LEO 衛星の COTS コンポーネント

トレンド

LEO 衛星向けの商用オフザシェルフ ソリューション

1 回限りの専用 GEO 衛星から大量生産の LEO 衛星によるコンステレーションへの移行に伴い、設計部門やメーカーには生産コストの削減と日程の短縮を求める圧力をかかっています。商用オフザシェルフ (COTS) ソリューションと COTS+ ソリューションにより、衛星メーカーは入手が容易で信頼性の高いコンポーネントを信頼できる供給元から入手できます。

GEO から LEO へ進化する衛星製造

比較的最近まで、ほとんどの衛星は静止赤道軌道 (GEO) 向けまたは静止軌道向けに設計され、製造されてきました。このような衛星は赤道上空約 36,000 km に位置し、地球の自転と同じ速度で同じ方向に周回しています。このように位置が固定されているにより、衛星通信の一貫性を保持して、地球上の特定の地域を通信範囲とすることができます。GEO 衛星の重量は 1 ~ 5 トン、コストは 1 ~ 4 億ドル、設計と製造に要する期間は 3 ~ 5 年です。多くの場合、このような衛星は特定の目的に向けて製造されることから、その 25 ~ 30 年の機能寿命にわたって宇宙の過酷な環境条件に耐えられるカスタム ソリューションが必要です。多大な時間とコストを要することから、GEO 衛星の年間打ち上げ数は 1 〜 3 機にとどまります。

 

現在、ほとんどの衛星製造では、地球上空 160 〜 1,900 km に位置する低軌道 (LEO) 衛星に重点が置かれています。LEO 衛星は 1 か所に固定されず、地球を継続的に周回しています。地球全体を通信可能範囲とするには、数百機の LEO 衛星で構成するコンステレーションが必要になることも考えられます。

 

LEO 衛星には、10 cm の立方体形状の筐体に消費者グレードのコンピュータ ハードウェアを収め、重量を 100 kg 程度として短時間で組み立てられる小型デバイスもあれば、主に COTS コンポーネントを使用した専用の大型衛星もあります。大型で広く使用される LEO 衛星の重量は 100 〜 1,000 kg です。その平均的なコストは 50 万ドルで、設計から完成までの所要期間は 18 か月ほどです。このはるかに迅速な生産プロセスと生産日程は、GEO 衛星と比較して打ち上げコストが低いことと相まって、LEO 衛星の増加に拍車をかけており、ほぼ毎日どこかで LEO 衛星が打ち上げられています。

LEO 衛星用途の拡大

LEO 衛星は遅延が少なく、高帯域幅が得られることから、地上との信号の送受信に理想的です。その結果、LEO 衛星の用途は増加の一途をたどっています。現在、これらの衛星は主に次のようなグローバル コネクティビティを実現し、また地球上のさまざまな現象を観測します。

 

グローバル コネクティビティ

  • 地上の電気通信インフラストラクチャにアクセスできない遠隔地の人々にブロードバンド インターネット コネクティビティを提供します。これにより、飛行中の航空機からインターネットに接続し、客室娯楽サービスなどの乗客乗務員向けのサービスを提供できます。
  • 住居、商業、産業、ミリタリの各用途で「スマート」デバイス、家電、機器を相互接続することにより、モノのインターネット (IoT) を実現します。

観測とデータ収集

  • 気象測定値、地表面温度、海の波高、湿度、風速、花粉数などの最新の環境条件 を監視し、そのデータを使用して環境災害の影響を追跡します。
  • 低コストの衛星データにアクセスした農業従事者が最適な収穫時期と作付時期を判断できるようにするほか、作物の成長に伴う最新情報をリアルタイムで提供することで、農業生産の向上を図ります。 
  • トラック、船舶、飛行機などを追跡して到着時間を推定し、効率的な経路を特定することにより、陸上、海上、空路の輸送を最適化します。 

 

急速に実用化へ向かっている宇宙間経済にも LEO 衛星が適しています。この構想では、地球上の対象にデータを送信するのではなく、宇宙で衛星から他の対象にデータを送信します。軌道移行、燃料ステーション、データセンターなどをサポートするには、この手法がきわめて重要です。

 

通信、イメージング、LEO 衛星用途などの拡大に伴い、地球低軌道を周回する衛星による大規模なネットワークを通じた広い通信可能範囲を求める声も大きくなっています。低コストな多数の LEO 衛星に対する需要に応えるために、設計部門とメーカーでは COTS ソリューションの多用が必要になると考えられます。

COTS コンポーネントによる
効率の向上とコストの削減

COTS コンポーネントは、最終製品の製造や組み立てにそのまま使用できる既製の製品です。COTS+ とは、特定用途への適性や宇宙の過酷な環境に対する耐性が得られるように軽微な改造を施した既製の製品を指します。COTS+ コンポーネントには、LEO の要求に対応できるように補足の試験や物理的なアップグレードが適用されます。これらの製品は、宇宙環境で正常に動作することが検証済みです。

 

