製品
ストーリー
夕陽を浴びる掘削車

用途

油圧システムと回路の性能に対する期待 (英語)

過去 20 年間において油圧業界は、電子機器の進歩、IoT (モノのインターネット) の広い普及、技術コスト削減、およびコンポーネントの小型化から恩恵を受けてきました。 さらに油圧業界では、従来の圧力スイッチから圧力センサおよび圧力トランスデューサに移行する過程において課題が増加しています。このような課題には、圧力の増加、動作温度の上昇、危険で過酷な環境での使用、ならびに圧力過渡現象などが含まれます。これらは設計者とシステム インテグレータにとっては難問であり、適切に解決しなければ、プロジェクトの遅延や現場での信頼性の問題につながることがあります。これらの圧力測定デバイスも、センシング素子や全体的な機械的パッケージから電子出力信号や信号調整まで、進化を遂げています。この文書では、圧力センサおよびトランスデューサを支える技術、これらのセンサが抱える一般的な機械的課題、さらにはこのような困難な環境において TE Connectivity (TE) の M9100 圧力トランスデューサが動作する仕組みを詳しく見ていきます。

センシング技術

センサの中身

外側からは、圧力トランスデューサは相対的にすべて同様に見えますが、非常に重要なセンシング素子はセンサの製造元により大きく異なります。最も一般的な、経済的にも技術的にも実現可能な手法の 1 つが、ひずみゲージをセンシング素子として使用し、圧力がダイヤフラムに及ぼす機械的ひずみを、正確で再現性の高い電気出力信号に変換するというものです。TE では、自社の Microfused ひずみゲージ技術をホイートストンブリッジ構成で使用することで、ひずみを電圧出力信号に変換しています。TE ではこのセンシング素子を、ねじ式ポートによる組み込みが可能な、単一の精密加工コンポーネントとして設計しました。この最適な設計により、センシング素子からの信号が非常に安定し、過圧および破損性能の水準もきわめて高くなりました。

TE では、ガラス接着プロセスを利用して、シリコンひずみゲージを金属ポートに融着しています。これらのゲージは、ひずみを圧力の変化として正しく測定できるように、最適な位置に配置されています。ゲージと信号調整電子部品とを接続する場合には、業界での実績があるワイヤボンディング プロセスが使用されています。薄膜積層、厚膜およびセラミックベースの技術などの、油圧センサ市場において競合する技術では、感度が低いセンシング素子を使用した個別のダイアフラムが利用されています。これらの技術では、液体の経路、内部の O リングに追加の溶接が必要となったり、サプライ チェーンのリード タイムがさらに長くなってしまう場合がある、追加の処理手順が要求されます。代替技術の場合でも、低い感度を補うために、センシング素子で高いひずみが要求されることがあります。このような高いひずみとともに、複数部品による構成は、長期的な安定性と耐久性を低下させる可能性があります。TE の Microfused ひずみゲージ技術は、数十年間にもわたって大量生産における実績があり、サプライ チェーンが崩壊するリスクを抑えるだけでなく、堅牢な単一部品による液体接続により、内部センサが故障したり、他の機械的課題が発生するリスクも抑えます。

オレンジのバー

機械的課題

圧力トランスデューサを油圧システムの一部として取り付けると、さまざまな機械的課題が設計において解決・認識されます。システム設計者が設計プロセスの一部として検討する必要がある、油圧システム内の典型的な分野には次のものがあります。

  • 動作圧力
  • 圧力スパイク
  • 保証耐圧力
  • 液体接続
  • 破損圧力
  • 振動/機械的衝撃
  • 圧力疲労
  • 耐環境性

これらの懸念は、いずれもセンサの設計と検証により解決します。過圧定格や破損定格の確認、疲労解析、および圧力スナバの使用は、いずれも TE の設計プロセスに組み込まれており、シミュレーションと経験に基づく試験により検証されています。

動作圧力範囲

簡単に定義すると、これはシステム制御またはフィードバックを必要とする圧力範囲です。通常の動作条件下では、システムは常にこの範囲内に維持されます。この範囲に含まれない圧力は、通常では測定が不要となります。

