堅牢なミリタリ コンピューティング: 電子戦で優位に立つ方法
堅牢なコンピューティング ソリューションの鍵となるのは、過酷な環境下でも技術が持つ性能を発揮できるようにケーブル、ワイヤ、コネクタを強化し、保護することです
堅牢なコンピューティング ソリューションと聞くと、ミリタリ グレードのノートパソコンや破壊されにくいケースに入ったスマートフォンを思い浮かべる人が多いのではないでしょうか。 丈夫で強化された外装も重要ですが、堅牢なコンピューティングの鍵となるのは、極端な条件下でも技術が持つ要素が確実に予測どおりに動作するように、ケーブル、ワイヤ、コネクタなどの内部を強化し、保護することにあります。
堅牢なコンピュータとは
堅牢なコンピューティングとは、過酷な環境下でも確実に機能するように設計された埋め込み型コンピュータ システムを指します。電子戦という分野で考えると、「堅牢」の定義は使用する場所や達成すべきことに応じて異なります。たとえば、砂漠の環境で兵士のバックパックに入れられるデバイスの要件と、宇宙空間を航行する無人航空機のシステムの要件は、まったく異なります。どちらの場合でも、意図したとおりに動作しなければ深刻な結果を招くでしょう。そのため、ミリタリ コンピュータ システムはすべて、天候、極端な温度、振動、強い衝撃や衝突に対する耐性を持ち、放射線、化学物質、その他の汚染物質への曝露にも耐えられるように設計および構築されている必要があります。環境に適したソリューションを選択することが重要です。
いくつかの例を以下に示します。
- 地上での使用
現地で使用するために、堅牢なコンピュータ サーバを空中投下します。そのため、衝撃に耐え、極端な温度に耐え、ほこりや湿気などの潜在的な脅威にも耐え、データを安全に保護できる必要があります。 - 空中での使用
ミリタリ航空機は、砂漠のような暑い地上から氷点下の高高度飛行まで、さまざまな環境に対応できなければなりません。極端な温度変化は結露を引き起こすため、航空機が飛行を続け、乗組員がミッションを遂行するために必要な多くのセンサやスイッチの性能を低下させる可能性があります。 - 水中での使用
軍艦や潜水艦には、水を通さない密閉性を持ち、海水環境下での電解腐食に耐えられる材料で構成された機器やシステムが搭載されています。 - 宇宙での使用
現代の宇宙船は再利用を前提に設計されているため、離陸時の強力な重力や振動、大気圏再突入時の極端な温度に耐えられる必要があります。
電子戦における堅牢なコンピューティング ソリューションの役割
人命がかかっている状況で、失敗は許されません。現代の兵士が任務を成功裏に、そして安全に遂行するうえで信頼できる電子戦技術を実現するのが堅牢なコンピューティング ソリューションです。
追尾と検知
電子戦におけるセンサの最も一般的な用途はレーダーです。レーダーには、長距離追尾レーダーや標的レーダーなど、いくつかの種類があります。これらのシステムは動作する周波数が異なり、必要とする電力も追尾する物体からの距離に応じて異なります。接続部が腐食していたりセンサが損傷していたりすると、レーダー システムの性能低下を招き、船舶や航空機とその乗組員が攻撃を受けたときに、無防備な状態になってしまう可能性があります。
脅威の特定
従来の戦争では、写真や過去のデータから次に何が起こるかを予測するアナリストに頼っていました。現在では、人工知能 (AI) を使って熱や化学物質などのパターンを解釈し、隠れた敵をリアルタイムで発見・特定することができます。センサからディスプレイまでの信号経路で接続不良や断線が発生すると、乗組員を見えない脅威にさらすことになりかねません。
ナビゲーション
ナビゲーションは、陸・海・空、さらに宇宙での任務を成功に導くうえで極めて重要です。異国の地、しかも不利な地形で部隊を展開する場合は、正確な GPS 信号に依存することになります。堅牢なシステムは、信号妨害のほか、雨、霧、砂嵐など、ナビゲーション システムの性能を低下させる可能性がある環境条件に耐えられるように設計されています。
高精度の標的
高度なミサイル システムには、さまざまな堅牢なセンサ、スイッチ、ミリタリ コンピュータ システムが組み込まれています。GPS、慣性センサ、レーザー誘導システムなどが連携して冗長なシステムを構築し、ミサイルが意図した目標に到達する可能性を高めています。
トレーニング
電子戦システムは、トレーニング目的でも使用できます。パイロットは、トレーニング用の設備や実際の航空機で行われるシミュレーションで、脅威への対応方法を学びます。このようなシミュレータには、パイロットが最も過酷な状況に対応できるよう、実戦で使用されるものと同じ堅牢なシステムが必要です。
防衛手段
堅牢なコンピューティング システムは、敵の攻撃から身を守る目的でも使用されています。
- 脅威を検知、追跡、特定するために使用するシステムが送信する信号は、同様に潜在的な脅威を検知、追跡、特定する目的で敵によって使用されてしまう可能性もあります。そのため現代のシステムは、妨害技術を使用し、艦船や航空機の実際の位置と車種について敵を混乱させるために誤情報を送信します。
- 戦闘中に信号を送受信する能力は不可欠です。電子戦システムには、主周波数が妨害されたときに別の周波数を探すことができるように、信号の切り替えを可能にするアンチジャミング アンテナが用意されています。
- 対ミサイル防衛システムは、敵のロケットがいつ発射され、どこに向かっているかを判断する最先端の技術に依存しています。この情報をもとに、最終的には目標に到達する前に無力化します。
堅牢なコンピューティング ソリューションに求められること
電子戦では、データをリアルタイムで処理し、価値ある情報に変えてくれる軽量かつ堅牢な製品が求められます。
軽量コンポーネント
