線形変位の高精度測定
TE Connectivity の線形可変差動変圧器 (LVDT) 位置トランスデューサは、優れた分解能と再現性で正確な測定を行います。さまざまな実装オプションが用意されている LVDT は、過酷な環境や重要な用途においてきわめて長い耐久年数を持ちます。これらのセンサは摩擦のない非接触式の誘導磁気結合を特徴としており、サイクル寿命が非常に長く、分解能はほぼ無限です。きわめて要求の厳しい用途の要件に応えるため、豊富な既製の実装オプションに加えて、実装オプションのカスタマイズも承っています。
製品の特長:
- AC 駆動の線形可変差動変圧器 (LVDT) は電子部品を備えていないため、大きさに制約がある場合や過酷な動作環境での使用に最適です。
- DC 駆動の LVDT には信号調整用の電子部品が組み込まれており、キャリブレーションまたは特殊な信号調整は必要ありません。各ユニットは正電圧または正負電圧の DC 電圧で駆動でき、スケーリングされた電圧出力、電流出力、デジタル出力を提供します。
- スプリング式プランジャーとベアリング アセンブリ (ゲージ ヘッド) を備えた LVDT は簡単に取り付けることができ、±0.020 ~ ±2.000 インチのレンジの AC 出力バージョン、DC 出力バージョン、デジタル出力バージョンが用意されています。
- セパレート コア LVDT は、ミニチュア (AC 駆動)、汎用 (AC 駆動、DC 駆動、ループ電源駆動)、シール型 (DC 駆動、ループ電源駆動)、ハーメチック シール型 (AC 駆動、DC 駆動)、水中向け (ループ電源駆動)、危険地域向け (AC 駆動)、カスタム セパレート コア LVDT などの構成で使用できます。
LVDT センサの特長:
位置センサ
- 絶対出力
- 広い温度範囲にわたってヌル点に優れた再現性を実現
- 広い温度範囲に対応 (-220 ~ +500°C)
- 放射線耐性化が可能
- 事実上ヒステリシスなし
- 摩擦のない動作
- オーバートラベル損傷耐性
LVDT センサ出力信号
AC 駆動の LVDT リニア位置センサには電子部品が組み込まれていないため、作動させるにはオシレータ、搬送波増幅器、復調器やフィルタなどの外部装置が必要です。 DC 駆動の LVDT リニア位置センサは、AC 駆動の LVDT と搬送波発振器/信号調整モジュールで構成されています。AC 駆動の LVDT の望ましい特性をすべて持ちながら、DC 駆動の使いやすさも兼ね備えています。多くの場合、AC と DC のどちらの出力信号を選ぶかは用途によって決まります。
AC 駆動の LVDT センサ
電子部品なし
- 基本的な AC LVDT は 1 つの一次コイルと 2 つの二次コイルで構成されている
- コイル アセンブリ内部の強磁性体コアにより、これらのコイルを結合する磁束の経路を形成
- 一次コイルを AC 電圧 (一般的には 2.5 kHz で 3 ~ 7 Vrms) で励磁すると、その電圧がコアによって 2 つの二次コイルに誘導結合される
- コイル アセンブリは固定されており、コアはコネクティング ロッドによって可動体につながっている
- エレクトロニクスを使用して、コイル アセンブリ内部でコアが占める正確な位置を判断可能
DC 駆動の LVDT センサ
信号調整回路を内蔵
- 内部オシレータによって、コイルを所要の AC 信号で励磁
- DC LVDT は、センサ本体内部に小型の信号調整回路がパッケージ化されている
- 同期復調回路で二次コイルの出力を読み取り、その出力を整流および増幅して、LVDT コア位置の全範囲に比例するスケーリングされた DC 信号を生成
LVDT コアのタイプ
フリー コアとガイド付きコアのどちらの LVDT リニア位置センサも、過酷な環境で使用できる各種モデルを取り揃えており、無限の分解能を提供します。 フリーコア LVDT は、通常安価で幅広いレンジに対応するさまざまなサイズがある反面、ガイド付きコアのセンサに比べて取り付けが難しいという問題があります。ガイド付きコア LVDT にはバネ荷重型と空気荷重型の 2 種類があり、取り付けは簡単ですが、フリーコア LVDT より高額で対応するレンジが限られています。これらの相違点に加え、単にフリーコア LVDT の方が適している用途もあれば、ガイド付きコア LVDT の方が適している用途もあります。
フリーコア LVDT
フリーコア LVDT の可動部は、コアと呼ばれる透磁性材料による分離した管状電機子です。コアはコイルの中空ボア内で軸方向に自由に移動し、位置を測定する対象物と機械的に結合します。このボアは通常、コアとボアの間に半径方向の十分なクリアランスが得られるほどの大きさがあり、コイルと物理的に接触しません。そのため、摩擦のない測定が可能で、機械寿命はほぼ無限です。
