する高い耐性などです。単一層カーボン ナノチューブの主な特性を以下の表に示します。
機械的強度 | CNT | 鉄鋼 | アルミニウム |
---|---|---|---|
ヤング率 (TPa) | 0.8 ~ 1.4 | 0.3 | 0.7 |
引張強度 (GPa) | 63 | 2 | 0.3 |
比重 (g/cm3) | 1.4 | 8 | 2.7 |
CNT シールド
CNT は熱処理で成長し、導体の場合は繊維状、シールドの場合はテープ、シート、繊維状にそれぞれ仕上げられます。
CNT を束ねて繊維状やシート形状にして実用的なサイズにすることで、材料の特性が変わってきます。単一層のカーボン ナノチューブは銅よりも 30% 高い伝導率ですが、CNT 繊維を網状に構成したものは、伝導率が銅よりも数桁低くなります。CNT 繊維における 2007 年以降の伝導率改善動向を以下の図に示します。
CNT ケーブルは、MIL-STD-1553B & IEEE 1394 規格製品として航空宇宙および衛星用途向けに活発に開発されており、今後数年間のうちに試作段階から量産段階に進むと考えられています。初期の IEEE 1394 規格 ケーブル では CNT が シールドのみに使用される見通しですが、MIL-STD-1553B 規格ではすべて CNT で構成されたケーブルになる見込みです。
CNT を使用したシールドでは、高いシールド効果と大幅な重量軽減を兼ね合わせた特性が可能となります。CNT テープ 2 重巻きシールドでは、高周波帯域において銅編組とほぼ同等のシールド効果(約 50 dB at 4 GHz)を得ることができ、CNT テープ重量は銅編組の 2% 以下にすぎません。
ただし、CNT シールドは 100 MHz 以下の周波数帯域ではシールド効果が悪く、かつ落雷に対する保護には無力となります。航空宇宙用途では二重銅編組シールド ケーブルが多く使用されているので、二重の内の一重銅編組を CNT に置き換えることで、低周波ノイズと落雷保護を銅編組シールドで処理し、高周波ノイズを CNT シールドで処理することができます。この複合シールド構造では、重量を 25 ~ 30% 削減できます。
最高のときに向けた準備
ケーブルで CNT 材料を実用化する試みが進展するにつれて、2 つの別の問題が浮かび上がっています。その 1 つは CNT ケーブルの接続方法です。CNT 導体は既存のコンタクトに接続可能であり、圧着工具の設定とダイ工具の変更が必要にはなるものの、一般的な圧着技術で接続できます。CNT とコンタクトの圧着接続強度テストにおいては、コンタクトとの接続部が破断する前に、CNT 繊維が先に破断することが示されています。シールドは金属製バンドや他の圧着法でバックシェルに接続できます。特殊合金を使用することで、テープと繊維をはんだ付けすることもできます。
2 つめの問題は、試作段階から量産段階への移行です。糸状繊維、シート形状、およびテープ形状の CNT は実務レベルの数量で入手可能ですが、ケーブルに必要な長尺部品の大量生産には課題が残っています。CNT 製造会社の生産能力は急速に増大していますが、現在の購入には長い時間が必要となっています。半導体や複合材エンクロージャ など現在の多くの用途では、ミクロン単位やミリメートル単位長の CNT が使用されています。 ケーブルの場合はこれらの用途とはまったく異なり、数十メートル単位の長さを必要とします。
TE では、企業や大学のパートナーと協力して、微小 CNT 配列による伝導性の改善に取組んでおり、すでに数マイル長の CNT を製造し、電線としてのテストおよび評価を行っています。
TE は、年間数百マイルの電線を生産できる CNT の試験工場を建設済みです。CNT を繊維やテープの形状で扱うには、ケーブル製造工程で処理量の最適化と製造歩留まり向上の改善が必要となります。 TE ではその改良方法を開発し、多様な長尺のワイヤ / ケーブルを供給することができます。