Mini-SAS HD コネクタ

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Mini-SAS HD コネクタと Mini-SAS HD ケーブル アセンブリ

Mini-SAS HD 相互接続の選択では検討を要する可変要素が数多く存在します。ここでは、所要の性能レベルを実現できる Mini-SAS HD コネクタと Mini-SAS HD ケーブル アセンブリを指定する方法について、TE がヒントを提供します。

データ センタにおけるストレージ システムの相互接続では SAS (Serial Attached SCSI) コネクタが不可欠です。 SAS は、ストレージ機器に使用する標準的な相互接続を定義しています。この標準は数年にわたって進歩してきました。2005 年に 3.0 Gbps で動作する SAS-1、2009 年に 6 Gbps の SAS-2、2013 年に 12 Gbps を実現した SAS-3 が導入されています。Mini-SAS HD (高密度仕様) コネクタと Mini-SAS HD ケーブル アセンブリは、SAS-3 標準に準拠しています。

Mini-SAS HD コネクタと Mini-SAS HD ケーブル アセンブリは、内部用途と外部用途の双方に対応しています。Mini-SAS HD コネクタは、ストレージのほか、いくつかのタイプの産業機器と医療機器でも使用されています。内部接続は、サーバのプロセッサを組み込んだストレージ システムにそのプロセッサを接続でき、外部接続は、シェルフ間やラック間でストレージ ディスクなどのデバイスを接続します。

Mini-SAS HD コネクタや Mini-SAS HD ケーブル アセンブリの選択では、検討を要する可変要素がいくつかあります。例を挙げると、コネクタのポート数、ケーブル アセンブリに使用するワイヤのゲージとケーブルの長さ、ケーブル アセンブリに使用するケーブルのタイプ、外部ケーブル アセンブリでのラッチの設計、製造のリード タイムがあります。このほかにも、達成することを求められる固有の性能基準があります。 

ポート数

設計段階では、データに必要とするスループットに応じて、Mini-SAS HD コネクタにさまざまな数のポートを選択します。Mini-SAS HD コネクタ システムには 4 本のレーンがあり、それぞれのデータ レートは 12 Gbps です。したがって、単一ポートでは 48 Gbps を伝送できます。これより多くのデータを高速で伝送する必要がある場合は、より多くのポートを備えたコネクタ設計を採用します。単一ポート、デュアル ポート、4 ポートの各設計が用意されています。ストレージ業界では、複数のポートを設けた 1U サイズのストレージ シェルフを見かけますが、これはサーバとスイッチからのデータ伝送が主眼であるからです。産業機器や医療機器では、これほど大量のデータを通常は伝送しないので、コネクタに設定するポートの数は、サーバなどの場合より少ないことが普通です。 

ケーブル長とワイヤゲージ

他の基準として、ケーブル長とワイヤゲージがあります。SAS ではコネクタのフォーム ファクターだけではなく、性能も定義しています。SAS 標準では、挿入損失やクロストークなど、信号品質の低下を招く要因に対してケーブル アセンブリが発揮する性能を規定しています。Mini-SAS HD ケーブル アセンブリには、一般的に 30、28、26、および 24 の各ワイヤゲージが用意されています。この数字が小さいほど、導線直径は大きくなります。導線直径が大きいケーブル アセンブリは、長距離伝送の産業仕様を満足していることが一般的です。これは、導体が大きいために信号の減衰が少ないからです。たとえば、30 ゲージのケーブル長は 3 m ほどとなる一方で、24 ゲージのケーブル長は 6 ~ 7 m にもなりますが、それでも産業仕様を満足しています。 

お客様の基準

多くの場合、お客様がコネクタとケーブル アセンブリに独自の性能要件を用意しています。チャネルの損失バジェットに基づき、性能マージンの改善を図るために、ケーブル アセンブリに使用するワイヤのサイズを大きくすることが必要になる場合があります。基本的な特性は業界標準で規定されていますが、お客様は、システムをどのように構成するかに基づいて実際に使用する製品を決めています。多くの場合、お客様がコネクタ製造元に損失バジェットを指定します。3 m の伝送距離に 10 dB の損失バジェットをお客様が指定すると、製造元では、この損失バジェットに対応するには、ケーブル アセンブリに 26 ゲージのワイヤを使用する必要があることをお客様に伝えます。 

内部 Mini-SAS HD ケーブル アセンブリ
一般的な内部 Mini-SAS HD ケーブル アセンブリ
外部 Mini-SAS HD ケーブル アセンブリ
一般的な外部 Mini-SAS HD ケーブル アセンブリ

ケーブルのタイプ

外部コネクタでは丸形ケーブルを使用しますが、内部ケーブルでは、システム内部での占有空間を少なくするためにフラットな twinax ケーブルを使用することが普通です。一方、内部ケーブル アセンブリでも丸形ケーブルが望ましいとする設計もあります。 

ラッチの設計

外部コネクタのケーブル アセンブリの中には、他のケーブル アセンブリよりも堅牢なラッチ機構を備えているものがあります。強いラッチ保持力を持つラッチ設計にしておくと、ストレージ システムなどのデバイスを移動しても、ケーブル アセンブリの接続が外れる可能性が低くなります。 

製造のリード タイム

発注から納品までのリード タイムを検討し、製造元と打ち合わせておく必要があります。カスタム設計の発注では特に重要になります。Mini-SAS HD コネクタと Mini-SAS HD ケーブル アセンブリのリード タイムは、製造元と使用する部品によって異なります。早い段階で、予定納期を仕様要件の中で必ず周知徹底しておくようにします。 

Mini-SAS HD コネクタと Mini-SAS HD ケーブル アセンブリは、ストレージ用途で選択するコンポーネントです。小さいフォーム ファクターで高性能を実現できる製品であるため、システム製造元では機器に多くのポートを追加できます。ここまでに取り上げた基準を勘案することで、どのようなストレージ用途であっても、システム設計段階で適切な Mini-SAS HD コネクタを見つけることができます。 

著者

共著者の Melissa Knox は、TE Connectivity の Data and Devices 部門で I/O 製品の Product manager を務めています。

共著者の Scott Kleinle は、TE Connectivity でケーブルおよびケーブル アセンブリ担当のグローバル ディレクタを務めています。 共著者の Scott Kleinle は、TE Connectivity で Cable and cable assembly の Global director を務めています。