新しい戦闘システム

新しいコネクティビティ オプションで実現する新しい戦闘システム

全領域統合指揮統制システムは、戦闘システムのコネクティビティの向上により、軍のあらゆる階層で通信を改善します。

今日では、娯楽目的のリアルタイム ストラテジー (RTS) ゲームやバーチャル リアリティ (VR) ヘッドセットが、現実世界での戦闘システムへと変貌を遂げようとしています。 米軍では 4 軍のすべてが、デジタル技術の急速な発展を利用した全領域統合指揮統制 (JADC2) という統合戦のコンセプトに着手しています。

全領域統合指揮統制 (JADC2) とは

JADC2 とは、全軍のセンサを単一のネットワークに接続することを目的として国防総省 (DoD) が主導している構想です。この構想の数ある利点の 1 つが、
4 軍間のコミュニケーションが改善され、
即時の判断を必要とする状況への対応がより迅速になることです。

複数領域の戦闘活動を接続する方法

JADC2 のコンセプトの実現に伴うコネクティビティの課題は非常に大きなものです。JADC2 は、陸、海、空、宇宙、サイバースペースなど、すべての領域の兵士、インテリジェント デバイス、兵器システムをネットワーク化することを目的としています。その目標は、任意の場所から任意の利用可能なリソースを使用してミッションの目標を達成する分散型の指揮を実現することです。たとえば、米国陸軍はヘルメットに装着したヘッドアップ ディスプレイ (HUD) を使用して兵士を訓練していますが、これは拡張現実を利用して状況をより鮮明に認識できるようにするためのものです。 

統合視覚補強システム (IVAS) が兵士に提供する新しい視点

このヘッドセットは、市販の複合現実型スマート グラスを軍事用に改造したもので、
統合視覚補強システム (IVAS) を備えています。この新技術により、熱画像、3D 画像、コンパスのウェイポイント、武器の十字線が表示されるため、スマートフォンなどに視線を移すことなく、レンズを通して地形を見ることができます。

 

戦場でヘルメットから透明なスクリーンを下に倒し、風景をスキャンして敵味方を識別する様子を想像してみてください。しかも、
識別情報や位置情報が示されるだけではありません。視覚的なスキャンにより、部隊の健康状態や
準備体制も判断できます。制服やその他のウェアラブル ギアに埋め込まれた
生体センサによって、バイタル サインをはじめとする、さまざまな情報を検出できます。 

 

指揮官は、戦場にいるときだけでなく遠隔地にいるときでも、以下のような多様な兵士の情報を取得できます。      

  • 休憩/睡眠時間 
  • 水分補給
  • 焦点
  • 覚醒状態 
  • 血糖値 
  • 代謝状態およびエネルギーの蓄積 
  • 高所順応 
  • 弾薬数 
  • バッテリー残量 
  • 有毒な化学物質や材料にさらされる可能性

 

アルゴリズムによって環境からのデータと生体センサからのデータを組み合わせて取得し、供給物資の必要性や、その他の強化条件を推定することができます。IVAS は HUD 3.0 とも呼ばれ、広大な戦場の場合であっても、戦術的な情報を提供することで作戦を有利に進めることができます。たとえば、敵機のミサイル発射台を認識し、その座標をネットワークに送信すれば、味方部隊が迅速に破壊することができます。

すべての兵士がセンサとして機能する

商用オフザシェルフ (COTS) 製品は、一般的に、過酷な環境や
要求の多い用途のサイズ、重量、電力 (SWaP) 要件に対応した設計には
なっていません。そのため、このような新しい用途のコネクティビティの課題に対応する
ことはできません。IVAS は、統合された戦闘プラットフォームとして機能するために、
米陸軍の新しい Adaptive Squad Architecture (ASA) を利用する予定です。ASA は
オープン アーキテクチャではありません。敵からのアクセスを防ぐために、大規模で安全な
データ交換が行われるネットワークで、各コンポーネントをどのように相互接続するかを規定するものです。

