ウィンド ファームの再生可能エネルギー技術に取り組むエンジニア。

TE の視点

再生可能エネルギーの未来を推進

著者: Thomas Schoepf 博士、VP 兼 CTO、エナジー部門

現在、気候変動に関する議論において、太陽光発電や風力発電といった再生可能エネルギー源が注目を集めています。  かつてはその普及が疑問視され、その外観から拒絶さえされていた太陽光発電や風力発電が、化石燃料に代わる代替エネルギーとして主流となりつつあります。

 

過去50 年間の急速な気候変動により、インフラに大規模な被害が発生したテキサス州での大寒波やオーストラリア全土で発生した山火事など、気象災害が 5 倍に増加しました。このような異常気象が身近に起きていることから、世界中の組織、政府機関、およびコミュニティは、持続可能なソリューションを見つけることに重点的に取り組んでいます。

実際に、世界各国の政府機関は、炭素排出量を減らすための政策決定のスピードを速めています。このスピードの変化を推進している要素は、革新的なクリーン技術です。それこそが、再生可能エネルギーの実現可能性を高めている重要な推進力となっています。エンジニアの舞台裏での取り組みが、信頼性と費用対効果に優れた、地球に優しい代替エネルギーを見出すために適切なテクノロジーをもたらします。

太陽光発電の未来

現在、大規模太陽光発電所は、500 MWを超える電力を発電できるよう日常的に進歩を続けており、化石燃料発電所 (石炭、ガスなど) に代わる実行可能な代替手段となっています。 太陽光発電所は 3,000 エーカーの土地に広がっている場合もあり、前提条件として十分な土地面積と太陽光が必要になるため、北米、中東、オーストラリアといった地域で広く普及してきています。太陽光発電は風力発電に比べて迅速にスケールアップできるため、投資リスクが低くなります。実際、国際エネルギー機関によると、太陽光発電による全体的な発電コストが現時点で最も低くなっており、設置に適した地域において満足度の高い投資利益率を実現しています。

 

大規模太陽光発電所では、数百の接続部と数千ヤードの配線を監視し、メンテナンスする必要があります。TE は太陽光発電所の再設計を行うことで、設置コストを最大 40% 削減しています。そして、このコスト削減が決定要因となり、多くのプロジェクトを実現させています。また、当社のエンジニアは、必要となる配線本数を減らすことで、従来の太陽光発電所の建設を簡素化しています。 

 

TE のソリューションは、カスタマイズ可能なソーラー用トランク ソリューション (CTS) として知られる存在となりました。これは、従来の太陽光設置方法に代わるコスト効率の高いソリューションであり、メイン州からカリフォルニア州まで、米国全土の大規模太陽光発電所で導入されています。CTS を使用した建設により、接続箱の集約が可能になり、インバータ パッドにまとめて送電することができるため、太陽光発電所の安全性と効率を高め、トータルコストを削減できます。その結果、当社のお客様は運用の効率化と共に、資材、設置、およびメンテナンスにかかるコストを数百万ドルも削減しています。 

 

大規模の太陽光発電所の建設において業界をリードする設計・調達・建設 (EPC) 企業  Black & Veatch は、米国中西部にある太陽光発電所にて通電したまま、CTS システムを設置する合理的なアプローチを実施しました。Renewables 部門のプロジェクト マネージャーである Ben Anderson 氏は、次のように述べています。「当社は現場での作業時間を短縮できたほか、従来の接続箱を上回る信頼性の高さにより、お客様にも大変喜んでいただいております。」

ソーラー ファーム アーキテクチャ向けのトランク ソリューション

海上風による風力発電のメリット

ヨーロッパなど、人口密度が高く、十分な土地面積がなく、大規模太陽光発電所の実現が難しい地域においては、風力発電が普及してきています。  現在、電力会社は大規模なタービンや発電所を建設でき、膨大な量の電力を発電できる洋上風力に着目しています。また、海上の風速は陸上よりも安定して得られるため、洋上風力はより信頼性の高いエネルギー源となります。一方で、陸上風力については、タービンの大型化に伴い、一般市民からの反感が増し、地域の規制への対応が複雑になるため、需要は減少してきました。たとえば、ドイツの場合、タービンは最も近くにある家から、10 倍の高さを確保して設置する必要があります。

 

