データ センターの制御室で生成 AI システムを実行する IT エンジニア。

データ センターの性能に関する TE の視点

より持続可能なデータ センター (Mike - 人工

著者: Mike Tryson、VP 兼 CTO、Data and Devices 部門

生成人工知能 (AI) が台頭してきたことで、 データ センターは世界の技術インフラストラクチャにおいてますます重要な部分となり、電力の消費量も増え続けています。

 

IEA によると、データセンターは2022年の世界の電力需要の 1.3% を占めると推測されています。クラウドで処理されるデータと計算の量が増加し続けているため、電力需要が急速に増加し続けることは誰の目にも明らかです。これは、2026年までに全世界の電力成長率が年平均 3% を超えることがすでに見込まれている世界にとって課題となります。消費者需要の増大、電気自動車の利用拡大、世界的な気候変動による冷暖房の増加、スマートシティ、産業企業の電動化を背景とした電力をめぐる競争が激化しているため、データセンターの効率性を高めて、その潜在能力を最大限に引き出す必要があります。

 

幸いなことに、エンジニアはすでにデータ センターの持続可能性を高めるイノベーションを生み出しています。データ量が増大し、それらの情報の移動速度が速まっているため、現在のデータ センターの内部に使用されているケーブル、コネクタ、放熱機器を一見小規模に改善するだけでも、それらの施設が消費するエネルギー量に大きな影響を及ぼす可能性があります。特に、最新のデータ センターの数百万から数十億のインターコネクションで、その効果が倍増することを考えればなおさらです。 

すべての電子を価値あるものに

電力がある場所から別の場所に流れるときには、必ず抵抗損失の問題を解決する必要があります。 電力の移動距離が長くなればなるほど、対処しなければならない抵抗が大きくなり、最終地点に到達するために使用できる電力量が減少します。

 

さらに、電力の「浪費」によって熱が発生します。これによりデータ センターを冷却するために追加のエネルギーが必要となり、冷却も設計仕様の範囲内で稼働することになります。1 メートルのケーブルで失われる電力量に、100 万平方メートルのデータ センターのケーブルのメートル数を掛け合わせると、必然的に非常に大きな数値が導き出されます。これらの抵抗損失を低減すれば、最終的にデータ センターが購入する電力のより多くを機器への供給にまわせるようになります。無駄な電力が減るということは、全体的な総消費量が減るということです。

 

すでにデータ センターでは、高電圧で電力を伝送することによって抵抗損失を低減することに成功しています。これにより、電力の単位ごとに必要な電流が減り、結果として電力の移動中に発生する抵抗が減少します。業界の大半は 48 V 配電システムに移行しており、今後データ センターではさらなる削減を目指して、より高電圧の配電システムに期待が寄せられる可能性があります。大容量の電流に対応できる高ゲージ ケーブルは、抵抗損失も低減できます。

 

ケーブルおよびデバイス間のどの接続でも抵抗損失が生じる可能性があります。低抵抗のブスバーとコネクタは、接続間の損失を低減するのに役立ちます。個々のコネクタ規模で見ると削減量は少なく見えても、大規模なデータ センターで必要とされる多数の接続全体を見ると、その影響はあっという間に積み重なっていきます。

生成 AI アーキテクチャを運用するためにデータ センターのラックをプログラミングする AI エンジニア。

未来のデータ センター アーキテクチャの設計

効率的にデータを移動する

AI やデータセンター、またそれらによって支援される作業において、データをより高速で移動できることは重要です。 大量のデータの移動速度が速くなるにつれて、ケーブル終端の接続でその容量を処理することが難しくなります。パッシブな接続では、ケーブルからデバイスにデータを移動させる際に追加の電力を使用することはありませんが、信号の損失や低下を最小限に抑えながら、指定された速度でデータを移動できる距離には限界があります。アクティブな接続では、より多くのデータをより遠くへ、より高速で移動できますが、その代償として相当の電力を消費します。

 

TE Connectivity では、パッシブなインターコネクションの機能を最大限に引き出すためにケーブルとコネクタの改善に取り組んでいます。信号の完全性を維持するためにアクティブなインターコネクションが必要になるまでのケーブルが長ければ長いほど、クラウドや AI デバイス クラスタに優れたサービスを提供できます。プリント基板の代わりに、外部ケーブルを使用するソリューションや外部ケーブルと内部ケーブルを組み合わせて使用するソリューションでは、電力とデータのレイテンシをさらに短縮できます。これらの要素を適切に組み合わせることで、データ センターは高速を維持しながらパッシブ ケーブルを使用できるようになり、エネルギー消費を削減できます。