 

ASA は「任意のセンサを任意の狙撃手が活用できる」ネットワーク通信をサポートしており、重量が 120 ポンド (54.4 kg) を超えることもある兵士用装備の SWaP を最適化することも目的としています。データ主導の意思決定を迅速に行うため、防衛基盤統合事業 (Joint Enterprise Defense Infrastructure: JEDI) や米空軍の Cloud One エンタープライズ クラウド ソリューションなど、いくつかのクラウドベースのインフラが計画されています。

 

人工知能 (AI) や機械学習 (ML) を使ったデータ分析のために国防総省のクラウドと接続することで、敵はどこにいるのか、自軍はどこにいるのか、自軍は適切な武装を整え交戦の準備ができているか、十分な物資はあるかといった疑問にリアルタイムで答えることができます。

全領域統合指揮統制の課題

JADC2、JEDI、IVAS はすべて、帯域幅と SWaP に関連する大きな課題を生み出し、戦闘システムのコネクティビティ製品の大幅な改善を促す要因となっています。バッテリー、ケーブル、デバイスはすべて、他の兵士のコンポーネントと相互接続する必要があります。また改善を促すその他の要因としては、兵士の装備に組み込まれ、軍事のモノのインターネット (Internet of Military Things: IoMT) または戦場のモノのインターネット (Internet of Battlefield Things: IoBT) で機能するセンサやコンピューティング デバイスの数が増えていることも挙げられます。

高度な戦闘システムに対応したコネクティビティ

ブーツの歩数計から胸部装甲の心拍センサまで、兵士が身に付けるセンサやコンピューティング デバイスは、兵士の身体状態について、状況を考慮した貴重なバイオメトリクスを提供してくれます。しかし、戦闘中に個人、部隊、司令部、クラウドのコネクティビティを実現することは非常に複雑であり、ミリタリ電子機器の設計者にとって困難な課題となっています。

 

このような高度な用途をサポートし、次世代の戦場技術を強化するために、高度なアンテナ、センサ、相互接続、ワイヤとケーブル、ハーネス アクセサリの数々が登場しています。まずは、データ伝送リンクの物理層で使用されるコネクティビティ コンポーネントについて考えてみましょう。

プッシュ/プル ブレイクアウェイ カップリング機構を採用した堅牢な設計により、迅速な接続とシングル アクションでの接続解除を実現します。O.C.H.マイクロ丸型コネクタは、MIL-STD-810G の厳格な機械的および性能的要件に適合しています。堅牢なアルミニウム製シェルは、全面無電解ニッケルめっきと選択的な反射防止特性を持つ黒色亜鉛/ニッケルめっきの両方が用意されており、熱可塑性樹脂のインサート、6 個または 7 個の金ニッケル合金めっきを施した銅合金コンタクトを備えています。また、過酷な戦場環境でも適切な嵌合ができるよう、複数のキーイング オプションを用意しています。


さらに、アルミニウム シェルと熱可塑性樹脂のインサートにより、兵士が身につける装備品の小型・軽量化を実現しました。22AWG ワイヤに圧着した場合、コネクタの動作温度定格は -18°C ~ +71°C となり、衝撃や振動に対する耐性も確保されるほか、他の多くの Nett Warrior 製品と相互に嵌合可能です。

兵士用装備向けの軽量コネクティビティ

たとえば、TE Connectivity (TE) の O.C.H.マイクロ丸型コネクタは、電子デバイスが人間に装着されているか地上戦闘車両に固定されているかを問わず、さまざまなコネクティビティの課題に対処します。もともと米国陸軍の Nett Warrior プログラム用に開発された小型軽量のコネクタであり、次のような未来の兵士用装備での使用を想定して設計されています。

