工場で産業用協働ロボットと作業をするエンジニア。

イノベーションに関する見識

イノベーション人材の方程式の解法

筆者: Malavika Sagar、Chief Human Resources Officer

技術産業は急速に変化しているため、継続的なイノベーションの文化を育むことは組織の長期的な成功に不可欠です。 そのため、世界中のエンジニアとエグゼクティブの大多数が TE Connectivity 2023 産業技術インデックスで組織の最優先事項としてイノベーションに言及したことは驚くにあたりません。TE Connectivity 2023 産業技術インデックスは、世界を形作る業界内のイノベーションの状況を調べる世界規模の調査です。

 

突き詰めると、イノベーションは主に人によって推し進められると考えています。そして、組織はチームの創造力を解き放つ最良の方法に関して重要な問題に直面します。調査回答者は、イノベーション能力を強化する上で直面するいくつかの課題と機会について挙げています。その中には、追加トレーニングの必要性、連携の重要性、既存のチームのスキルと知識を補う外部パートナー探しが含まれます。

 

これらはすべて TE Connectivity が自社内でのイノベーション文化の確立に取り組むにあたって直面してきた問題です。以下では、調査の結果から導き出されたいくつかの優先事項を詳しく調べ、組織のイノベーション人材の開発に役立つ、TE の経験に基づく見識をお伝えします。

受容する文化の促進

適切な土台を据えることが、組織内でイノベーションを促す最重要要素の 1 つです。 この取り組みは、適切なリーダーシップを頂点に置いて、新たなアイデアを歓迎する環境を促進する受容する文化をもたらすことから始まります。

 

それらのリーダーは、企業が成功と成長のためにイノベーションに革新的な考え方を期待していることを意識的に示しつつ、エンジニアを強化し、報奨を与える必要があります。

 

受容する文化では、イノベーションでは必ずしも成功するとは限らないリスクを冒すことも含まれるということを示すために、採用される革新的なアイデアと失敗に終わったフェイル ファストなアイデアの両方が報われなければなりません。受容は TE の成功にとって必要不可欠であるため、TE のコアバリューの 1 つとして強調しています。

 

別の基本的な要素は、組織が目的または理由をはっきりさせておくことです。TE では、エンジニアは目的がより安全で、持続可能性と生産性に優れた、つながる未来の構築であることを理解しているため、大局的な見地でイノベーションのニーズを調整することができます。

 

社会全体の「ニュー ノーマル」の動きでは、多数の破壊的技術や技術変革が勢いを増しつつ市場に流れ込んでいます。社内外のイノベーションは成功にとって不可欠であり、商業的に成功とされるイノベーションをいくつか導入するために計り知れないほどのイノベーションが必要とされています。受容する企業文化は、他の企業と比較して革新的であることを証明してきました。TE では、エンジニアがイノベーションスキルを毎日の業務に適用できるように、目的に基づく機会を提供することにより、この目標を活用します。

ノートパソコンで製品ビデオを見るエンジニアリング チーム。
今後の技術課題にグローバル規模で協力して取り組むことにより、現時点でイノベーションを推進する

チームワークの奨励

連携は、イノベーション プロセスの成功に欠かせません。 しかし、調査によると多くの組織が未だにより綿密な連携環境を作り出すための試行錯誤を続けています。

 

社内の別のチームと定期的に連携して、画期的なソリューションを推進していると答えた回答者はわずか 24% に過ぎませんでした。39% は、組織内のサイロによって、新たな技術を導入する際に課題が生じていると述べています。

 

これらの障害を、個人、チーム、部門、地域オフィスに細分化することは優先事項です。組織の 79% は、今後 1 ~ 3 年の間に部門を超えた協力関係を強化する投資を増加する計画であると答えています。

協力して働くことのメリットを示す図

連携を促す方法の 1 つは、部門の枠を超えたチームに特定のプロジェクトに取り組むよう割り当てることです。 この際に、各メンバーが潜在的なソリューションを形作る上で役立つさまざまな専門知識を持ち寄ります。

