産業用ロボットは、何十年も前から産業機器の業界に根付いておりますが、技術革新によってモノづくりの自動化の新たな波が押し寄せています。 コボットと呼ばれる協働ロボットや協働ロボットサイズの小型ロボットの誕生は、産業用ロボットを今まで費用面で導入検討していない企業やその必要がないと考えていた企業に向けて、新たなレベルの効率性と生産性をもたらしつつあります。
協働ロボットは、従来の産業用ロボットよりも小型で安価、かつプログラミングが容易であり、柔軟性に優れています。最新の協働ロボットは、必要に応じて新しい作業を迅速に割り当てたり、工場や倉庫の別の場所に移動させたりすることができます。また、人と一緒に安全に作業できるように設計されているため、危険な作業や反復作業に適し、極めて高い精度が要求される作業で、人の作業を補助することもできます。
したがって、このような協働ロボットが、ロボット産業で最も急成長している分野の1つであることは、驚くことではありません。協働ロボットの世界出荷台数は、2021年の1万台 [1] から、2026年には年間4万7000台に達すると予想されており、この成長率は産業用ロボットの予測成長率 [2] を上回っています。
協働ロボットの設計者がこの需要に対応できるように、TE Connectivity(以下TE)はファクトリーオートメーションの未来を形作る主要なトレンドにフォーカスしています。それは、フレキシビリティの向上、トータルコストの削減、安全性の強化、と耐久性の向上です。
何十年も同じ作業を繰り返し行うように設計されている産業用ロボットとは異なり、協働ロボットは、様々な作業に対応できなければなりません。 例えば、対象物を拾い上げ、特定の位置まで搬送する単純なピック&プレース作業から、従来、人が作業しているような、より高い精度が要求されるマシンテンディング作業へと簡単に移行できる協働ロボットが今後必要されると考えております。
協働ロボット設計者の課題は、様々な作業に必要な動作範囲を可動するアームを低コストで設計開発することです。それぞれの動作に必要なモータ、センサ、ケーブル、コネクタなどを別々に用意する必要があり、コストがかさみます。そのため、協働ロボットのメーカーは、フレキシブルロボットの標準的な6軸の装備を採用することにしました。この構成は人の腕の動作範囲を再現しているので、ほとんどの共同作業に適しています。
しかし設計者は、この標準装備の中で、耐久性、感度、コストのバランスを考慮しながら、内部部品を選択選定する必要があります。TEでは、協働ロボットをより多くのユーザーに使っていただくために、既存の技術的な選択肢に限定されない案をご提案できます。
定義上、協働ロボットは人と協力して作業するように設計されています。 安全柵なしで設置することができ、設置コストが抑えられると共に工場や倉庫フロアの設置面積も小さくできます。しかし、この構成では、近くにいる作業者を保護するために、他の安全機能が必要になります。
トルク センサの進歩によって、協働ロボットの安全性と信頼性を向上させました。トルク センサは、協働ロボットアームの各軸に設置され、軸モータとギアボックス内の機械的ひずみを測定します。トルクを特定の閾値未満に保つように設定でき、作業者にケガをさせる前に、あるいは協働ロボットのアーム自体が破損する前に自動的に停止します。
協働ロボットの導入が増え続けることで、近接センサやアブソリュートポジショニングセンサなどの他の安全機能の向上が更に進むことが期待されます。各種の光センサおよび圧力センサを使用することにより、工場のオーナーは協働ロボットの周りに目には見えないフェンスを建てることができます。すなわち、人が作業場に立ち入ると装置が速度を落とすか、または直ちに停止するように設計できるということです。
ダウンタイムとメンテナンス費用の削減は、協働ロボットの運用コスト面で極めて重要です。協働ロボットは通常、過酷な環境で動作するため、電子部品と可動部品にとっては、難題の1つに挙がります。 それは、塵埃、湿気、油分、熱、振動、電磁干渉は、工場と倉庫で共通する要素です。
そのため、TEは、これらの過酷な環境に特化した位置センサや角度センサなどのコンポーネントを設計しています。しかし、協働ロボットの設計者は信頼性が極めて重要なもう 1 つの領域を見落としがちです。すなわち、ケーブルとコネクタです。
センサやモータなどの軸となる部品のケーブルとコネクタは、多くの場合、協働ロボットのアーム筐体内部に格納されます。このような筐体保護があっても、アームが繰り返し作業を行う際に、不要な動作をせずに、各アームの連結が必要とする動作範囲を実現できるよう、産業用途向けに設計された産業用ケーブルアセンブリを使用する必要があります。
アーム先端のツールやセンシングの変動に対応しなければならない場合、接続性はさらに難しくなります。作業を切り替えるには、グリッパー、センサ、カメラ、ライトなど、協働ロボットのアームの先端に一連の新しいツールが必要になります。これらの各コンポーネントには、協働ロボットアームの筐体保護の外側にある電源とデータ接続を必要とします。
適合性は協働ロボットの大きなメリットの 1 つなので、当社は、設計者が機能性を保ちながらケーブルとコネクタの複雑さを軽減できるようにすることに重点を置いています。たとえば、シングル ペア イーサネット (SPE) のように、電力とデータの接続を 1本のケーブルに組み込むソリューションに取り組んでいます。この1本のケーブルは、アーム先端のあらゆる周辺機器に十分な電力とデータ転送速度を提供します。
協働ロボットの台頭は、ほんの数年前は実用的でも手頃な価格でもなかった環境に対し、新たなレベルの自動化をすでにもたらしつつあります。 協働ロボットの活躍する作業が増え続けることで、製造業者の生産プロセスを最適化し、効率と柔軟性を大幅に向上させます。
製造現場がモジュール化され、セルを中心に稼働し、それぞれが個別作業やカスタムプロセスを柔軟に切り替えられるようになると考えています。また、ワイヤレス接続の進歩によって、施設のオーナーが、これらの各半自律セルの性能を監視・分析しやすくなります。同時に、AI と機械学習が進化して協働ロボットによる新しい作業の学習が加速するでしょう。
このようなファクトリ オートメーションの進歩によって、速度、効率、およびカスタマイズに対する需要の高まりにメーカーが対応しやすくなります。同時に、慢性的な労働力不足など、その他の課題の解決にも繋がります。半自律型生産から完全自律型生産への進展には何年もかかりますが、協働ロボットをシームレスなコネクティビティと先進的なインテリジェンスに組み合わせることは、そこへ導くロードマップになります。
Alex Megej は、TE Connectivity のインダストリアル 事業部のバイス・プレジデント兼最高技術責任者を務めています。自動化、ロボット、ライティング、電気自動車充電など、一連のソリューションのイノベーション、投資、および開発を担当しています。2019 年に TE に入社する前は、教育機関や科学機関からスタートアップ、中規模企業、多国籍企業に至る複数の業界や組織で活躍していました。センサ システム、マイクロ波電子工学、半導体の専門知識から、刊行書籍や40 編以上の学術論文を表しています。複数の特許や特許出願でも名前が挙げられています。ダルムシュタット工科大学から工学修士号と博士号を取得し、スイス・ローザンヌの IMD (国際経営開発研究所) で経営プログラムを修了しています。IEEE (米国電気電子工学会) の上級会員です。
エグゼクティブの見解: 技術イノベーションに関するその他の事例
[1] https://www.abiresearch.com/press/more-than-47000-collaborative-robots-shipped-to-warehouses-by-2026-and-37-other-technology-stats-you-need-to-know/
[2] https://www.cobottrends.com/why-component-makers-should-target-cobots/