保証耐圧力

システム設計では、必要な測定範囲を超えているものの、システムに損傷をもたらす可能性が低い圧力イベントが頻繁に発生します。多くの場合、過圧イベントの後では、システムの機能が正常に戻るものと予測されています。TE では、保証耐圧力を、圧力トランスデューサの出力特性または確度に永久的な変化をもたらすことなく、センシング素子に加えることができる圧力と定義しています。

破損圧力

圧力格納の不具合が発生するリスクを伴う、過度な圧力をシステムにもたらすような故障モードがシステム レベルで発生することがあります。TE では、それらの圧力トランスデューサの設計と検証を、理論と経験の両方に基づいて行うことにより、センサが破裂することなく機能する最小圧力を指定しています。

圧力疲労

システムの圧力変動を連続的にもたらすポンプまたはバルブが存在するシステムでは、多くの場合圧力疲労が見られます。このような変動は、振幅と周期にばらつきがあります。ポンプは振幅がきわめて小さく、高い周期の圧力振動を発生させることがある一方で、バルブは周期が低いものの、大きな圧力変化をもたらすことがあります。特定の場合では、この逆となることもあります。システムで発生しうる挙動を毎回予測することは不可能であるため、TE の M9100 は、0 から 1,000 万までのフルスケールの圧力サイクルで試験が行われているだけでなく、応力が疲労限界を常に下回ることで、本質的には動作範囲内であれば永久に機能し、保証圧力範囲内であれば多くの場合寿命が数倍にも延びるように、理論的検証も行われています。TE のセンシング素子は、競合技術よりも大幅に感度が高いため、ストレス レベルが非常に低くなり、圧力疲労が懸念されなくなることには注目するべきでしょう。

圧力スパイク

油圧システムにおいて最も見落とされやすい課題は、一般的には「圧力スパイク」と呼ばれる (ウォーターハンマー効果と呼ばれることもあります)、非常に高い周期での圧力過渡現象の存在です。圧力スパイクは、バルブを動作させている間に発生することがあります。圧力スパイクは、システム構造上の問題、すなわち油圧ポンプに空気が混入することが原因で発生する圧力の波です。一般的に圧力スパイクは、圧力が非常に高い値 (動作圧力の 10 倍となることもあります) まで、急激 (通常ではミリ秒単位) に上昇することを特徴としています。圧力スパイクは、通常の圧力センサではイベントの発生を検出できないほどの速度で発生する場合があります。ただしこの現象は、圧力トランスデューサに永久的な損傷をもたらし、永久にゼロシフトになってしまうことがあります。このような損傷により、センサが圧力またはダイアフラムの破裂に応答しなくなり、液体がセンサのハウジング内に侵入します。圧力スパイクを正しく識別できる機器を、顧客がシステムに導入していないことはよくありますが、正しい技術を使用した圧力トランスデューサを選択することは役に立つでしょう。TE の堅牢な M9100 の設計とオプションのスナバにより、圧力スパイクに起因する故障モードの発生を抑えることができます。

圧力センサ油圧システム
液体接続

油圧回路への接続も、機械面で考慮するべき事項の 1 つです。世界各国で普及しているねじ込み接続オプションには、SAE (北米)、G シリーズ (EMEA)、および Metric (APAC) など、さまざまなものがあります。TE は、SAE J1926 または ISO 1179 などの歴史的な工業規格に関して長期にわたる実績があり、常に変化する要件に継続して対応してきました。どのねじ込み接続にも独自の定格が指定されており、油圧業界内で高圧がより一般的となるに従って、圧力トランスデューサの定格値指定、取り付け、およびトルク設定が正しく行われるように、さらに予防策が必要となりました。

振動/機械的衝撃

これまで機械的衝撃と振動は、センサ業界内では一対のものとして扱われてきました。圧力トランスデューサは、使用する用途に固有の機械的環境により、一般的にオンおよびオフロード用途の両方で使用されています。ディーゼル モータの高周波振動から、上限まで積載した荷を地面に落とすフォークリフトの衝撃まで、これらの条件では、「衝撃と振動」による副作用がトランスデューサに発生しないことが求められます。 