フリーコア LVDT は汎用性に優れ、非接触式で堅牢であり、適切な材料で構成された場合は過酷な環境で長期にわたる信頼性を提供します。摩擦のない動作により、高度な再現性と分解能が生み出されます。これらの特性に基づいて、LVDT は通常、航空機の下げ翼インジケータ、海中用途、高温蒸気バルブ、発電所など、所有コストや安全性、高い信頼性が最優先されるシステムで使用されています。
フリーコア LVDT のその他の用途:
- 測定対象が基準面または対象物に機械的に結合している場合 (バルブ、油圧シリンダ、アクチュエータ、張力計)
- 4.00 インチ以上の測定レンジ、周波数応答 >10 Hz (振動測定)
- わずかな機械抵抗または機械抵抗なしで測定対象物を移動できる、感受性材料または高度弾力性材料のクリティカルな測定
ガイド付きコア LVDT
一般に寸法計測プローブと呼ばれるバネ荷重型 LVDT には、LVDT またはハーフ ブリッジの非接触誘導型位置センサが組み込まれています。これには、高精度リニア ベアリングで支持されるシャフトに結合されたバネ荷重型の可動アーマチュアが含まれます。一般的な計測プローブの最大計測範囲は ±0.50 mm ~ ±50.0 mm (±0.020 インチ~ ±2.00 インチ) で、分解能はミクロン単位です。電子部品がバネ荷重アセンブリに内蔵されている場合、外部電子部品は必要ありません。そのため、自動化された機械へのセンサの機械的セットアップが簡単になり、コスト効率が向上します。
電子計測プローブは、製造部品の寸法計測に広く使われており、品質保証システムにおいて重要な役割を果たします。これは以下のように、測定対象が機械的に基準面に結合されない用途に適しています。
- 重工業における計測: ハーメチック シールされた計測プローブは、過酷な環境における寸法測定に伴う問題を解決します。
- 高精度計測: 半径方向の遊びと側面荷重の影響を最小限にするため、高精度の計測プローブには、硬化・研磨された非回転プローブ シャフトに密着するライナー ボール ベアリング アセンブリが使われています。これは、0.000006 インチ (0.15 μm) という驚異的な信頼性をもたらします。
- 組み立てラインの品質測定: これらの用途には空気膨張式/引き込みバネ構造の計測プローブが推奨されます。これらのプローブは、測定を行うために膨張/伸張した後に元に戻るため、製品が組み立てラインを移動するときにプローブが損傷しません。
- プレートの平面度測定
- 測定対象物の潜在的な軸断面移動: たとえば、回転部品の真円度測定を行う場合など。
LVDT の電気接続方式
コネクタとリード ワイヤは、LVDT 位置センサのコイルと信号調整電子機器を電気的に接続します。 以下に、開発中のセンサにコネクタとリード ワイヤのどちらを使用すべきか判断するために役立つヒントを示します。
ワイヤ リード
多くの場合、LVDT センサにはリード ワイヤが使われます。その理由は、コネクタほど費用がかからず、使いやすいため、信号調整電子機器に簡単に接続してすぐにベンチトップ試験を実施できるからです。場合によっては、リード ワイヤは温度と圧力の双方において幅広い動作範囲に対応します。たとえば、リード ワイヤは、高圧のシリンダ内液圧用途や使用温度が 400°F を超える用途で使用するセンサの電気接続に適しています。
ただし、リード ワイヤは破損しやすく、それが潜在的な問題となります。接続するときに慎重に扱わないと断線する可能性があります。また、リードを長く引き込むと、取り付けにくく複雑になることがあります。さらにリード ワイヤはノイズの影響を受けやすく、調整機器による信号の解釈に影響を与え、結果としてセンサ出力の精度が下がる場合があります。
コネクタ
コネクタによるセンサ接続は配線に依存せず、取り付け・取り外しが簡単です。センサを取り付け直す場合、リード ワイヤは断線して修理が必要になることがあるのに対し、コネクタは抜き差しすればよいだけです。コネクタをシールド ケーブル アセンブリで指定して、LVDT リニア位置センサと電子機器の間の距離を長くすることもできます。配線は抵抗が低く、外部の干渉源から保護するためのシールドも劣るため、これは過酷な環境でセンサを稼働させなければならない場合に特に重要です。