 

また、コネクタは今後の持続可能性への取り組みを支援するうえでも重要な戦略的役割を果たします。標準コネクタを中心として設計をモジュール化できるため、より高速で帯域幅の高いデータ転送を実現するイノベーションの出現に応じて、データ センターで簡単に機器をアップグレードできます。対照的に、固定配線コネクタレスソリューションでは、機能や効率を改善できる仕方で古いデバイスをアップグレードすることがはるかに困難になります。簡単にアップグレードできる手段がないと、無駄が増えて、より効率的な電子機器や構成を利用できるようになったときに、それを活用するうえで求められるデータ センターの柔軟性が低下します。コネクタは、大規模なデータ センターにおいて循環型エコシステムをサポートするうえで重要な要素です。

熱を低減する

データ センター内のどのデバイスからも熱が発生します。  動作温度が上昇すると、製品やコンポーネントの信頼性が低下し、ダウンタイムが生じる可能性も高まります。

 

速度と距離が銅線配線の限界を超えると、光ケーブルへの移行において熱に関する懸念がさらに高まります。光学コンポーネントは、パッシブな銅線ケーブルやコネクタよりも動作温度の影響をはるかに大きく受けます。

 

抵抗損失に対処する際に電子が持続可能性の向上につながるのと同様に、熱を扱う際にはすべての熱単位が重要になります。電力の「浪費」によって熱負荷が増加すると、データ センターは機器を冷却するためにファンや空調システムにますます依存せざるを得なくなり、さらに多くのエネルギーが必要になります。つまり、データ センターはインフラストラクチャのあらゆる部分を念入りに確認し、熱を低減して、エネルギーを節約する機会を見つけ出す必要があります。

 

放熱器などの効率的な熱管理ソリューションは、必要不可欠なツールです。強制的な空冷または液体冷却によって冷却効率を最大限に高めるには、高温の電気コンポーネントと冷却面の間の接触抵抗を最小限に抑える必要があります。特に、冷却面が完全に平坦でない場合には、その傾向が顕著になります。表面の間にエア ギャップがあると、マイクロ インタフェース レベルでも熱伝達の効率が低下します。放熱器の接続に適合する TE Connectivity のプレート設計は、ギャップ パッドやサーマル グリースなどの一般的なソリューションと比較して、熱伝達が最大で 2 倍になります。デバイスで使用される電力が増加すると、デバイスから発生する熱はほぼ指数関数的に増加するため、接続の近接性は持続可能性にとって重要です。

AI イノベーションを実現するコネクティビティ ソリューションの設計

人工知能 (AI) は、人々の仕事、イノベーション、交流の仕方を変え始めています。 

AI イノベーションを実現するコネクティビティ ソリューションの設計

人工知能 (AI) は、人々の仕事、イノベーション、交流の仕方を変え始めています。 

適切な対応

データ センターの作業者は、産業の未来を確かなものとするために電力消費に対処する必要があることを理解しています。 特に AI 技術が発展し続けているため、なおさらその必要があります。TEは、製品のイノベーションを通じて、お客様がこの目標を達成できるようにサポートしています。また、エンジニアとして当然のこととして、TE は支援を行います。ソリューションの一端を担うことは、エンジニアのアイデンティティです。2024 TE Connectivity Industrial Technology Index によると、エンジニアの 87% が気候変動ソリューションを支援することは個人的に重要であると回答しています。
データ センターのイノベーションによって抵抗や熱を低減する効果自体は小さなものであっても、大規模に導入すれば影響は倍増します。こういった取り組みは、データ センター技術と、それに依存する産業およびアプリケーションの成長を維持するうえで欠かすことができません。 

著者について

Mike Tryson, VP & CTO, TE Data & Devices

Mike Tryson

Mike Tryson は、TE の Data and Devices 部門で CTO 兼 VP を務めています。この役職での同氏は、Data and Devices の設計チームと戦略を統率し、世界中のお客様と協力してインターコネクションのソリューションと構成を開発しています。同氏は、25 年間のテクノロジー リーダーシップの経験を携え、2011 年に TE に入社しました。データ通信市場に技術イノベーションをもたらした功績があります。