商業環境と住宅環境での湿度管理のための HTU31 センサ

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商業環境と住宅環境における湿度管理の重要性

はじめに

湿度は、大気 (またはその他のガス) 中に含まれる一定量の水蒸気と定義されます。「湿度」という用語は、ガスまたは大気中の水蒸気を定量化するという意味合いで一般的に使われています。水蒸気は、日常的に使われる製品や技術の品質および有効性を維持するために重要な役割を果たすだけでなく、人間の存在においても不可欠です。さまざまな業界に属する製造業者にとって、湿度測定の正確性、およびセンサ製品が果たす役割について理解することは重要です。

正確な湿度測定は、

木材、金属、食品、薬品、燃料、紙製品、電子部品といった日常的に使用される製品を劣化や損傷から保護するために不可欠であるだけでなく、従業員の健康や生産性を維持するためにも必要です。さまざまな理由から、湿度を正確に管理することは重要であり、湿度が多すぎても少なすぎても、それぞれの問題が発生する可能性があります。今日の HVAC システムでは、多様な機器や技術を駆使して温度および湿度をモニタし、制御します。さらに、屋内の大気質などさまざまな要因をモニタします。

 

湿度は大気中の水蒸気の量であり、絶対値としても相対値としても測定できます。絶対湿度はある量の空気中に含まれる水の質量 (MW) であり、通常は単位 g/m3 で表されます。多くの人に馴染みのあるのは相対湿度のほうです。相対湿度は特定の温度において、大気中の実際の水蒸気の量と、大気中に含まれうる最大量の水蒸気との比として、単純なパーセンテージ (0 ~ 100%) で表されます。地域の天気予報などのおかげでよく知られるようになったもう 1 つの用語が、露点です。これは水蒸気の凝結が始まり、雨粒が形成される大気温度 (気圧および湿度に基づいて変動) として定義されます。

 図 1: 最大含水量と大気温度の関係
図 1: 最大含水量と大気温度の関係

この図から分かるように、大気中の最大含水量は大気温度 (および気圧) に依存します。気温が高いほど、大気中に含まれる水分量も多くなるので、多くの地域で夏は「暑くてベタベタする」と感じます。露点が高いと、屋外の空気が不快に感じられるのもこのためです。

 

屋内の湿度が高いために生じる問題については、ほとんどの人が多少なりとも経験しているはずです。こうした問題にはたとえば、屋内の大気質の低下、カビの発生、産業環境での生産性低下、住宅環境での睡眠の質の低下、喘息やアレルギー症状の増加、硬材や家具の歪み、HVAC システムの過負荷、水光熱費の増加などがあります。

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図 2: 電子部品上の ESD の火花

その一方で、空気の乾燥や屋内の低湿度に関連する問題も数多く存在し、こうした問題は一般的にあまり知られておらず、理解されていません。たとえば、工場や産業環境における多くの材料の加工および処理、静電放電、人々の健康と快適性に関わる問題などがあります。紙、皮革、本、絵画、木製品といった多くの吸湿材は、ひび割れや巻き上がり、乾燥腐敗、接着不備、歪みなどのさまざまな影響を防止するため、大気中に一定の含水率を必要とします。静電放電 (ESD) は、データ センターを含む電子的なオフィス設備、電子機器の製造施設、可燃材を扱う施設など、あらゆるものに影響を及ぼします。

 

健康面では、人体の約 65% は水分であり、脱水の防止はきわめて重要です。人体機能の多くは、体内の全体的な体液平衡を維持するためのものであり、健康と快適性は、室内空気の湿度に多大な影響を受けます。私たちの皮膚、眼、呼吸器系はすべて、最適な健康と機能性を維持するために適切な湿度を必要とします。いくつかの研究により、低湿度とインフルエンザ感染の可能性との関連性が明らかにされています。湿度を上げるとインフルエンザ ウイルスの感染力が弱まることが、複数の研究によって分かっています。人間の生体防御機能は、相対湿度 (RH) が >30% のレベルで強化されます。また、RH レベルが高いと感染性インフルエンザ ウイルスの大気中の量が減少し、高湿度ではインフルエンザ感染の可能性も低下します。

図 3: 咳をして 1 時間後のインフルエンザ ウイルスの感染力は、RH が 7 ~ 23% の環境では RH が >43% の環境より約 5 倍強まることが研究によって明らかにされている

健康面の見地から、さらに快適性を決める要素と一般的な生産性全体を踏まえると、低湿度と高湿度の適切な制御は、健康と快適性にとって重要であると考えられます。湿度の最適な範囲は、人間の快適性だけでなく、細菌の繁殖、生産性など、多数のさまざまな要因を考慮して定義されています。作業環境の観点からは、健康であることで、以下のような幅広い種類の生産性向上が実現できることが研究によって結論付けられています。 

 

•  眼精疲労の軽減

•  声帯疲労の軽減

•  アレルギーおよび喘息の影響の軽減

•  従業員の業績向上

•  知力の向上

•  体感快適性の向上 (カナダの指標「humidex」)

 

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HVAC システムの湿度検知

HVAC システムは、単なる温度制御システム (暖房機能または冷房機能、またはその両方) から、温度だけでなく湿度や大気質など、多数の要素をモニタおよび制御するシステムへと進化しています。湿度の観点では、最近のシステムはほぼすべて、湿度レベルをモニタおよび表示できます。しかし現在のシステム、特に産業用のものは、建物内の RH レベルも制御できるものが増えています。冷房システムはその性質上、空気から湿度を除去します。ただし、こうしたシステム単独では、システムが冷却を要求しないかぎり効果を得られません。最良の屋内環境を常時、しかも効率的かつ効果的に実現するために、現在の多くの HVAC システムには、加湿と除湿のための特殊部品が搭載されています。