耐環境性

耐境面性は、製品が極端な環境に対応し、長期的に安定して動作できるようにするうえで、非常に重要です。圧力センサでは、耐用寿命全体にわたって適合性と信頼性が得られるように、機械的設計と材質の選択を検討するだけでなく、これらの環境条件がセンサの長期的な性能に及ぼす影響も考慮する必要があります。これで、圧力センサが抱える一般的な機械的課題の再確認が終わりました。重要な油圧機械の機械的課題を解決できるように設計された、TE の M9100 ヘビーデューティ圧力トランスデューサの頑丈な設計を見てみましょう。

オレンジのバー

堅牢な設計

M9100 圧力トランスデューサの堅牢な設計と信頼性の高い性能は、ヘビー デューティ用途における圧力センシングのニーズに応えます。TE の M9100 センサは、油圧耐久性に関して最上級の製品の 1 つです。M9100 は、最も頑丈さが求められる用途のニーズに対して十二分に対応できるように、単純さと耐久性に留意して設計されました。多くの場合、複数の回路基板、内部配線、および複数のはんだ付けによる相互接続が必要となる複雑な設計では、早期の故障と現場での信頼性問題がより発生しやすくなります。M9100 は、可能な限り多くの故障モードを排除することにより、簡単、コンパクト、かつ耐久性に優れた設計となっています。この圧力トランスデューサは、単一の PC 基板設計により、設置面積がコンパクトになっています。センサのはんだ付け接点はすべて、自動化されたピック アンド プレース機器とリフローはんだ付けにより、十分に制御されています。このセンサには、人間の手によるはんだ付け接点や、はんだ付けによる相互接続はなく、基板が重なっている部分もありません。

シングルピースの精密加工ステンレス鋼センシング ダイアフラム構造により、溶接や接着といった余分な組み立て手順が不要になりました。この構造により、ひずみの程度を低く抑えられるため、保証耐圧力、耐破損性、耐疲労性、および耐圧力スパイク性が非常に高くなり、その結果設計プロセスの段階でも現場での使用中においても、問題が発生するリスクが低くなりました。Microfused センサの設計は、他の技術よりもきわめて厚いダイアフラムを特長としています。これにより、センサが圧力スパイクによる損傷を受けにくくなり、このような圧力イベントの発生が完全に防止されます。また TE の M9100 には、さらに圧力スパイクの速度と振幅を軽減できる、オプションの組み込みスナバの機能も備わっています。このような組み込み設計により、独立したコンポーネントは不要となりました。センサの内部は、O リングにより外の環境から遮断されています。このような設計により、センサの内部コンポーネントが塩水噴霧、湿度、高圧洗浄、および水没から保護されます。

油圧センサ向け DEUTSCH DT コネクタ
ヘビーデューティ接続システムとの適合性

M9100 圧力トランスデューサは、最高レベルの侵入保護機能を備えた製品の 1 つである、TE の DEUTSCH DT コネクタ シリーズのような大型で耐久性に優れた接続システムに適合します。堅牢なセンサ設計と DEUTSCH 接続システムを組み合わせることにより、根本的に設計を見直した結果、多様で過酷な条件下でも故障せず、塩水噴霧、湿度、粉塵、または水分が製品に侵入し、故障につながるリスクが排除されたセンサとなりました。この設計で選択された材質は、製品の動作温度範囲を上回っています。熱可塑性材質の選択、接着剤の選択、および電子コンポーネント (AEC-Q100 準拠 ASIC など) の選択は、極端な温度、日光、酸素、またはヘビー デューティ機器用途でよく使用されている化学薬品に対する製品の堅牢性に貢献しています。

オレンジのバー

M9100 圧力トランスデューサの性能

油圧機械とそのコンポーネントは、極端な条件に晒されても、安定して機能することが求められます。圧力センサの中心となる技術は、非常に複雑な電気機械システムです。圧力センサは、システム内の圧力を電気出力に変換することを目的としています。物理的には、表面のダイアフラムのひずみを、発生した圧力に正比例し、再現性が高い電気出力に変換するという仕組みで機能しています。ただし、使用されている素子はその他の環境のほぼすべてから影響を受けやすいため、複雑さを伴います。

