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高電圧ツーリングの自動化
TE Connectivity の自動ツーリングは速度と品質の向上を OEM にもたらします。
これまで、建機農機、商用車および 2 輪 (ICT: Industrial & Commercial Transportation) 業界では乗用車市場よりも速いペースで電動化が進められてきましたが、 乗用車業界でもその速度は増しています。都市環境の大気汚染を軽減させるため、政府による義務化および財政的な優遇措置によって、路線バスなどの巡回車両の購入と利用が促進されています。電気バスは、2040 年までに世界のバス車両の 3 分の 2 を占めるようになると予測されています1。一方、トラック、採掘および建設機器、ラストマイル配送用車両、軍用車などのその他の ICT 車両でも、燃料消費量や二酸化炭素排出量を削減するために電動化されてきました。これらの車両では、用途要件に応じて、従来型やプラグイン ハイブリッド、バッテリー式電気自動車 (BEV)、水素燃料電池駆動の電気自動車 (EV) などのさまざまなアーキテクチャが活用されています。
これは、市場の成長にとってどのような意味を持つのでしょうか。 世界の商用車市場は、2020 年から 2027 年まで 32.7% という活発な複合年間成長率 (CAGR) で成長すると見込まれています2。数ある地域の中でも、欧州の商用車市場は、物流や e コマースに使用される電動バンに対する需要を追い風に、最も急速に成長すると見込まれています3。もちろん、中国が ICT 車両の支配的な市場であることは変わりありません。これは、国を挙げた電気バスの大規模導入が一部要因となっています4。
こうした要因のすべてから、高電圧ツーリングに対する需要は高まっており、メーカはプロセスや機器を改善するという新たな圧力にさらされています。OEM や ICT 車メーカは、電気ドライブトレインなどの高電圧システムに 10 mm2 を超える大型のケーブルを使用しています。しかし、端子の形状、サイズ、圧着などの要件の組み合わせはさまざまで、大型ワイヤの処理を標準化することは複雑になっています5。
製品メーカはこれまで、手作業のプロセスに頼って顧客のニーズに対応してきました。しかし市場において、手作業によるケーブル処理や圧着から自動プロセスへの移行が進むにつれて、この方法を選択することはますます難しくなっています。その他の業界と同じように、自動化は、パートナーが求めているスピード、一貫性、および拡張性をもたらします。自動化に投資することで、製品メーカは、確実に処理された高品質のワイヤを顧客が希望する数量で提供できるようになり、顧客のビジネスの成長をサポートできます。
この増大する市場トレンドを数年前に把握していた TE Connectivity (TE) は、柔軟な自動化プロセスを可能するために、投資を行ってハイブリッドおよび E モビリティ ソリューションのワイヤ処理装置の自社製品ラインナップを進化させました。現在は、お客様の高電圧システムの成長をサポートするために、ダイ セット、ダイ ホルダ、高圧着力プレス、新しい高電圧ケーブル プロセッサなど、ワイヤ処理からワイヤ圧着までの包括的なソリューションを提供しています。当社のソリューションには、次のようなものがあります。
- HV-CP 高電圧ケーブル プロセッサ
高電圧ケーブルの結線の質を向上させるには、複雑な高電圧ケーブルを適切に処理する必要があります。当社の新しい HV-CP 装置を使用している OEM には、HV 用途にすぐに使用できる高品質の処理済みワイヤを入手できるというメリットがあります。絶縁体の破れ、ケーブルに残された箔、編組撚り線の傷やはみ出し、撚り線導体の傷付きなど、材料の無駄、コストの増大、生産の遅延につながる手作業のワイヤ処理に関連した問題を心配する必要がありません。大型ワイヤの処理にはコストが非常にかかるため、無駄をなくすことで OEM の収益を強化できます。
HV-CP 装置は、端子の仕様に適合するように設計されています。 高電圧ケーブルの外部ジャケット、箔シールド、編組シールド、内部絶縁体をわずか 30 秒で剥がすことができます。内蔵エア ジェットにより、切断サイクルごとに自動的にブレードがクリーニングされ、直結された吸引システムによりスラグや粉塵が除去されるため、処理エリアを清潔に保ち、作業効率を維持することができます。
OEM は、柔軟性をさらに向上させることもできます。HV-CP 装置の幅はわずか 687 mm で、OEM が工場の限られた空間でワイヤ処理を自動化できるように設計されています。加えて、HV-CP ソリューションは、メンテナンスが比較的に容易です。ブレードの推定寿命は 100,000 サイクルで、ストリッパ ブレード、切断ホイール、マンドレルは数分で交換することができます。
- 高電圧モジュラ方式ダイ ホルダ
重量があり、切り替えが難しく、組み立て方法が複雑な場合もある静的アプリケータとは異なり、新しい HV モジュラ方式ダイ ホルダは、軽量で柔軟性に優れた設計になっています。この新しい HV モジュラ方式ダイ ホルダは、一部の高圧着力プレスに適合し、1 人でも 3 ~ 5 分でツールを切り替えられます。これまでは、2 人がかりで (1 人がダイ ホルダを支え、もう 1 人がネジを緩めてダイ ホルダをプレスから取り外して) 静的アプリケータを切り替えることも珍しくありませんでした。
それらのプロセスによって生産性が低下すると同時に、潜在的な品質上の問題がもたらされるという状況が生じていました。TE の最新のアプリケータ設計では、こうした課題は過去のものとなります。