 

部門の枠を超えたチーム メンバーによって「1 つのチーム」としてのアプローチを確立することで、継続的なイノベーションが大いに後押しされ、トレンドを生み出し、持続可能で長期的な成功を達成する製品を開発できる可能性が高まります。

 

動的な成長分野におけるイノベーションは複雑であり、技術および製造プロセスの双方に大きな課題をもたらすことを認めざるを得ません。複数の部門にまたがるチーム (社内外のノウハウを含むプロジェクト管理、エンジニアリング、製造、調達、品質など) がまとまっていれば、高度な専門スキルを手に入れて、世界中の競合他社を上回り、想定内の技術および製造リスクで経済的に無駄なく成功できる、革新的な製品を開発できます。


 

そういった部門の枠を超えたチームの効果性を高めるために、組織は受容する環境を活用する必要があります。メンバーが評価や叱責を恐れることなく安心してアイデアを提示できるようにするためです。不完全なアイデアだったとしても、そのようなアイデアをオープンかつ率直に議論することをチームに推奨すると、一連の工程をさらに反復できる可能性があります。さらに、各アイデアのメリットとデメリットを調べることで、次の段階の計画に役立ちます。

 

組織は、プロジェクト固有のチーム外でも、イノベーターが協力して業務に携わる場所を作ることで、協力関係を強力することができます。毎年、TE は自社内のイノベーションを世界中で称える TechCon を開催しています。期間中には、世界各地の部門と事業部門が一堂に会します。

 

チームが携わる分野における最新の進歩や画期的なアイデアを発表し、開発してきた破壊的ソリューションを共有するようにチームに勧めています。このイベントは、エンジニアにとって重要な技術教育の場となり、サイロを乗り越えて業務内で新たなアイデアを引き出すための刺激となる実例を見ることができます。

エグゼクティブのインタビュー: 技術分野のイノベーションを推進する上での課題
エグゼクティブのインタビュー: 技術分野のイノベーションを推進する上での課題

多様性に富んだ新しい視点をもたらす

成功している組織も、イノベーションを前進させるには、新しい視点を持つ必要があります。 よくあるソリューションの 1 つは新しい人材を採用することです。調査回答者の約 82% が今後 1 ~ 3 年の間に新たな人材の採用を計画していると述べました。

今後 3 年間の採用増加計画を示す図。

新しい人材を採用する際には、組織に欠けている特定のスキルや多様な視点を持つ人を見つけることが目標となります。 顧客の問題を解決するソリューションを見つけるために、これまでとは全く異なる方法を見つけるという最も重要な目標達成をサポートするためです。

 

また、組織は社内人材を補うために、社外との提携関係を増加させることも検討しています。革新的な優れた新製品を開発するために TE と提携した、外部のスタートアップ企業、戦略的な製品パートナー、コンサルタント、研究組織とのパートナシップで TE は成功を収めてきました。

 

TE は社外のイノベーションを強化するために、最大 300 万ものスタートアップ企業が参加できる、世界規模のスタートアップ コンペを開催しています。コンペでは、社外のスタートアップチームと社内の TE チームを組み合わせて、他のスタートアップと TE の合同チームと競って勝利を目指してもらいます。刺激を受けた、情熱にあふれるチームには、驚くほど前向きなエネルギーがあり、企業のイノベーションの段階を大幅に底上げできます。

 

多くの場合、組織は顧客からの多様な新しい考え方に触れることで、最大の価値を得ることができます。顧客からエンド ユーザーのニーズに関する深い知識とエンジニアが面する技術的な課題への重要な見方を得られます。その結果、最適な設計のソリューションを導き出すことができます。これこそ、TE がすでに決めておいた完全なソリューションを顧客に提供しようとするのではなく、イノベーション パートナーとして顧客にアプローチする理由です。エンジニアにも顧客とのやり取りに加わってもらい、開発プロセス全体を通じて定期的なフィードバックを求めます。顧客の成功を実現するという最終目標に向けて取り組んでいるからです。 