ひずみゲージ技術

ここで説明してきた TE のひずみゲージ技術は、数十年にわたって開発と最適化が行われた結果、誤差の発生源を最小限に抑え、高感度で再現性の高い圧力出力が得られるようになりました。このような出力信号は、特定用途向け集積回路 (ASIC) を使用して補正と増幅を行うことが可能です。この ASIC により、非線形出力によって引き起こされた誤差、熱的誤差、および供給電圧の変動が補正されます。このような誤差補正により、性能の基礎定義が、総合精度と呼ばれる簡単な用語に簡略化されます。総合精度とは、ASIC が補正できない残りの誤差 (部品間およびバッチ間の変動など) すべてを足し合わせたもので、補償された温度範囲にわたってユーザが認識する最大誤差として定義されます。M9100 では、AEC-Q100 に準拠し、診断機能が備わった ASIC が使用されています。このような診断により、センサが正しく動作し、不正な出力信号が発生する可能性を抑制していることが確認できます。

広い温度範囲 (-40°C ~ +125°C) にわたって総合精度仕様を利用することで、センサがシステム内でどのように性能を発揮するかについて、予測が簡略化されます。また ASIC はセンサの信号調整を行い、シリコンひずみゲージから信号を受信し、さらにこれを増幅されたアナログ信号に変換します。ASIC が再現性の高い誤差を補正する一方で、同じ環境効果により再現不能な誤差が引き起こされることがあり、このような誤差で最も頻度が高いものは長期的ドリフトです。ドリフトは、センサの出力における時間べースの変化と定義されています。このような影響は、ダイアフラムの機械的ひずみの変化 (クリープまたは応力緩和) など、さまざまな発生源に起因します。電気的影響または機械的影響によるセンシング素子の物理的変化、電気的接続の抵抗性の変化、保護ゲルなども発生源となります。圧力サイクル、過圧、温度曝露、温度サイクル、および湿度は、すべてこのような長期的ドリフトに寄与する可能性があります。Microfused ひずみゲージ技術と環境的ドリフトに対する既知の寄与因子に関する TE の長期にわたる経験により、TE は設計と処理の最適化により、安定性に優れた製品を顧客に提供できるようになりました。耐久性のコンセプトから検証テストまで、TE の Microfused ひずみゲージは、最上級のセンシング技術に基づいています。

優れた EMI 保護

機器内だけでなく、機器の周辺ともデータ通信が行われるようになるに従って、機器の電気的環境もさらに複雑になっています。センサとトランスデューサが晒される電気的雑音の程度も増加しており、センサが正しく保護されていなければ、このような雑音は信号に干渉するおそれがあります。M9100 は、放射感受性に関する ISO 11452-2 に従って検証されているため、電気的雑音の付近で使用したり、EMI 発生コンポーネントの付近に設置しても、正常に機能します。M9100 は、ISO 11452-4 に従って、最大で 200mA までの BCI (バルク電流注入) 干渉を防ぐことが可能です。さらに、電源に対する高レベルの電気的保護によって不十分な電源管理でもセンサの堅牢さが増し、システムの問題が生じるリスクが減少します。逆接続ができない配線システムの設計に推奨されている一方で、M9100 は最大で 28 VDC の過電圧、16 VDC までの逆方向給電、および V(+) または GND に短絡したアナログ出力に曝露されても、損傷を受けることなく正常に機能します。M9100 の検証が準拠している電気的試験仕様の完全なリストについては、M9100 データシートをご覧ください。

オレンジのバー

結論

油圧システムは、産業および商業輸送システムにおいてきわめて重要なコンポーネントです。油圧業界では、従来の圧力スイッチから圧力センサおよび圧力トランスデューサに移行する過程において、圧力の増加、動作温度の上昇、危険で過酷な環境での使用、ならびに油圧回路内での圧力過渡現象といった課題が増加しています。TE Connectivity の M9100 圧力トランスデューサの堅牢な設計と信頼性の高い性能は、これらの課題に適合するだけでなく、ヘビー デューティ用途における圧力センシングのニーズに応えます。