ケーブル アセンブリ上でワイヤが断線または引っ張られている場合、交換が必要なのはケーブル アセンブリのみで、LVDT センサは正常に動作し続けます。リード ワイヤを強く引っ張って断線や被覆除去が生じると、センサは修理不能になり、代わりのセンサを購入する必要があります。コネクタの使用によってハーメチック シールされた LVDT センサは、IP-68 の侵入保護定格に適合します。ただし、コネクタが場所を取り、狭いスペースや LVDT の小型パッケージ サイズの要件に合わないことがあります。
LVDT の環境的考慮
ちり、ほこり、湿度、噴流の激しい環境や屋外にセンサを設置する場合は、外部媒体の巻線への侵入を確実に防ぐために、ハーメチック シールされた LVDT を推奨します。外部媒体が侵入すると、センサの耐久性や信頼性が低下します。 穏やかな環境や屋内研究所の環境では、ハーメチック シールされていない標準的なトランスデューサを使用すると初期コストを削減できます。
作動油のあるシリンダ内の用途では、「ベント式」 LVDT が適しています。ベント式の LVDT リニア位置センサでは、センサのコイル アセンブリのベントによって LVDT リニア位置センサ内外の圧力が等化されるため、高圧・高温・衝撃・振動の影響を同時に受けても耐えることができます。
放射に対する適度な耐性を持ち、水中・高圧・大気の環境下においても動作する特殊な構成の LVDT もあります。たとえば、センサが海水に直接接触する場合、ある種のステンレス鋼は LVDT の構造に使用できません。海中の環境に耐えるには、海水に対する耐化学性の高い特殊な合金で LVDT ケーシングが作られている必要があります。このような超合金は LVDT アセンブリのすでに高い信頼性をさらに強化するもので、デバイスが海水に完全に接触した状態で最大海深 15,000 フィートで外部から約 7,500 psi の圧力を受けても、LVDT アセンブリが長期耐用年数の要件を満たすことが確認されています。
LVDT の IP 定格
LVDT リニア位置センサの定格は、通常 IP-61 から IP-69 です。LVDT センサはほぼすべての構成において防塵ですが、水侵入保護レベルは構成によって異なります。たとえば、コイルが十分に保護されていないものもあれば、ワニスやエポキシで保護されているものもあります。ハーメチック シールされた LVDT は、センサへの侵入を防ぐために溶接で密閉されています。LVDT 構成の種類別に IP 定格は異なり、製造業者によって異なる場合もあります。
ハーメチック シールされていない LVDT
IP-61 定格
ハーメチック シールされていない LVDT リニア位置センサの外部シーリングは、IEC 規格 IP-61 に適合しています。これらのセンサはほこりの侵入や結露から保護されており、次の用途に適しています。
- ほこりや汚物への暴露が限られている乾燥した環境
- ラボでの試験
- 屋内用途
- 精密計測
- ダイヤル インジケータの交換
- ロボット アクチュエータの位置フィードバック
コイルがエポキシで完全に封止されている場合、ハーメチック シールされていない LVDT 位置センサの定格は IP-64 になり、高湿度環境での使用に適しています。
ハーメチック シールされた LVDT
IP-68 定格
ステンレス鋼だけで構成された、ハーメチック シールされている LVDT では、IEC 規格 IP-68 に準拠してコイル巻線が過酷な環境から密閉されています。これらのセンサは、完全な防塵に加えて、一定の圧力まで水が侵入しない長期的な浸水定格を備えています。
IP-68 定格の LVDT に推奨される用途:
- 屋外の構造モニタ
- ほこり、土、グリース、湿度が存在する環境での使用
- 重工業
- バルブ位置
製造業者によって IP-68 に定格付けされたセンサがすべて同じとは言えませんが、IP-67 定格を超えていることは確かです。IP-68 センサは、金属で構成されるすべての接液部を含めて (コネクタは除く) 溶接で密閉されています。非作動時には、センサ自体を最大 1,000 psi までの水またはその他の液体に浸漬できます。ただし、嵌合プラグに水が入ると短絡が発生するため、浸漬中にセンサを作動させることはできません。
水中 LVDT
IP-68 定格
水中で使用できる LVDT は定格 IP-68 を備えており、適切な Seacon-Branter 嵌合コネクタが使われています。コネクタと嵌合プラグの圧力定格は、最大 5,000 psi 以上です。通常、これらのユニットは、交換や修理のためのユニットへのアクセスに多額の費用がかかるクリティカルな用途での使用において、20 年間の寿命を保つように設計されています。
推奨用途:
- 海水または淡水
- ダム/橋の構造モニタ
- チョーク/クリスマス ツリーのバルブ位置モニタ
- 海中伸び計
- 係留ケーブル
- ROV アクチュエータ/ラッチ位置フィードバック