街路照明

ケース スタディ

街路照明用 EMI フィルタ

街路照明で EMI の問題がどのように発生し、TE の Corcom EMI フィルタ FB シリーズがなぜ照明用途に対する解決策であるかをお読みください。

著者

Benjamin Nelson、エンジニア、業界専門家

電磁干渉 (EMI) は外的に引き起こされる電磁妨害で、電気回路の性能に悪影響を及ぼす可能性があります。 昔、テレビの視聴中に掃除機やミキサーを作動させたとき、テレビ画面に縞模様が現れたことはありませんでしたか。これは EMI の結果です。EMI は特に AM ラジオに悪影響を与えますが、FM ラジオ、セルラー通信機器、リモート コントローラ、緊急呼び出し装置、テレビ、補聴器などの通信機器にも影響する場合があります。

EMI は、LED 照明自体からは発生しません。EMI の発生源は、LED に電力を供給する電子ドライバです。 従来の照明に使用されていた電磁バラストの動作周波数は、電子ドライバよりはるかに低いものでした (60 Hz)。それに対して、電子ドライバは 20 ~ 60 kHz (磁気バラストの周波数の 50 ~ 200 倍) で動作し、この高速スイッチングが原因で EMI の発生レベルははるかに高くなります。トレードオフは、高周波ドライバのほうが小型、軽量、かつ動作音が静かで、効率も高いという点です。

幸いにも EMI は新たな現象ではないため、今日の市場には既にさまざまなソリューションがあふれています。

残念ながら、照明業界には EMI に関する規制はほとんどありません。 そのため、照明メーカは FCC 仕様に基づき、フェライト ビーズやさまざまなシールド技術を使用して設計を行っています。この方法で基準とされている FCC 仕様パート 15 は、実験室条件にとっては十分なのですが、街路照明の用途においては十分ではありません。


テキサス州アマリロで LED 街路照明を試験的に設置した際に発生した事例は、まさにこれに該当します。ある「懸念する市民」が、LED 街路灯が設置された後、AM ラジオに大きな干渉が生じるようになったと報告しました。徹底的な分析の結果、照明器具が問題の原因であることが判明しました。少量の RF ノイズが電源ラインまたはアース ラインに結合した場合、それは放射アンテナとして働きます。ノイズが結合する電源ラインの長さにより、どの周波数が放射されるかが決まります。ラインの長さはさまざまに異なるため、その影響は同じ近隣区域内でも家ごとに異なる可能性があります。また、この干渉 (ノイズ) が配線を通じて照明器具に逆誘導され、電源回路の共振または専用のアース リード線の欠如によって増幅される可能性もあります。

街路照明の EMI

では、これらのノイズ源が他の機器に干渉しないようにするにはどうすればよいでしょうか。 そのためには、問題が生じる前にノイズを源で抑止します。EMI フィルタは、ローパスを使用して厄介な高周波を除去するように設計されています (つまり、L-C フィルタ)。これらのフィルタは通常、インダクタ (L) やコンデンサ (C) などの受動部品で構成されています。インダクタは、低周波または DC 電流を通過させ、高周波電流を遮断します。コンデンサは低インピーダンス経路を提供し、高周波ノイズをフィルタの入力からそらして電源に戻すか、アース接続の方に向けます。下の回路図では、フィルタで除去された負荷を放散するために抵抗器が使用されており、これがノイズを効果的に捕捉してシステムの他の部分にノイズが結合しないようにします。

照明器具のシャーシ

EMI 規制への準拠を手助けするのに加えて、フィルタは安全性基準も満たしている必要があります。 電源動作に対するインダクタの温度上昇が測定され、ライン、ニュートラル、アース間の最小限の電気的間隔が制御されます。これにより、火災や感電のリスクが軽減します。コンデンサも、回路内の位置に応じて個別に安全性が認定されます。入力端子には、短絡や火災の危険を防ぐために特殊な「X」コンデンサが使用されます。AC 回路からアースへの接続には「Y」コンデンサが使用され、感電の可能性を防ぎます。
TE の FB シリーズ EMI フィルタは、このような街路照明の問題に対する理想的な解決策です。このシリーズは 277 VAC で認可されており、ほとんどの照明用途に適合します。TE は、UL リスティングとともに UL レコグニションも取得しています。FB シリーズは、照明業界で好んで使用される固体銅リード線の使用にも対応しています。大半の EMI フィルタは 250 VAC に対してのみ認可されているため、TE の FB シリーズは照明業界のお客様にとって速やかな解決策となります。下の図に示すように、EMI フィルタはバラストまたはドライバのできるだけ近くに配置します。そうすることで、RF が導線を伝って送信アンテナのように働くことを防止できます。

照明器具のシャーシ

EMI フィルタを追加すると、全体的な設計のコストは増加しますが、住民やその他の街路照明利用者から EMI 干渉の苦情を受ける可能性を防ぐことができます。 あらかじめ保護対策を組み込んでおけば、複雑で費用のかかる干渉源の分析が不要になります。FCC 仕様には次のような記載があります。「機器の仕様遵守について責任を負う当事者は、このパートで規定された制限はあらゆる状況下で有害な干渉を防ぐものではないことに留意する必要がある」(FCC パート 15、セクション 15.15、段落 c)。
この一文は、ある照明器具が実験室条件の下で合格したとしても、数多くの干渉源の中でも特に配電設備、変電所、送電線に囲まれている条件の下では必ずしも合格するとは限らないことを意味しています。