関連資料
夕陽を浴びる掘削車

用途

油圧システムと回路の性能に対する期待 (英語)

過去 20 年間において油圧業界は、電子機器の進歩、IoT (モノのインターネット) の広い普及、技術コスト削減、およびコンポーネントの小型化から恩恵を受けてきました。 さらに油圧業界では、従来の圧力スイッチから圧力センサおよび圧力トランスデューサに移行する過程において課題が増加しています。このような課題には、圧力の増加、動作温度の上昇、危険で過酷な環境での使用、ならびに圧力過渡現象などが含まれます。これらは設計者とシステム インテグレータにとっては難問であり、適切に解決しなければ、プロジェクトの遅延や現場での信頼性の問題につながることがあります。これらの圧力測定デバイスも、センシング素子や全体的な機械的パッケージから電子出力信号や信号調整まで、進化を遂げています。この文書では、圧力センサおよびトランスデューサを支える技術、これらのセンサが抱える一般的な機械的課題、さらにはこのような困難な環境において TE Connectivity (TE) の M9100 圧力トランスデューサが動作する仕組みを詳しく見ていきます。

センシング技術

センサの中身

外側からは、圧力トランスデューサは相対的にすべて同様に見えますが、非常に重要なセンシング素子はセンサの製造元により大きく異なります。最も一般的な、経済的にも技術的にも実現可能な手法の 1 つが、ひずみゲージをセンシング素子として使用し、圧力がダイヤフラムに及ぼす機械的ひずみを、正確で再現性の高い電気出力信号に変換するというものです。TE では、自社の Microfused ひずみゲージ技術をホイートストンブリッジ構成で使用することで、ひずみを電圧出力信号に変換しています。TE ではこのセンシング素子を、ねじ式ポートによる組み込みが可能な、単一の精密加工コンポーネントとして設計しました。この最適な設計により、センシング素子からの信号が非常に安定し、過圧および破損性能の水準もきわめて高くなりました。

TE では、ガラス接着プロセスを利用して、シリコンひずみゲージを金属ポートに融着しています。これらのゲージは、ひずみを圧力の変化として正しく測定できるように、最適な位置に配置されています。ゲージと信号調整電子部品とを接続する場合には、業界での実績があるワイヤボンディング プロセスが使用されています。薄膜積層、厚膜およびセラミックベースの技術などの、油圧センサ市場において競合する技術では、感度が低いセンシング素子を使用した個別のダイアフラムが利用されています。これらの技術では、液体の経路、内部の O リングに追加の溶接が必要となったり、サプライ チェーンのリード タイムがさらに長くなってしまう場合がある、追加の処理手順が要求されます。代替技術の場合でも、低い感度を補うために、センシング素子で高いひずみが要求されることがあります。このような高いひずみとともに、複数部品による構成は、長期的な安定性と耐久性を低下させる可能性があります。TE の Microfused ひずみゲージ技術は、数十年間にもわたって大量生産における実績があり、サプライ チェーンが崩壊するリスクを抑えるだけでなく、堅牢な単一部品による液体接続により、内部センサが故障したり、他の機械的課題が発生するリスクも抑えます。

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機械的課題

圧力トランスデューサを油圧システムの一部として取り付けると、さまざまな機械的課題が設計において解決・認識されます。システム設計者が設計プロセスの一部として検討する必要がある、油圧システム内の典型的な分野には次のものがあります。

  • 動作圧力
  • 圧力スパイク
  • 保証耐圧力
  • 液体接続
  • 破損圧力
  • 振動/機械的衝撃
  • 圧力疲労
  • 耐環境性

これらの懸念は、いずれもセンサの設計と検証により解決します。過圧定格や破損定格の確認、疲労解析、および圧力スナバの使用は、いずれも TE の設計プロセスに組み込まれており、シミュレーションと経験に基づく試験により検証されています。

動作圧力範囲

簡単に定義すると、これはシステム制御またはフィードバックを必要とする圧力範囲です。通常の動作条件下では、システムは常にこの範囲内に維持されます。この範囲に含まれない圧力は、通常では測定が不要となります。

