TE の視点
著者: Jamie Janawitz、VP 兼 CTO、Aerospace, Defense and Marine 部門担当
電動垂直離着陸機 (eVTOL) は今後数年にわたるアーバン モビリティを再構築し、航空機設計に関する伝統な考え方を変革する可能性があります。 飛行機でオヘア国際空港に降りてから、交通渋滞なしでシカゴの中心部まで行けるとしたらどうでしょうか。ユナイテッド航空は、早ければ 2025 年にもバッテリー駆動式の eVTOL によってこれを実現することを予定しています。電気乗用車と特大型ドローンを掛け合わせたような新しいタイプの航空機であり、高級車のような内装になっています。
当初、これらの eVTOL「エア タクシー」はヘリコプターと同様に運用されます。ヘリポートを利用して同様の飛行規定に従うからです。しかし、似ているのはそこまでです。この新しい航空機の設計は、消費者グレードおよび商用グレードの電気自動車における進歩の恩恵を受けています。実際、当面使用される開発中のほとんどのモデルは、窮屈なヘリコプターや小型機というよりも、2 人から 6 人乗りの非常に快適な自動車に近いものです。
eVTOL の開発は EV の開発と同じではありませんし、従来の飛行機の開発とも異なります。「電気自動車」を飛行させるには重量と距離の最適化が必要になります。何かを宙に浮かす場合、少しの重量も無視できるものではありません。遠くまで行こうとするほど、大きなバッテリーが必要になります。大きなバッテリーはそれだけ重くなります。充電時間も重要なポイントです。eVTOL を早く再浮上させることができれば、それだけ収益も上がります。
このような検討も経て、比較的少人数の乗客を収容して短い距離を飛行することに重点を置いた、eVTOL の新しいビジネス モデルが形作られました。したがって、これらの航空機を設計製造する企業は伝統的な航空宇宙のメーカーとは重視する点が異なります。すなわち、モデル固有システムの設計・試験・認定における迅速な反復を推進しています。
今もって十分な信頼性および安全規格が必要な急速なプロセスの中で、EV やエアロスペース環境での使用に対して認証評価を受ける材料と製品の開発において幅広い経験のある TE Connectivity は、価値付加とイノベーションを生み出す eVTOL 開発でお客様と綿密に連携することができます。
eVTOL の一部の要素は他の用途からほぼそのまま移転されています。 たとえば、商用電気自動車の充電コンポーネントとシステムは航空機の用途に比較的容易に適合します。しかし、eVTOL に必要な空中での要件は、ハイウェイでの要件と大きく異なります。
eVTOL は、比較的低い高度で、短時間の飛行が頻繁に求められます。これらの条件では耐久性の極めて高いコンポーネントが必要です。もちろん、どのような車両向けに製造される部品でも、安全性、品質、信頼性は不可欠な属性です。しかし、この航空機は人口密度の高い地域を比較的低い高度で飛行するため、それらの重要性はさらに高まります。したがって、耐久性と信頼性の高い高電圧電源供給システムが必須です。
TE では、電源供給に接続する電気ケーブルおよび光ファイバ ケーブル、航空機の安全性・信頼性・快適性を高める、電源供給システム、電子機器システム、インフォテインメント システムに加えて、配電ユニットおよびパワー開閉コンタクタを提供することでこのニーズに対応しています。さらに、この初期の eVTOL への電源供給に必要な 100 ~ 600 キロワットを処理可能にするため、エアロスペース用途の過酷な条件向けに開発された高電圧コネクタを最適化しています。
エンジニアと共同で eVTOL 設計を最適化することで、一見些末でありながら本質的な差別化を可能にする細部に当社の経験を生かすことができます。たとえば、丸形ケーブルからフラット ケーブルに移行することで、軽量化、熱特性の改善、ケーブルの柔軟性の向上、機体内での占有面積の削減が実現し、旅客の快適性が向上します。
eVTOL を開発している企業は、伝統的な航空機メーカーと比較し、コンポーネント サプライヤとの違う形での提携を求める傾向があります。 通常、eVTOL 開発者はアジャイル設計の原則を取り入れているため、週単位や月単位ではなく日単位で設計の新規の反復を行うことを希望しています。したがって、そのような開発者は市販の既製部品を設計に組み込むことに抵抗がありません。そうすることで、初期製造コストを節約して交換部品に必要な維持費を削減できます。
TE などのメーカーは、航空システムのコンポーネントを設計して組み込んできた長い経験から得たエンジニアリング知識で迅速に対応することで、このニーズに対応することができます。そのような知識によって、安全性を損なわずに開発サイクルを加速させるという点で eVTOL エンジニアをサポートできます。また、商用車や乗用車などの周辺業界向けの部品を開発してきた当社の経験によって、eVTOL メーカーがまったく新しいタイプの車両を推進する新しいシステムを開発する際に、伝統的なエアロスペースの基準にとらわれずに考えられるようにサポートできます。
大型化を迅速に進めて最大限の可能性を引き出すには、eVTOL 業界は一定レベルのコンポーネントの標準化を進める必要があります。 外見上どんなに設計が異なるように見えても、それらは同じ中心的な設計課題を抱えています。サイズおよび重量の最適化、電源供給、安全性、耐久性、信頼性です。
当初、eVTOL は電子コンポーネントを備えたヘリコプターのような状態で飛行することになります。ベテランのパイロットにもなじみのある制御システムにするためです。小型にもなります。サイズと重量によって各車両のコストや収容能力が決まるからです。
しかし、小型から始めることには利点があります。小さな車両での課題を解決することで、収容能力や距離を拡大する前にあらゆることを明確にしておく多くの機会がもたらされます。最初の eVTOL 機を離陸させる上で迅速な開発が重要になるのと同様に、市場での成功を続けるためには将来に目を向けてコンポーネントを設計することも重要になります。
さらに、航空機の製造に使用するコンポーネントを将来大型機体で使用することを想定して設計することができます。現在でも、バッテリー密度は長距離用の大型電気航空機を製造する上で大きな実際上のハードルになっています。
重量とスペースを最小限に抑えながら高電圧を完全かつ確実に処理できるコンポーネントの改善を続けることによって、次世代のバッテリー技術が現れたときに、空港から都心まで飛行する都市タクシーが地域バスや市内高速鉄道のような乗り物に急激に変化するかもしれません。着陸場所とバッテリー充電能力を除き、比較的限定的かつ現実的なインフラストラクチャ要件によって、ジェットエンジンが登場して以来見たことのない形で人間の移動手段の革命がもたらされる可能性があります。
eVTOL が都市と郊外との持続可能で新しい接続方法をもたらすことで、アーバン モビリティについての考え方が変わるかもしれません。 市場に受け入れられて大型化できる程度まで、持続可能性の高い商用航空旅行へと進める第一歩にもなります。安全性と快適性の新しい規格を策定する、考え抜かれた設計は、この新しいタイプの車両を軌道に乗せる鍵になります。これはこの先長く eVTOL を運用する上でも重要です。TE は革新に寄り添い続けます。
Jamie Janawitz は、電気、光学、RF 分野の次世代の電力および信号コネクティビティ ソリューションの開発と商業化を専門とするグローバル チームを率いています。専門: 他社を凌ぐ価値を提供する製品ロードマップの実行と加速。用途: 宇宙機、航空機、防衛 (陸上および海上)。リーン製品開発や、飛行機旅行と宇宙旅行の未来のことは Jamie にお尋ねください。
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