設計部門やメーカーには、低コストのソリューションを目指す中で、性能や耐久性を損なわないことが求められます。LEO 衛星は、激しい温度変化と振動 (特に打ち上げ時の振動) に耐えられる堅牢性を備えている必要があります。ほとんどの場合、COTS コンポーネントや COTS+ コンポーネントを使用した LEO 衛星であっても、ミッションクリティカルな構成要素には、厳格な宇宙グレード規格である VITA と SOSA に準拠して製造されたコンポーネントを使用する必要があります。

COTS コンポーネントの
需要促進要因

衛星の数

  • 数十機から数百機の LEO 衛星で構成するコンステレーションが大量のデータを収集し、世界中の顧客に信頼できるサービスを提供します。たとえば、大手衛星インターネット サービス プロバイダの中には、週単位で数十機の LEO 衛星を製造して打ち上げている企業もあり、最終的に数万機の衛星が軌道を周回するようになる見込みです。

短寿命

  • LEO 衛星それぞれの寿命は 3 ~ 5 年にすぎません。宇宙での太陽輻射や原子状酸素浸食など、きわめて過酷な深宇宙環境下でハードウェアの寿命を制限すると考えられる要因を設計部門が考慮する必要はありません。したがって、高度に堅牢な宇宙グレード ハードウェアの必要性はそれほど重要ではありません。

継続的な改善

  • LEO 衛星は、既存機能の改善や新しい機能の追加を目的として、段階的なソフトウェア更新と技術の漸進的な変更によって進化するように設計されています。現在のニーズに応えると同時に今後の技術的進歩を想定した最新の技術を使用して新しい衛星を設計製造できます。

GEO 衛星との統合

  • 少ない遅延と高度な処理能力の両方が必要な状況 (ストリーミング ビデオ サービスなど) では、LEO 衛星と既存の GEO 衛星との連携によって優れたコネクティビティを提供できます。

業界の市場動向

  • 衛星業界の成長と成熟に伴い、衛星企業間の合併や提携が増加しています。衛星企業 2 社の製品で共通の既製コンポーネントを使用していると、両社の製品をきわめてシームレスに統合できます。

手頃な価格と顧客満足度

  • COTS 部品を使用することで、新しい衛星を短期間で製造して生産コストを削減できます。その結果、LEO 衛星に依存しているインターネット サービス プロバイダや電話サービス プロバイダにとっては、より多くの人々にサービスを低価格で提供できる機会となります。

 

 

LEO 衛星用途向けの既製ソリューション

TE Connectivity (TE) は、厳格な LEO 衛星用途に最適なワイヤ、ケーブル、リレー、コンタクタ、センサ、コネクタの幅広い宇宙対応ポートフォリオを提供します。このような製品として次の既製ソリューションがあります。

  • STRADA Whisper 高速バックプレーン コネクタは、高性能で高帯域幅のシステム向けに設計されています。その革新的な設計によって最大 112 Gbps の速度でデータを転送します。これにより、システムのアップグレードが必要になっても、コストを要するバックプレーンやミッドプレーンの再設計を伴わずにシステムを効率的にアップグレードできます。
  • Micro D バックシェルと D-Sub ミニチュア バックシェルは、品質と手頃な値段が重要視される宇宙船用途で求められる機能、材料、性能の要求に応えます。
  • 光ファイバ アセンブリは、サイズ、重量、電力 (SWaP) を低減するとともに、高密度実装の要件と電磁干渉 (EMI) 耐性の要件に適合して、高速通信、データ、ペイロード システム構成を全面的にサポートします。
  • アクティブ光ケーブル アセンブリは、従来のパッシブ銅線ソリューションや新しいアクティブ銅線 (ACC/AEC) ソリューションと比較して、ケーブルの柔軟性が高く、広いサービス範囲を提供します。高性能コンピューティング、データ センター、ネットワーク相互接続の各用途に対応します。
  • 369 小型サイズ形状コネクタは、信頼性とコスト効率に優れ、過酷な環境用途に適した軽量でコンパクトなコネクタです。

 

TE は製品を提供するだけでなく、その技術陣は経験と専門知識が豊富で、お客様が計画している LEO 衛星設計に最適な COTS コンポーネントや COTS+ ソリューションを探し出すお手伝いができます。

TE へのお問い合わせ

新たなコネクティビティ プロジェクトについてお困りの場合は、ぜひ TE にお問い合わせください。当社技術陣が解決策をご提案いたします。

主なポイント

  • 1 回限りの専用 GEO 衛星から大量生産の LEO 衛星によるコンステレーションへの進化に伴い、生産コストの削減と日程の短縮に効果的な商用オフザシェルフ (COTS) コンポーネントと COTS+ コンポーネントの必要性が高くなっています。
  • 地球上空 160 〜 1,900 km に位置する LEO 衛星は高帯域と低遅延を提供し、グローバル コネクティビティを実現するほか、地球上のさまざまな現象を観測します。
  • 低コストな LEO 衛星に対する需要に応えるために、設計部門とメーカーは COTS 部品をますます利用するようになっています。
  • TE Connectivity (TE) は、厳格な LEO 衛星用途に最適で、入手容易性と信頼性に優れた既製ソリューションを幅広く取り揃えています。