保証耐圧力

システム設計では、必要な測定範囲を超えているものの、システムに損傷をもたらす可能性が低い圧力イベントが頻繁に発生します。多くの場合、過圧イベントの後では、システムの機能が正常に戻るものと予測されています。TE では、保証耐圧力を、圧力トランスデューサの出力特性または確度に永久的な変化をもたらすことなく、センシング素子に加えることができる圧力と定義しています。

破損圧力

圧力格納の不具合が発生するリスクを伴う、過度な圧力をシステムにもたらすような故障モードがシステム レベルで発生することがあります。TE では、それらの圧力トランスデューサの設計と検証を、理論と経験の両方に基づいて行うことにより、センサが破裂することなく機能する最小圧力を指定しています。

圧力疲労

システムの圧力変動を連続的にもたらすポンプまたはバルブが存在するシステムでは、多くの場合圧力疲労が見られます。このような変動は、振幅と周期にばらつきがあります。ポンプは振幅がきわめて小さく、高い周期の圧力振動を発生させることがある一方で、バルブは周期が低いものの、大きな圧力変化をもたらすことがあります。特定の場合では、この逆となることもあります。システムで発生しうる挙動を毎回予測することは不可能であるため、TE の M9100 は、0 から 1,000 万までのフルスケールの圧力サイクルで試験が行われているだけでなく、応力が疲労限界を常に下回ることで、本質的には動作範囲内であれば永久に機能し、保証圧力範囲内であれば多くの場合寿命が数倍にも延びるように、理論的検証も行われています。TE のセンシング素子は、競合技術よりも大幅に感度が高いため、ストレス レベルが非常に低くなり、圧力疲労が懸念されなくなることには注目するべきでしょう。

圧力スパイク

油圧システムにおいて最も見落とされやすい課題は、一般的には「圧力スパイク」と呼ばれる (ウォーターハンマー効果と呼ばれることもあります)、非常に高い周期での圧力過渡現象の存在です。圧力スパイクは、バルブを動作させている間に発生することがあります。圧力スパイクは、システム構造上の問題、すなわち油圧ポンプに空気が混入することが原因で発生する圧力の波です。一般的に圧力スパイクは、圧力が非常に高い値 (動作圧力の 10 倍となることもあります) まで、急激 (通常ではミリ秒単位) に上昇することを特徴としています。圧力スパイクは、通常の圧力センサではイベントの発生を検出できないほどの速度で発生する場合があります。ただしこの現象は、圧力トランスデューサに永久的な損傷をもたらし、永久にゼロシフトになってしまうことがあります。このような損傷により、センサが圧力またはダイアフラムの破裂に応答しなくなり、液体がセンサのハウジング内に侵入します。圧力スパイクを正しく識別できる機器を、顧客がシステムに導入していないことはよくありますが、正しい技術を使用した圧力トランスデューサを選択することは役に立つでしょう。TE の堅牢な M9100 の設計とオプションのスナバにより、圧力スパイクに起因する故障モードの発生を抑えることができます。

圧力センサ油圧システム
液体接続

油圧回路への接続も、機械面で考慮するべき事項の 1 つです。世界各国で普及しているねじ込み接続オプションには、SAE (北米)、G シリーズ (EMEA)、および Metric (APAC) など、さまざまなものがあります。TE は、SAE J1926 または ISO 1179 などの歴史的な工業規格に関して長期にわたる実績があり、常に変化する要件に継続して対応してきました。どのねじ込み接続にも独自の定格が指定されており、油圧業界内で高圧がより一般的となるに従って、圧力トランスデューサの定格値指定、取り付け、およびトルク設定が正しく行われるように、さらに予防策が必要となりました。

振動/機械的衝撃

これまで機械的衝撃と振動は、センサ業界内では一対のものとして扱われてきました。圧力トランスデューサは、使用する用途に固有の機械的環境により、一般的にオンおよびオフロード用途の両方で使用されています。ディーゼル モータの高周波振動から、上限まで積載した荷を地面に落とすフォークリフトの衝撃まで、これらの条件では、「衝撃と振動」による副作用がトランスデューサに発生しないことが求められます。 