軽量なソリューションは、コスト削減と動作時間の延長に貢献します。たとえば、現在、貨物や機器を宇宙へ打ち上げるには、1 ポンドあたり約 10,000 ドルのコストがかかります。宇宙船の電子戦システムを軽量化することで、コストを削減したり、宇宙船の積載量を増加させたりできます。あらゆる種類のミリタリ航空機やミリタリ車両の重量を減らすことで、燃料消費量の削減と航続距離の延長につながります。
耐久性
電子戦技術は、常に機能していなければなりません。たとえば、戦闘機のコンピューティング システムでは、データの保存や処理、あるいは特定のミッション プロファイルのために、電子カードを挿抜する必要があります。このカードは、静電気の多い環境に耐え、汚れや破片に影響されない耐久性が必要です。乗組員がそのカードを挿入して動作しなかった場合、航空機が離陸できなくなったり、飛行中に重要なデータを処理できなくなったりする可能性があるからです。
処理速度
現代の兵器システムは、データを収集して処理し、脅威をリアルタイムで特定して意思決定するための強力な性能を備えています。センサが収集したデータは処理され、テキスト、ビデオ、警告灯、その他のインジケータとしてローカルに表示または送信されます。コンマ 1 秒を争う状況では、信号伝送のレイテンシを削減することが重要です。高速データを処理し、実用的な情報に変換できる帯域幅を備えていれば、競争上の優位性を得ることができます。タイムリーで正確な情報が人命を救います。
規格の遵守
堅牢なシステムは、艦船や航空機、車両内の他の埋め込みシステムで使用されているコンポーネントと互換性のあるコネクタ、チップ セット、ケーブルなどを使用して構築されています。特定の用途に適した材料やコンポーネントを識別する標準規格としては、VMEbus International Trade Association (VITA)、Future Airborne Capability Environment (FACE)、Sensor Open System Architecture (SOSA)、Hardware Open Systems Technologies (HOST)、C4ISR/EW Modular Open Suite of Standards (CMOSS) などが挙げられます。標準コンポーネントを共有することで、異なるプラットフォーム間での互換性が向上し、コスト管理に役立つほか、修理やアップグレードのための交換部品を確保することもできます。
堅牢なコンピューティング システムの要素
堅牢なコンピューティング ソリューションには、高い強度の接続部、効果的な冷却システム、さまざまなレベルの冗長性が必要です。
接続
どのような機器やシステムでも、その強度は最も弱い接続部によって決まることになります。信号経路に沿ってデータを伝送するためには、複数のコンポーネントが連携して動作する必要があります。ケーブルとコネクタは、耐薬品性、耐熱性、柔軟性、耐摩耗性など、用途に応じた適切なバランスのものを選ぶ必要があります。
電子戦システムで使用されるコンポーネントに対する汚染物質の影響を軽減するために使用できるコネクタと材料の種類は、オープン標準によって規定されています。たとえば、地上のオフィス環境で使用されるコンポーネントであれば、3 マイクロインチの薄い金層でも問題ありませんが、航空宇宙用途のコネクタには、50 マイクロインチの金層が必要な場合があります。
冷却
堅牢なコンピューティング ソリューションの設計において、システムの冷却は非常に重要です。チップ セット、光ファイバ トランシーバなどのコンポーネントは、かなりの熱を発生させます。このような重要な部品は、何らかの手段で冷却しなければ長時間駆動できません。システムは、次の 3 種類の方法で冷却できます。
- 空冷式: ファンや自然の空気の流れで放熱します。
- 液冷式: 冷却液で熱を吸収して放散します。
- 伝導冷却方式: ヒート シンクやコールド プレートを使って、熱源から熱を逃がします。
堅牢なコンピューティング システムで使用するコンポーネントと材料は、その用途で指定されているファン付きまたはファンレスの冷却オプションと互換性がなければなりません。
冗長性
人命がかかっている状況で、失敗は許されません。そのため電子戦技術では、単一障害点があってはなりません。必要な冗長性の数は、用途によって異なります。宇宙で使用するシステムでは 4 つの冗長性システムが必要かもしれませんが、それほど過酷でない環境では 1 つでも十分かもしれません。
現在そして未来に向けた高度なソリューション
TE Connectivity (TE) の電気および電子製品は、堅牢なコンピューティング システムにおけるデータ、電力、信号の流れを確実に接続し、保護するように設計されています。TE の MULTIGIG RT コネクタは、VITA による最初の OpenVPX 規格策定に伴い、性能の標準を確立した製品です。TE のセンサおよびコネクティビティ ソリューションは、地上、空中、水上、宇宙での近代戦の要求に応えるために現在も進化し続けています。
主なポイント
- 堅牢なコンピューティングとは、強化された外装部品や破壊されにくい内装部品など、過酷な環境下でも確実に機能するよう設計された耐久性のあるコンポーネントを使用した埋め込み型コンピュータ システムのことです。
- 「堅牢」の定義は、戦闘環境やミッションの目的によって異なります。
- 電子戦技術では、ミッションを成功に導き、敵の攻撃を防ぐために、データをリアルタイムで処理し、価値ある情報に変えてくれる軽量かつ堅牢な製品が求められます。
- 堅牢な埋め込みシステムには、高い強度の接続部、効果的な冷却システム、さまざまなレベルの冗長性が必要です。
TE が堅牢なコンピューティングに関する新たな課題の解決をどう支援するかをご紹介しています。