 

湿度センサは、屋内外の湿度をモニタリングする重要な役割を果たすだけでなく、湿度の調整に使用される機器をモニタリングおよび制御する重要な部品でもあります。従来、動作範囲と精度の限定された単純な抵抗素子であった湿度センサは、幅広い条件に対応して温度と湿度を高精度で測定でき、ドリフトのほとんど発生しない完全なデジタル モデルへと進化しました。

 

 図 4: HVAC ユニット
図 4: HVAC ユニット

湿度および温度センサ

TE Connectivity は、2.5 x 2.5 x 0.9 mm のサイズで表面実装可能な HTU31 という新しい湿度・温度デジタル出力複合センサを発表しました。個別にキャリブレーションされた高精度センサであり、トレーサビリティーを確保するためにシリアル番号が割り当てられています。通常精度は相対湿度では ±2%、温度では ±0.2°C となります。コンパクトな 6 ピン DFN パッケージで迅速な応答時間を誇り、通常の電力消費はわずか 3.78µW です。このセンサは、アドレスを設定可能なデジタル I2C 形式のものと、0.5 ~ 4.5 V の電圧を出力するアナログ形式のものが用意されています。

HTU31 だけでなく、TE ではデジタル湿度/温度センサである HTU2x シリーズ、湿度および温度モジュールである HTU35 および HTU38、湿度/温度、および湿度プローブである HM および HTM、HS1101LF 湿度検知素子など、幅広い種類の湿度検知製品を展開しています。当社の湿度センサ製品ラインには、包括的な 0 ~ 100% の RH 範囲の相対湿度の検知、RH レベルの変化への迅速な応答、結露からの迅速な回復といった各機能を可能にする容量性検知技術が採用されています。そのほとんどには、露点の直接計算機能、屋内またはエンクロージャ内の温度測定機能を可能にする温度センサが搭載されています。

 

エレクトロニクス全般に言えることですが、センサもさらなる小型化、高精度化、完全デジタル出力、省電力化を実現しながら進化しています。省電力での動作が可能になったことで、バッテリー駆動を含め、幅広い用途で使用されるようになりました。また、センサの小型化により、対象となる場所のすぐ近くにセンサを設置できるようになり、変化し続ける条件にも迅速に応答できます。

 

 図 5: HTU31 デジタル湿度/温度センサ
図 5: HTU31 デジタル湿度/温度センサ

TE Connectivity は、気圧、温度、位置、レベル、その他、HVAC 用途において重要な各種パラメータを測定および制御するセンサ ソリューションを提供します。

HVAC 圧力センサ

TE は、次のような、多様な圧力センサの製品ラインを展開しています。

 

• 気圧および高度の測定に使用する表面実装製品 

• 超低圧~中圧の気圧およびガス圧を測定するボード マウント圧力センサ

• HVAC 機器および診断機器向けの幅広い圧力に対応する各種モジュール

• 冷媒用、冷却装置や熱ポンプ、または他の過酷な環境での圧力に対応する圧力トランスデューサ

 

Silicon Microstructures Incorporated (SMI) が新たに加わった TE では、強制換気システムのフィルタをモニタし、VAV およびゾーン分割システムでの空気流量をモニタおよび制御する、新たな超低圧センサを発表しました。これらの圧力センサは、表面実装に適した 16 ピン SOIC パッケージで提供されます。 

 

図 6: SM9000 低圧ボード マウント圧力センサ

HVAC 温度センサ

TE では、産業環境および住宅環境での気圧のモニタリングおよび制御に使用可能な、スタンドアロンの温度検知技術を幅広く提供しています。また、熱ポンプや他の多様な HVAC 機器向けの制御システムなど、高湿度環境用の高耐久性温度プローブおよびアセンブリも用意しています。

図 7: HVAC 用途向けの温度センサ

温度関連の技術には、NTC サーミスタプラチナ RTD熱電対熱電対列デジタル温度センサなどがあります。パッケージは、わずか 1.5 mm² x 0.38 mm と超小型の XDFN6 パッケージで提供される、0°C ~ 60°C の範囲で ±0.5°C の精度を誇る新しい完全デジタル TSYS03 から、HVAC 環境には一般的な高湿度、凍結融解用途向けに特別に設計されたオーバーモールド NTC サーミスタ アセンブリまで、多岐にわたります。

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屋内環境における湿度

暖房、換気、空調をモニタし、調節する革新的な技術およびセンサの発展によって、屋内環境はますます快適で、より効率的になっています。温度は、おそらく誰もが最初に感じうる環境パラメータです。一方、湿度は産業環境においても住宅環境においても、業務中の、あるいは自宅でくつろぐ人々の長期的な健康を左右する重要な要素です。湿度の検知と制御も、製造環境での多数の材料と工程にとって、さらに機器や従業員の安全性にとって、重要な意味を持ちます。湿度を正しいレベルに維持することは、人々の総合的な健康のためだけでなく、機器や製品のためにも不可欠です。湿度を検知および制御する機能は今後も進化し続け、その進化においてセンサは重要な役割を果たします。