耐環境性

耐境面性は、製品が極端な環境に対応し、長期的に安定して動作できるようにするうえで、非常に重要です。圧力センサでは、耐用寿命全体にわたって適合性と信頼性が得られるように、機械的設計と材質の選択を検討するだけでなく、これらの環境条件がセンサの長期的な性能に及ぼす影響も考慮する必要があります。これで、圧力センサが抱える一般的な機械的課題の再確認が終わりました。重要な油圧機械の機械的課題を解決できるように設計された、TE の M9100 ヘビーデューティ圧力トランスデューサの頑丈な設計を見てみましょう。

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堅牢な設計

M9100 圧力トランスデューサの堅牢な設計と信頼性の高い性能は、ヘビー デューティ用途における圧力センシングのニーズに応えます。TE の M9100 センサは、油圧耐久性に関して最上級の製品の 1 つです。M9100 は、最も頑丈さが求められる用途のニーズに対して十二分に対応できるように、単純さと耐久性に留意して設計されました。多くの場合、複数の回路基板、内部配線、および複数のはんだ付けによる相互接続が必要となる複雑な設計では、早期の故障と現場での信頼性問題がより発生しやすくなります。M9100 は、可能な限り多くの故障モードを排除することにより、簡単、コンパクト、かつ耐久性に優れた設計となっています。この圧力トランスデューサは、単一の PC 基板設計により、設置面積がコンパクトになっています。センサのはんだ付け接点はすべて、自動化されたピック アンド プレース機器とリフローはんだ付けにより、十分に制御されています。このセンサには、人間の手によるはんだ付け接点や、はんだ付けによる相互接続はなく、基板が重なっている部分もありません。

シングルピースの精密加工ステンレス鋼センシング ダイアフラム構造により、溶接や接着といった余分な組み立て手順が不要になりました。この構造により、ひずみの程度を低く抑えられるため、保証耐圧力、耐破損性、耐疲労性、および耐圧力スパイク性が非常に高くなり、その結果設計プロセスの段階でも現場での使用中においても、問題が発生するリスクが低くなりました。Microfused センサの設計は、他の技術よりもきわめて厚いダイアフラムを特長としています。これにより、センサが圧力スパイクによる損傷を受けにくくなり、このような圧力イベントの発生が完全に防止されます。また TE の M9100 には、さらに圧力スパイクの速度と振幅を軽減できる、オプションの組み込みスナバの機能も備わっています。このような組み込み設計により、独立したコンポーネントは不要となりました。センサの内部は、O リングにより外の環境から遮断されています。このような設計により、センサの内部コンポーネントが塩水噴霧、湿度、高圧洗浄、および水没から保護されます。

油圧センサ向け DEUTSCH DT コネクタ
ヘビーデューティ接続システムとの適合性

M9100 圧力トランスデューサは、最高レベルの侵入保護機能を備えた製品の 1 つである、TE の DEUTSCH DT コネクタ シリーズのような大型で耐久性に優れた接続システムに適合します。堅牢なセンサ設計と DEUTSCH 接続システムを組み合わせることにより、根本的に設計を見直した結果、多様で過酷な条件下でも故障せず、塩水噴霧、湿度、粉塵、または水分が製品に侵入し、故障につながるリスクが排除されたセンサとなりました。この設計で選択された材質は、製品の動作温度範囲を上回っています。熱可塑性材質の選択、接着剤の選択、および電子コンポーネント (AEC-Q100 準拠 ASIC など) の選択は、極端な温度、日光、酸素、またはヘビー デューティ機器用途でよく使用されている化学薬品に対する製品の堅牢性に貢献しています。

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M9100 圧力トランスデューサの性能

油圧機械とそのコンポーネントは、極端な条件に晒されても、安定して機能することが求められます。圧力センサの中心となる技術は、非常に複雑な電気機械システムです。圧力センサは、システム内の圧力を電気出力に変換することを目的としています。物理的には、表面のダイアフラムのひずみを、発生した圧力に正比例し、再現性が高い電気出力に変換するという仕組みで機能しています。ただし、使用されている素子はその他の環境のほぼすべてから影響を受けやすいため、複雑さを伴います。