世界中に広がっている洋上風力発電所の管理にも課題があります。タービンと接続部は、海水による腐食や深刻化する嵐などによる絶え間ない負荷に耐えながら、信頼性の高い性能を発揮する必要があります。また、ヘリコプターを使って作業員や機器を派遣もしくは輸送するのにも莫大な費用がかかります。このような課題により、メンテナンスの必要性に迅速かつ確実に対応しながら、できる限りその頻度を少なくすることの重要性が高まっています。事前に組み立てて対応することができれば、さらに理想的です。

 

当社はこのような課題に対応し、コストを最小限に抑えることができるように、施工が容易で合理化され、なおかつ強靱な接続システムを開発しました。たとえば、洋上風力タービンに高電圧開閉器用接続材を設置するのに必要な作業員は 1 人のみです。このような効率化が、コストと信頼性の両方から、従来のエネルギー源と比べて風力発電の競争力を高めており、出資者へ風力発電への移行を促す動機づけとなっています。その間にも、当社は発電容量の増大と、浮体式風力発電所のような再生可能エネルギーのさらなる形態にも対応するソリューションを開発すべく、たゆみない取り組みを続けております。

タービンのサイズと容量の推移を示すチャート

画像提供: 国際エネルギー機関、World Energy Outlook 2019、www.iea.org/weo、2022 年 2 月

蓄電池による電力の貯蔵

電気エネルギーは効率性に優れ、輸送や変換が簡単のため、依然として最も使われているエネルギー形態です。 電気エネルギーは発電され次第、すぐに使用するという方法が常に最も効率的で適している選択肢ではありますが、現実的でない場合もあります。特に再生可能エネルギーにおいては、太陽光や風が 24 時間いつでも生成されるわけではないため、電力の貯蔵は重要です。蓄電をすることで、信頼性の高い電力を継続して消費者に供給できるようになります。

 

蓄電池は、再生可能エネルギーの難問の解決に重要であり、2 つの主要な目的を果たします。

 

1.電力網または周波数の安定化: 電力網にさまざまな電源や負荷の電力が加えられることによって出力変動が発生する可能性がありますが、短期的に発電できる電力を確保することで出力変動を抑制することできます。電力安定化に向けた技術は進化し続けています。たとえば、TE は1つのソリューションとしてマイクログリッドを手掛ける会社との協業に積極的に取り組んでいます。

 

2.発電量が少ないときの補完: 太陽が出ていないときや風が吹いていないときでも、蓄電池に貯蔵した電気が電力供給を安定化させ、継続して電力を供給可能にします。

 

大規模太陽光発電所は電力の貯蔵も併せて検討していますが、この技術の重要性は以前よりはるかに高まっています。今後 5年から10年の間に、世界規模で再生可能エネルギーの生産が増大し、それに伴い、蓄電池の必要性も高まるでしょう。バッテリーの製造コストがさらに削減され、大規模な蓄電も現在よりも低コストで行えるようになることが予想されます。

デジタルへの移行による電力網管理の強化

再生可能エネルギーは従来よりも予知の難しい電源ですが、その数は増え続けており、現在の電力網は対応を迫られています。 それと同時に、モビリティ (電気自動車)、照明、調理、暖房、冷房など、私たちの日々のニーズを満たすうえで電力が果たす中心的な役割は、いっそう大きくなっています。これにより、デジタル技術の果たす役割もますます重要なものとなり、電力網や配電網の重要な接続部においてより多くのセンサが必要になっています。TE の接続材料に、センサ技術が組み込まれたり、後付けされている理由となります。

 

気候変動へ対処することへの関心は世界的に高まる一方であり、それに伴い、再生可能エネルギーに対する関心も高まりつつあります。TEは、現在および将来において、炭素排出量の少ないエネルギー源へのスムーズな移行を促進するため、欠かせないイノベーションの提供に向けて尽力しています。

著者について

Dr. Thomas Schoepf, VP & CTO, TE Energy

Thomas J. Schoepf 博士

Thomas J. Schoepf 博士は、TE の グローバル エナジー 事業のバイスプレジデント兼最高技術責任者です。持続可能なエネルギー ネットワーク向けコネクティビティ ソリューションのエンドツーエンド イノベーションとデジタル トランスフォーメーションを担当するチームを率いています。自動車、自動化、および電力管理業界における 25 年を超える国際的なエンジニアリングとリーダーシップの経験を有し、信頼性、障害検知、安全性、センサ ネットワーク、マイクロ グリッドを含む幅広い技術開発を主導してきました。