極超音速兵器

ミサイルの操縦性情報を提供する極超音速兵器センサ

極超音速ミサイルが備える前例のない操縦性の秘密は、その高度なセンサ コンポーネントにあります。

極超音速誘導システムでセンサ データが果たす役割

極超音速ミサイルの目標検知追尾システムが備える精密に調整された堅牢なセンサは、天候、熱の兆候、位置などに関する重要なデータを収集します。 このデータ収集に続き、高度なデータ処理によってセンサからの入力が解釈され、防御に向けた判断が直ちに返されます。極超音速ミサイルが予測不可能な飛行経路を高速移動し、到来する脅威に迅速、敏捷に対応するためには、短時間で完了するこのプロセスが重要な要因となります。

センサ入力で始まる精密誘導

ミサイルの機首に搭載された目標検知追尾システムの高感度 センサは、ミッションの眼として機能します。数種類の極超音速兵器センサが、何をミサイルの標的とするか、またその標的にどのように到達するかを判断するための材料となる兆候を周辺環境の中で常時探索しています。

 

可視光線と赤外線による光学センサが連携して、標的の形状や熱の兆候を識別し、正しい標的を効果的に検出します。ミサイルの航行を慣性センサが支援し、目標で反射した無線周波数 (RF) 信号をレーダ センサが検出します。その情報を使用してミサイルを目標まで誘導できます。RF センサには 2 つの目的があります。1 つは妨害に起因する RF ノイズの検出、1 つは気象条件の分析です。

 

誘導システムに関与する他の極超音速兵器センサとして以下があります。

  • 空力的圧力センサ
  • 電気光学センサ
  • 温度センサ
  • 振動センサ

リアルタイムのデータ処理

センサで収集された入力はケーブルを経由してコントロール センターへ送られ、データとして迅速に分析されます。このようなデータをすべて処理するには、さまざまな技術が高速な接続で連携する必要があります。

 

多くの場合、センサでは RF 信号を受信して電気信号に変換します。この信号が電気配線や光ファイバを経由して処理ユニットのオンボード コンピュータに送られ、データとしてリアルタイムで分析されます。 

センサ データへの機敏な応答

最後に、変換されたデータに基づく処置を実施します。このような処置として、極超音速ミサイルの進路を維持すべきか、進路を変えるべきか、ミッションを中止すべきかの判断があります。このような重要な判断を短時間で正確に下す必要があります。

 

通常、センサ データは人手によらず、自律的に処理されます。このデータは、事前にプログラムされたミサイル誘導アルゴリズムに入力されます。このアルゴリズムは、入力に基づいて迅速なアクションを実行するようにトレーニングされています。たとえば、通信信号が妨害されていることがデータから明らかになると、妨害からの防御手段として、別の周波数に切り替える指示がアルゴリズムからシステムへ自律的に送られます。

 

極超音速兵器では発射から標的到達までの時間が短いことから、センサ データの処理では無人対応が効率的な手法です。 

極超音速兵器向けセンサ コンポーネントの設計要件

極超音速ミサイルに搭載されるセンサ コンポーネントは、主要なコネクティビティ、サイズ、重量、電力 (SWaP) を備え、複雑な技術的課題があっても堅牢性の要件に対応している必要があります。

高速なマルチシステム コネクティビティ

これほどの量のセンサ データをリアルタイムで処理するには、高速で高帯域幅のトランシーバが不可欠です。センサ データは、ミサイルに存在する他の多くのシステム、特に極超音速飛行コントロール センターに影響します。したがって、センサ データの処理には、そのような区域との確実で安定した接続も必要です。また、最適な飛行経路を計画するには、位置データと気象データをナビゲーション システムと共有する必要があります。レーダのデータからは、エンジンの出力をどのように調整すべきがわかります。

極超音速ミサイルの各サブシステムで使用されている技術の詳細をご覧ください。

サイズ、重量、電力 (SWaP)

ただでさえ限られた極超音速ミサイル内部の空間で、センサとコネクタは空間と重量を占有します。ペイロード向けに最大限の体積と重量を確保するには、大半のコネクタに可能な限りの小型化と軽量化の設計が求められます。一方で、これらのコンポーネントはミサイルの運用に十分な電力を供給する必要があります。センサ ケーブルとワイヤ システムは、ミサイル内部の狭い空間に敷設できるように、極小体積にまとめて適切な形状にする必要があります。  

センサの信頼性を確保する堅牢性試験

飛行経路を変えながら音速の 5 倍で移動するミサイルの内部は、高温、高速、高高度、高振動の環境です。データの収集と処理には、このような条件下でも確実に機能できる高度なセンサとコネクタのコンポーネントが必要です。

 

極超音速兵器のセンサ コンポーネントを構成する材料には、電導性、構造的完全性、耐熱衝撃性、耐久性の間で適切な関係が得られるものを選択する必要があります。また、すべてのコンポーネントは、極超音速用途に適した技術水準にあることを実証するために、厳格な評価とシミュレーションの試験を経る必要があります。

極超音速兵器システムに使用するコンポーネントの耐久性について詳しくご覧ください

極超音速兵器センサ システムに見る技術の進歩

TE は、極超音速ミサイルの高性能誘導技術で発生する技術的課題に対処するために、お客様との緊密な協力の下、その用途のニーズを把握し、重要なミサイル システムに存在すると考えられる障害点を特定します。センサのコネクティビティ コンポーネントも、耐久性、サイズ、重量、電力、処理速度の要件を満たすために厳格な試験を経ています。 

確実な誘導を実現するセンサ コンポーネント

TE の防衛設計エキスパートは、過酷な環境条件の要求に応えると同時に優れた電力効率の実現を目指して、堅牢な材料で大電力コネクタを設計しています。光ファイバなどの脆弱なコンポーネントを密閉して高温から保護するために、高耐久性の熱収縮コンポーネントを設計しています。TE の RF コネクタ、アンテナ製品、ケーブルのシステムは、慣性センサ、温度センサ、圧力センサ、レーダー センサのデバイス向けに相互接続ソリューションを構成して、データの高速な処理と応答を実現します。ここでは、ミサイルで一般的な RF 競合エネルギーの影響を受けない高帯域幅の光ファイバを使用できます。

 

SWaP における TE 発の注目すべき進歩として、Micro-D コネクタ、Nano-D コネクタ、リレーなどのセンサ コンポーネントの小型化があります。また、ミサイル内部の限られた空間に、小さい曲げ半径でフラット形状の配線を敷設することもできます。ケーブルの形状を調整することで電力処理も可能です。 

 

TE は、お客様とのパートナーシップ、エンジニアリングの専門知識、堅牢なコンポーネントの幅広いポートフォリオを結び付け、極超音速兵器センサと目標検知追尾システムのスマート ソリューションを開発して高度な操縦性と正確な誘導をサポートしています。

主なポイント

  • 極超音速兵器システムの予測不能な操縦性を実現するうえで、センサ技術は重要な構成要素です。
  • 極超音速兵器センサで環境から収集した入力はデータとして迅速に処理され、リアルタイムで応答が出力されます。
  • 処理されたセンサ データによって自律的な無人応答を開始できます。
  • 極超音速ミサイルのセンサ コンポーネントは、コネクティビティ、堅牢性、サイズ、重量、電力 (SWaP) の厳格な要件に対応し、複雑な技術的課題に対処する必要があります。
  • センサ データの収集と処理には、高温、高速、高高度、高振動などの過酷な条件下でも確実に機能するコンポーネントが必要です。

TE Connectivity が極超音速ミサイル設計の課題に対応している様子をご覧ください