ひずみゲージ技術

ここで説明してきた TE のひずみゲージ技術は、数十年にわたって開発と最適化が行われた結果、誤差の発生源を最小限に抑え、高感度で再現性の高い圧力出力が得られるようになりました。このような出力信号は、特定用途向け集積回路 (ASIC) を使用して補正と増幅を行うことが可能です。この ASIC により、非線形出力によって引き起こされた誤差、熱的誤差、および供給電圧の変動が補正されます。このような誤差補正により、性能の基礎定義が、総合精度と呼ばれる簡単な用語に簡略化されます。総合精度とは、ASIC が補正できない残りの誤差 (部品間およびバッチ間の変動など) すべてを足し合わせたもので、補償された温度範囲にわたってユーザが認識する最大誤差として定義されます。M9100 では、AEC-Q100 に準拠し、診断機能が備わった ASIC が使用されています。このような診断により、センサが正しく動作し、不正な出力信号が発生する可能性を抑制していることが確認できます。

広い温度範囲 (-40°C ~ +125°C) にわたって総合精度仕様を利用することで、センサがシステム内でどのように性能を発揮するかについて、予測が簡略化されます。また ASIC はセンサの信号調整を行い、シリコンひずみゲージから信号を受信し、さらにこれを増幅されたアナログ信号に変換します。ASIC が再現性の高い誤差を補正する一方で、同じ環境効果により再現不能な誤差が引き起こされることがあり、このような誤差で最も頻度が高いものは長期的ドリフトです。ドリフトは、センサの出力における時間べースの変化と定義されています。このような影響は、ダイアフラムの機械的ひずみの変化 (クリープまたは応力緩和) など、さまざまな発生源に起因します。電気的影響または機械的影響によるセンシング素子の物理的変化、電気的接続の抵抗性の変化、保護ゲルなども発生源となります。圧力サイクル、過圧、温度曝露、温度サイクル、および湿度は、すべてこのような長期的ドリフトに寄与する可能性があります。Microfused ひずみゲージ技術と環境的ドリフトに対する既知の寄与因子に関する TE の長期にわたる経験により、TE は設計と処理の最適化により、安定性に優れた製品を顧客に提供できるようになりました。耐久性のコンセプトから検証テストまで、TE の Microfused ひずみゲージは、最上級のセンシング技術に基づいています。

優れた EMI 保護

機器内だけでなく、機器の周辺ともデータ通信が行われるようになるに従って、機器の電気的環境もさらに複雑になっています。センサとトランスデューサが晒される電気的雑音の程度も増加しており、センサが正しく保護されていなければ、このような雑音は信号に干渉するおそれがあります。M9100 は、放射感受性に関する ISO 11452-2 に従って検証されているため、電気的雑音の付近で使用したり、EMI 発生コンポーネントの付近に設置しても、正常に機能します。M9100 は、ISO 11452-4 に従って、最大で 200mA までの BCI (バルク電流注入) 干渉を防ぐことが可能です。さらに、電源に対する高レベルの電気的保護によって不十分な電源管理でもセンサの堅牢さが増し、システムの問題が生じるリスクが減少します。逆接続ができない配線システムの設計に推奨されている一方で、M9100 は最大で 28 VDC の過電圧、16 VDC までの逆方向給電、および V(+) または GND に短絡したアナログ出力に曝露されても、損傷を受けることなく正常に機能します。M9100 の検証が準拠している電気的試験仕様の完全なリストについては、M9100 データシートをご覧ください。

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結論

油圧システムは、産業および商業輸送システムにおいてきわめて重要なコンポーネントです。油圧業界では、従来の圧力スイッチから圧力センサおよび圧力トランスデューサに移行する過程において、圧力の増加、動作温度の上昇、危険で過酷な環境での使用、ならびに油圧回路内での圧力過渡現象といった課題が増加しています。TE Connectivity の M9100 圧力トランスデューサの堅牢な設計と信頼性の高い性能は、これらの課題に適合するだけでなく、ヘビー デューティ用途における圧力センシングのニーズに応えます。