  • 兵士用ベスト ケーブル 
  • バッテリー 
  • アンテナ 
  • 通信システム 
  • パワー ハブ 
  • ラジオ 
  • ミリタリ車両

シングルペア イーサネットでケーブルのかさを半分以下に削減

戦闘システム用の高速データ リンク ケーブルには、信号やデータを高い忠実性で伝送すること、接続されているデバイスに電力を供給すること、そして厳しい環境にも耐えられることが要求されます。もちろん、イーサネット プロトコルを使用すれば、ほぼすべての機器とどこでも簡単にデータ転送を実行できます。しかし、兵士用装備として考えた場合、かさばる 8 芯のカテゴリ 6 ケーブルは使用できません。幸いなことに、イーサネットの物理層 (PHY) では、シングルペア イーサネット (SPE) 構成で 2 本のワイヤを使用することができます。これは一般的に 100BASE-T1 として知られています。     

航空機用途および戦闘用途に対応した小型軽量化

堅牢な SPE ケーブルは、産業界のモノのインターネット (IIoT) のプラットフォームとして位置づけられています。航空電子機器に求められる信頼性要件を満たすため、このたび TE は、Mini-ETH SPE システムを発表いたしました。これは、間もなく発行される ARINC 854 規格を基準としたものです。Mini-ETH アセンブリは 1 対のワイヤしか使用しないため、イーサネット ケーブルあたり 3 対または 4 対のワイヤを使用する従来のカスタム設計に比べて、サイズ、重量、コストの面で大幅な削減を実現できます。

 

Mini-ETH ケーブルは、リンク長 15 m (49 フィート) で 200 MHz および 100 Mb/s の動作に適合しています。さらに TE では、40 m (131 フィート) のリンク長と 750 MHz 以上の周波数で 1 Gb/s と 10 Gb/s のデータ伝送速度をサポートするロードマップと、より高い周波数と速度をサポートする新しいコネクタ設計を用意しています。

 

また、Power-over-Data-Line (PoDL) バージョンも予定されています。

 

もともとは航空機の画面、センサ、データ ハブなどの電子機器向けに導入された小型の Mini-ETH ケーブルとコネクタは、小型軽量化という特徴が大きな利点となる戦闘システムでも候補になっています。

ミサイル警報、無線通信、遠隔兵器システム、火器管制システムなど、バックエンドのミリタリおよび防衛用途向けに、新たにカテゴリ 7 イーサネット ケーブルが開発されました。このケーブルは 15 m (49 フィート) リンクで 100 Gb/s の伝送速度を提供しますが、リンク長がさらに長くなると 10 Gb/s に戻ります。TE Raychem Cat 7 ケーブルは個別にシールドされた 4 ペア ケーブルで、IEC 61156-6 要件に準拠しています。また、特定のミリタリ用途および航空宇宙用途で必要とされる 26 AWG ワイヤを使用しています。

未来の戦闘システムのために今から備える

現在の、そして未来の戦地で活動する歩兵にとって、戦場ですぐに情報を入手できれば大きな優位性を確保することができます。このようなソルジャー システムに対応したコネクタ、ケーブル、アクセサリは現在入手可能であり、生産も進められています。

 

また、当社は経験豊富な製造業者として、進化するニーズに応える製品を設計し、防衛産業が現在と将来のどちらの課題も克服するソリューションを開発できるよう支援することができます。TE Connectivity のソルジャー システムおよびウェアラブル機器の詳細をご覧ください。  

主なポイント

  • 戦場で歩兵どうしをネットワーク化するという新しい戦略は「任意のセンサを任意の狙撃手が活用できる」という戦術に対応するためですが、これによりデジタル機器の技術的な変化が促進されています。その一部を支えているのが、高度な相互接続です。
  • 全領域統合指揮統制 (JADC2) システムにより、従軍者は情報に基づいた迅速な意思決定を容易に行えるようになります。
  • 軽量でウェアラブルな兵士用装備は、各個人の有益な生体情報を提供し、戦場での安全性を向上させます。
  • もともとは航空用途向けに設計されたイーサネット ソリューションですが、過酷な環境下での戦闘に必要なコネクティビティ、信頼性、重量の要件にも対応できます。