HV モジュラ方式ダイ ホルダには、使いやすさを高めるためにその他にもいくつかの改良が加えられています。幅広いワイヤ サイズに対応できるスプリング式ワイヤ クランプ アセンブリは、正面、左側、または右側に素早く再配置でき、さまざまな圧着要件に対応できます。圧着微調整機能が搭載されているため、オペレータはより正確なクリンプ ハイトに簡単に調整できます。OEM や自動車メーカは、ツーリングを立て続けに設定し直すことなく、自動車用途に使用されるさまざまな大型ワイヤを柔軟に処理できるようになります。
- TE の HF/HV-20 ターミネータ
HF/HV-20 プレスは、圧着力が 178 kN (20 T) に達し、精度の高い圧着を高速で再現できる堅牢でコンパクトな高圧着力ベンチトップ装置です。HV-20 モデルには、圧着力を監視するための CQM II デジタル インタフェース、可変速度オプション、また高圧ケーブル処理に見られる粉塵を排除して影響を受けやすい接続部を清潔な状態に保護する一体型吸引システムが付属しています。
用途のプロセスに合わせて最適化できるように、高圧着力装置は複数の処理方向に対応する柔軟な設計になっています。調整可能なダイ ホルダ プラットフォームは簡単に回転でき、装置の左側、正面、または右側から処理することができます。バラ端子とリール式端子の両方に対応できるように、すべてのモデルにサイド フィード ガードが用意されています。
TE HF/HV-20 装置は、最大 120 mm2 のワイヤを処理できるため、一般的には 50 mm2 または 100 mm2 までのワイヤに対応する他の装置よりも、幅広い用途に使用できます。TE HF/HV-20 装置では、圧着速度を 1.3 秒から 8.3 秒に変更できるため、端子のマテリアル フローが改善されます。これにより、大型ワイヤを材料の破壊につながる不必要な応力から保護することができます。
品質の限界を突破したいと考えている OEM は、品質を 100% 監視できる圧着力監視機能と電気接続部を清潔に保つ一体型吸引システムを備えた HV-20 をぜひご検討ください。
まとめ
まとめると、高電圧ツーリングを自動化することには OEM や ICT 車メーカにとって大きなメリットがあり、機器メーカでは新しい装置を出すたびに制御できる項目を増やしたり豊富な機能を搭載したりして、絶えず水準を上げ続けているということです。市場では幅広いアプリケータが提供されていますが、TE は OEM にエンドツーエンドのプロセスを管理するサプライヤに向けて安心して稼動する製品を提供しています。製品およびアプリケータ メーカとして、またツーリング工場の運営者である TE の機器は、自社の事業、お客様、および製品を通じて検証されています。お客様のビジネス要件および用途要件に最適な高電圧ツーリングをお探しなら、当社にお任せください。
当社の高電圧ツーリングの詳細については、te.com/hvtooling をご覧ください。
参考文献
- 『Electric Vehicle Outlook 2020 (要旨)』、オンライン ホワイト ペーパー、BloombergNEF、https://about.bnef.com/ electric-vehicle-outlook/
- 『Electric Commercial Vehicle Market by Propulsion Type, Vehicle Type, Range, Battery Type, Length of Bus, Power Output Type, Battery Capacity Type, Component Type, Autonomous Vehicles Type, and Region - Global Forecast to 2028』、オンライン レポート概要、MarketsandMarkets、日付なし、https://www.marketsandmarkets.com/Market-Reports/electric-commercial-vehicle-market-16430819.html
- 『Electric Commercial Vehicle Market by Propulsion Type, Vehicle Type, Range, Battery Type, Length of Bus, Power Output Type, Battery Capacity Type, Component Type, Autonomous Vehicles Type, and Region - Global Forecast to 2028』、オンライン レポート概要、MarketsandMarkets、日付なし、https://www.marketsandmarkets.com/Market-Reports/electric-commercial-vehicle-market-16430819.html
- 『China Bus Markets, 2019-2025: China Accounts for Almost 50% of the Global Market』、オンライン レポート概要、ResearchandMarkets、2019 年 6 月 11 日
- 『大径ケーブルの大きな問題: 大径ケーブル市場のイノベーションに関する考慮事項』、ホワイト ペーパー、1 ページ、TE Connectivity、https://www.te.com/usa-en/campaigns/transportation-solutions/gatd-high-voltage-wire-processing-equipment.html