コネクテッド技術が普及したスマートシティの画像。
TE は、イノベーション リーダーやテクノロジー系起業家の強力なエンジニアリング パートナーです。

適切な人材開発の提供

チームのスキルと知識を向上する人材開発プログラムへの投資は、 産業技術インデックスの調査対象となった組織の優先事項です。実際、回答者の 82% が今後 1 ~ 3 年の間に学習への投資の増加を計画していると述べ、それと同時にエンジニアの 85% がトレーニングと開発プログラムの増加がイノベーションの加速に寄与すると述べています。

開発プログラムの影響を示す図。

ただし、決定として重要なのは、最も効果的な人材開発のタイプを明らかにすることです。 人の創造力を高めるトレーニングは難しいかもしれませんが、エンジニアにイノベーション プロセスや E モビリティ、再生可能エネルギー、人工知能、モノのインターネット (IoT) など急成長を続ける革新的な分野のトレーニングを施すことはできます。人材開発とトレーニングは、人とアイデアを成功に向けてまとめる上で役立ちます。

 

TE では、チームはデザイン思考を実践できるようにトレーニングを受けてきました。この思考法は、イノベーションへのアプローチの 1 つですが、設定した目標と完璧な製品を念頭に置いて開始されるのではありません。そうではなく、デザイン思考では、複数の主要な段階を含む、反復による非線形プロセスが強調され、まずは顧客の視点に立つことから始まります。そのような観点からスタートすると、問題を定義し、仮定を覆して従来のアプローチを上回る潜在的なソリューションのブレインストーミングを始めることができます。それらのアイデアは、試験や改良の対象となる試作段階に至ります。

 

また、エンジニアにアジャイル プロセスに関するトレーニングも実施します。アジャイル エンジニアリングでは、一連の工程の細かな反復と頻繁なフィードバック収集が強調され、初めから完璧なソリューションを作り出そうとするのではなく、継続的に改善します。デザイン思考と同様に、アジャイルでは創造的な思考を企業の優先事項と顧客の目的に合わせるイノベーションを実現するプロセスが強調されます。 

勢いの維持

イノベーションは複雑ですが、受容する文化と意図に基づくアプローチを受け入れることは、チームのモチベーションと生産性を維持するのに役立ちます。 エンジニアは、新しいスキルとプロセスを学び、企業のイノベーション目標を達成するための能力を伸ばす機会を求めています。企業の目的に沿った、人材開発プログラムから実際的な教訓を引き出す機会を提供すると、エンジニアの業務の重要性を維持できます。また、エンジニアは最適なソリューションを開発するのに役立つ多様な視点をもたらす人と協力する環境においても成功します。そして、目標に近づくための成功に加え、ニアミスも高く評価する企業に感謝します。 イノベーションは反復プロセスであり、チームのイノベーションの開発と能力のサポートに全力を尽くす組織は、長期間にわたって多くの成功を手にすることになるでしょう。 

Malavika Sugar, SVP & CHRO

Malavika Sagar、SVP 兼 CHRO

Malavika Sagar は TE Connectivity の Senior Vice President 兼 Chief Human Resources Officer (CHO) であり、経営管理チームのメンバーを務めています。この職務において、彼女は業績の評価と褒賞、従業員の能力開発と成長機会の創出、インクルーシブな職場環境の整備、従業員の健康を支援することに重点を置くことで、会社の人材戦略を推進する人事専門家のグローバル チームを率いています。Malavika は 2012 年に TE Connectivity に入社し、TE の輸送ソリューション部門で人事の Vice President に就くほか、グローバル自動車事業部、産業および商業輸送事業部、アプリケーション ツーリング事業部の各部門で人事の上級職を務めてきました。Malavika は、ラトガース大学でビジネスとマーケティングの学士号を取得し、人事管理の修士号を取得しています。